メロウに愛して
「キタナカさん、ちょっと疲れた顔してますね」
あ、君は新入社員の彩子(さいこ)ちゃん。
「やっぱり例のプラン、通らなかったんですね…。聞きました」
まあね。自分でも「時間がないから取り敢えず」感が否めなかったから、しょうがないよ。
「でも、気を取り直して頑張りましょうね」
なんだなんだ? 別に、俺は別に落ち込んでないよ。普段みたく「キタナカさん! ブラドツェペシュって知ってますか?」とか聞いてくれよ。
「もう! 人を四六時中、猟奇な事を考えてるみたく言わないで下さい!」
違ったのか?
「違います!」
そうそう、やっといつもの調子が出てきたみたいだな。
「あ…」
まぁさ。気持ちは嬉しいけどさ、俺しんみりするの嫌いだし、彩子ちゃんも元気出してよ。
「なんか、慰めようと思ってたのに逆に元気付けられちゃいましたね」
さ!
今日も頑張ろうぜ。俺もやらなきゃいけない事が山積みだから忙しいんだ。
「はい! あ。私が出来る事があったら言って下さいね? 何でも手伝いますから!」
じゃあ早速だけど…。
「なんなりと!」
エロキャッチ考えといてくれるかな?
「う…そりは」
はは、冗談冗談。
「もう! キタナカさんなんか心配するんじゃなかった!!」
…。
…なんてやり取りがある筈もなく。
彩子ちゃんは定時で上がり、俺は営業用の女優データをまとめて、FAXしてる訳です。
すべて世は事も無しなのです。
――目の前が揺らいでるのは、寝不足のせい?
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