「虚構推理 鋼人七瀬」が面白い

二〇二〇年三月八日、現在――。
表題は、今アニメ放映されている「虚構推理」の原作である小説です。
この作品が、(私的に)どれだけ「ネタバレされても面白い」作品かを書いてみようと思います。
「ネタバレすんな!」という方は、私の記事を「そっ閉じ」してください。
原作ファンの方々や、私の「文章に対する、異常なまでの偏執ぶり」を知っている方は、そう思われるでしょう?
でも。
「アニメに抵抗があり、小説を読む時間が無い」方が、一定数いるのは事実だろうとも思います。だから、書きますね。
最後通告です。
「小説を読みたい(或いは、『アニメを視聴したい』)」と思われる方は、速攻で私の記事から離れてください。
あ!
興味を持って「これからアニメーション作品の続きを観てみたい」という方々に対しては、「あらすじ」として機能するかも知れない。
もう、作品の盛り上がりは最高潮ですけどね――。

当初は。作品のタイトルに惹かれて、視聴し始めました。
最初の数話に対する私の評価は、酷いものでしたよ。
メイン主人公が「一眼一足(義眼と義足付けてるので普通)になり『モノノケたちの知恵の神』となった、小柄で気が強い知的少女」
もう一人の主人公は「モノノケたちに恐れられる、不思議な青年(後に、彼は不老不死的な存在だと明かされる)」という設定だったもので……。
「陳腐だなあ」と思いながら、観ていました。
でも、惰性で視聴していました。
先述の少女「岩永琴子」ちゃんが、好みの性格だったからですけど。
所謂「萌え」という奴ですかね?
でも。物語は本当に、つまらなかったんです――。
※理由は、ちゃんとありました。後述――
だって。主人公の設定が、おかしいじゃないですか!
男は「無敵」。
女は「事件現場にいた地縛霊の『目撃証言』を聞くことが出来る」んだから。解決できない事件なんて、ある訳がないじゃないですか!

唐突だが――。
私は「天才」であるがゆえに、映画や二時間ドラマ等の作品は苦手である。
「上っ面を撫でた」程度の理解だと、自分が納得できずに煩悶してしまう。
(それが間違った解釈であっても)「制作意図」まで想像しないと気が済まない気質だからだ。
最低でも「そのコンテンツ」を五回はインプットしないと「ちゃんと理解」できない、という非常に残念な気質である。
長いコンテンツであればあるほど、「その作業」は困難になる。
十時間かけて「五回、同じ映画を観る」か、それ以上の時間をかけて「想像する」かしかない。
後者の方が楽しいが、時間は有限で全ての時間を割く訳にはいかない。
私の資質が「天才性」なのか「偏執狂」なのかは、諸賢の判断に委ねる。
で。
私がアニメを好むのは、一回が「二〇分程度」のコンテンツだからだ。
もちろん。「現実逃避の達人」である私との親和性が高い、という事実も認めるし、「ヲタクじゃないんだよ!」という弁解をするつもりも更々ない。
だが。「優良コンテンツ」と認めたら、徹底的に観る。
「文章大好き」は、どうした! という異論も認めるが、「小説」が一番、私の中で検索性が高いコンテンツだから、今でも一番に好きだと言える。
何回読んでも「ちゃんと理解できない章」だけを読み返すだけで済むから、短時間(とは言え、何度も読むから「……」だが)で理解が出来る。
――先ほど、録画してあったアニメ「虚構推理」第九話を視聴した。
視聴する際に。登場人物の「一言の台詞」の意味合いを「ちゃんと理解する」ために、五回ほど「その台詞」だけをリピート再生した。
結局、二〇分のコンテンツを初見で観るにあたっても、四〇分以上かかってしまった。道理で生きづらい訳だ。

評価が変わったのは、「鋼人七瀬」のエピソードに入ってからでした。
俄然、面白くなってビックリしましたとも、ええ。
都市伝説である「鋼人七瀬(『顔』が無い、スタイルのいい巨乳女性にしてモノノケ。以下、『彼女』)」を退治しよう、というストーリー。
※漫画「モブサイコ100」のワンエピソードである「都市伝説退治」に似ているモチーフですが、「パクり」などという無粋は申し上げますまい。時系列で言えば「鋼人七瀬」の方が先だし、解決へのアプローチが全然違うから両者ともOKです
文字で書くと、「まだ陳腐」だよね? 面白い理由は、書いていきます。

「え? なんで突然、面白くなってるの?」と思い、作品名でググってみたんですよ。

「虚構推理 鋼人七瀬」という小説が原作。城平京氏の著作で、二〇一一年に刊行された「第12回本格ミステリ大賞」の受賞作。
え? 「オカルト少女」と「不老不死で未来決定能力(!)を持つ青年」が出てくるファンタジー性が高い作品で、「本格ミステリ大賞」?
実際に、審査員の評は割れただろうと愚考する。
「これをミステリと認めたら、『ミステリ』というジャンルが根底から揺るがされかねない」作品だと思われるであろうことは想像に難くない。
小説自体を知らなかったのは、ひとえに私が「ミステリ」というジャンルが苦手で、当時は仕事で手一杯だったからだ。
※でも。コミカライズもされているので、自分の無知に恥じ入るばかり……
ミステリが苦手なのは、「『犯人当て』みたいな作品を、何度も読むのが苦痛だった」という私のエゴが原因だ。
※実際のところは、京極夏彦氏や森博嗣氏の著作も所有している。でも、二回目以降は、読んでいて疲れてしまう――
「虚構推理」に話を戻すと。後に続編的な短編が数作品、発表された。
なるほど。
時系列を遡り、短編のエピソードも書いていた訳だ。
アニメ作品化の際に、時系列に沿って短編を配置したのだろう。
最初に、繋がりの「チグハグさ」を感じたのも道理だ。
※第一話では岩永琴子は彼にウザがられているが、いつの間にか「肉体関係を持っている」ことを匂わせる台詞が出てきたりする
本編(最高傑作)が、最終エピソードになっているのか――。
小説(漫画)ファンの方々は、そこまで織り込み済みで「本編」を待っていたんだろうな? と思う。
逆に。「発表された時系列」になぞらえて、「本編」を読んでから「短編」という順番で読んだなら、面白かっただろうと思う。

