「虚仮(こけ)の一念、岩をも通す」を履き違える

いやぁ、世の中「構ってちゃん」が多くて困るよね?
『お前がな!』
どうも。
寂しいと死んでしまう、ウサギちゃんであるところのキタナカです。
みゅぅみゅぅ。(無駄に愛想を振り撒きます)

もし。
二十歳の貴女が、俺の日記から知的な匂いを感じ取ったとしましょう。
貴女は、すぐさま俺にメッセージを送るべきなんですそうなんです。
そしたら俺は、「大人の余裕」を感じさせる返信をしましょう。
もちろん。
出だしは「今、午後のカフェを嗜みながらこのメッセージを打っています」です。
あぁ、やっぱりキタナカさんは大人(ダンディ)な男性なんだ…と認識を新たにしてください。
嬉しくなった貴女は、俺にメッセージで色々な話をします。
勿論、俺はちょっとした大人のジョークを絡めつつ返信を繰り返します。

貴女は「段々キタナカさんに惹かれ始めている自分」に気付いてください。
俺は「大人なクセに女性の気持ちに疎い朴念仁」を気取りますから、ヤキモキしてください。
募る想いを止めきれずに、「こ、今度。お会いしませんか?」と尋ねてください。
「あ…あぁ、別にいいけど?」なんて、ちょっと面食らった感じで了承するキタナカさんに萌えてください。

当日。
「キタナカさんの見た目も知らないけど、私の気持ちは…」
なんて、悲壮な決意を固めて待ち合わせ場所に行ってください。
キタナカさんが好きそうな「ミニスカにニーソックス」。
化粧も、ちょっと背伸びした感じで大人っぽく。
当然、下着は勝負下着を履いてきてください。
そして、「はぁ…。私ってば、何を期待してるんだろ?」なんて自己嫌悪に陥ってください。

待ち合わせ場所には、「いかにも」な若者だらけでキタナカさんらしき影は見当たりません。
…。
もう、待ち合わせ時間を三十分過ぎてしまっています。
周りの待ち合わせの人たちは、次々と待ち人と合流して去っていきます。
――キタナカさん。自分からデートに誘うような、はしたない女の子は嫌いなのかな?
――ひょっとして顔だけチラ見して「タイプじゃない」って帰っちゃったのかな?
――からかわれただけなのかな?
「はは…。私、一人で舞い上がっちゃって…バカみたい」
泣きそうになってしまう自分が滑稽で。
それでも、泣いてしまったら涙が止まらなくなりそうで。
待ち合わせ場所には、自分とスーツを着たハンサムガイの二人きりです。
(流石に、あんなイケメンじゃ…ないよね?)なんて考えてください。

貴女は、気を紛らすために携帯からメッセージを送ってみてください。
「新着メッセージが一件、あります」という赤い文字。
慌ててメッセージを確認してみてください。
キタナカさんからのメッセージ。
「待ち合わせ場所に着いたのですが、姿が見えないので連絡をください。090-****-****」
え? もう着いてる?

慌てて携帯からコールしてみる貴女。
目の前にいるステキな男性が、慌てた風情で胸元から携帯を出すことに気付くでしょう。
え? まさか!
『もしもし』
受話器から聞こえる、低音のセクシーヴォイスと目の前にいる男性の声が重なる。
『あ~っ!?』
俺と貴女は、お互いを指差して。
そして。
ホッとした貴女は、こらえていた涙が頬を伝ってしまっていることに気付くハズです。
「え! え?」と戸惑いが隠せないキタナカさん。
「ごめ……さい。ち…違うんです」と嗚咽しつつ、俺に気を遣ってください。

喫茶店。
実は。キタナカさんが私が女かどうか半信半疑で、からかわれてるんじゃ?と思ってたこと。
そもそも「自分と同年代だろう?」と思ってたので、私を「そう」だと気付けなかったコト。
「本っ当に、ゴメンね」
謝るキタナカさんを見ていて貴女は、こみ上げる笑いを抑え切れなくなってください。
「え? なんか、面白かった?」と不思議な顔をしてみせますから。
「いえ。私も同じ風に考えてたから…。まさかキタナカさんが、こんなカッコイイ人だなんて…」
「大人をからかうなよ。俺こそ、君みたいな可愛い娘(こ)が来るなんて…あっ!」
お互いが言った言葉の意味に気付いて、二人で一緒に赤面しましょう。

「と…取り敢えずどうする? 未成年なら、食事とかの方が良いよね?」
取り繕うように言うキタナカさんの「可愛い娘(こ)」という言葉が耳から離れない貴女。
「あの? 聞いてる?」なんて聞かれて我に返って。
「え ?あ! わ私、大人ですから!」って、動転して口走ってください。
「はわ! 私、なに言ってるんだろ!?」なんて、真っ赤になって顔の前で両手をブンブン振ってください。
「大丈夫だよ…。誤解なんかしないから」(爽やかな笑みを浮かべながら)
頭を「ぽむぽむ」とされて、その温もりに身を任せてください。
俺は「そりゃ、緊張するよね?俺も人見知り激しいから分かるよ」なんて言いますから。
貴女は深呼吸して、少しだけリラックスしてください。

「違うんですけど…。違くもなくて」と、貴女は真っ赤になってモジモジしてください。
少し落ち着いた貴女が口にした言葉に、首を傾げる俺に言ってください。

「私…。キタナカさんが好きなんです!」

俺は一瞬、呆(ほう)けたような表情になってから優しい目に戻って、こう言います。
「うん、ありがとう。俺も、あまし良く君のこと知らないけど、好もしいと思ってるよ」
「違います! 私…男性としてキタナカさんが好きなんです! 私、言わないで後悔するのはヤですから!」
俺は今度こそ動転して、咥えていた煙草を取り落として「アチチッ!」なんてやってみせます。
「だ…だって君。未成年」
「先月、二十歳になりました」
「でも、初対面のオッサンだぜ? 俺!」
「年齢なんか関係ありません!」
「日記を読んでるなら知ってるだろうけど俺、チンコ小さいぜ?」
「私。初めてだから、相手の大きさなんて分かりません!」
「えぇぇっ!」
腹をくくった貴女は、キタナカさんをたじろがせる勢いで迫ってください。

【…そして、大人の時間】

「本当に、いいんだね?」
(17項目省略)
「痛い! でも…嬉しい。私、初めてはキタナカさんって決めてたから」

…。
……。
もう!
みんな俺のコトが好きなくせにさ(エヘヘ)。
奥手でどうしたら良いか分からないようだから、指示書を作ってみた。
この通りに行動すれば、きっと良いことが起こる。
もっと素直になっちまいなよ、YOU!
あ。
「私。二十歳じゃないけど、実は『上戸彩』です」って人もOK。

いいですか?
八年! 八年もの間ですよ?
こんな「出会いをするシミュレーション日記」を書き続けている俺です。
「普通に出会えよ!」なんて言葉には耳を貸しません。

「石の上にも三年」と申しますが。
俺的には「そろそろなんじゃないかな?」と思っているのです。(確信に満ちた表情)

――「俺的には」って言われてもなぁ…。

タメになるコトは書けていませんが、サポートいただけたら励みになります。よろしくお願い申し上げます。