話を戻すと。
都市伝説「鋼人七瀬(以下、『彼女』)」は、作品世界では「物理的危害を人に加える」ことが出来ます。
しかし、人間は「彼女」に触れることすらできない。
※RPGで例えれば。「物理攻撃無効」の敵に、武闘家一人で挑むようなものです。一方的に攻撃を受けます

「人間が想像し得る事象は、現実に起こり得る」というメソッド。
そこまででも充分に面白いんですが、どんどん超展開が続いていきます。

「インターネット」というメディアを使い、「彼女」の都市伝説を作り上げて意図的に顕現させた、「悪意ある人間」が存在する。
※最終話まで視聴してないので、「悪意」があるのか分かりませんが……
「彼女」が起こす事件を、二人の主人公(この二人は付き合っている)が解決していくのを、霊感が強い「主人公青年の元彼女(婦人警察官)」が見守っている(正しい意味での「狂言回し」ですね)という見せ方です。

最初は、「チート能力」を持った青年が「鉄骨を片手で軽々と振り回して武器にする、鋼人七瀬」に物理戦で挑みます。
彼は「特殊な存在」で、「彼女」に触れることが出来るからです。
そもそも、彼自身が「不老不死」なんです。
頭をカチ割られたって、修復した上に「生き残る可能性のある未来」を掴み取る「未来決定能力」も持っている。負けるはずが無いですよね?
※未来決定能力は、彼が「死んだ時だけ発動する」という制約があります

でも。「彼女」は、それでも倒せないんですよ。
究極とも言えるチート能力をもってしても、「彼女」は倒せません。
一時的に倒せても、「インターネット上で、亡霊『鋼人七瀬』を信じる人たちが、『彼女』を再生産」してしまうからです。
そして。信じる人が増えれば増えただけ「彼女」は力を増していきます。
その後に、決定的な事件が起こります――。

「彼女」が、殺人事件を起こしてしまったのです。
それまでは、目撃情報や軽度の傷害事件しか起こしてこなかった「彼女」が、ついに「殺人事件」を起こしてしまった。
しかも。「彼女」自身と同じく、被害者は「顔を潰されて」殺害されていました。
しかも「抵抗や争った痕跡」はなく、「被害者は格闘技の達人だった(大柄な男性警察官)」。
新聞やテレビニュース番組でも、報道されてしまった。
オカルト信者たちは、大いに恐れつつも大喜びした。
「やっぱり、実在したんだ!」
いや、正確に言えば。
実際に「彼女」は存在しており、殺人事件を犯した訳ですけどね……。

「あれ? これ『無理ゲ―』じゃないの?」と私が思った途端に、「モノノケたちの知恵の神様」である岩永琴子が、解決方法を提示する。

「鋼人七瀬」を消す方法は一つ。
「顕現している『彼女』を信じている、オカルト信者のネットユーザーたちに「虚構(ウソ)」を発信して、彼らに「『鋼人七瀬』なんていない!」と信じさせる他に方法はない! と言い放ちます。

つまり。
「架空の犯人をでっち上げ」て、実在する「彼女」を否定してオカルト信者であるネットユーザーが納得できる「虚構」を構築すれば、都市伝説である「彼女」を消し去ることができる、ということ――。
唖然としました。
いや……、これ全然「ミステリ」じゃないじゃないですか!

岩永琴子は、四つの「虚構」を用意します。
それで。オカルト信者に「虚構」を信じさせれば、主人公たちの勝ちです。
岩永琴子は、自分が打ってプリントアウトした分厚い「虚構」を指し示してみせます。
恐らく、(作中で表現はされていませんが)すべての「反論」に対しての対処方法や設定まで書かれているのでしょうね。

「さあ。ネット掲示板上での、逆『悪魔の証明』の始まりだ!

ですが、ここで大きな問題が立ちはだかります。
主人公たちは、「彼女」を生み出した「悪意ある人間」の正体を知っているんです。
彼(女)もまた、男性主人公と同じ「不老不死で、未来決定能力を持っている」という事実まで、知っているんですよ。
彼(女)もまた、劣勢な流れになれば自ら首を切って絶命し「自分に都合のいい未来」を掴み取ります。
これって、勝負がつくんですかね?

はい!
――ここまでが、第九話までのあらすじです。
ネット掲示板での「岩永琴子と、自作自演もする『悪意ある人』の舌戦」の火蓋が切って落とされました。結果はどうなるんでしょうか?
実に楽しみです。
いや。厳密に言えば、結果は分かるんですけど「他の三つの『虚構』」の完成度が楽しみでしようがありません。
「本格ミステリ大賞」を取っている作品ですから、ガッカリさせるはずが無いですよね?

「あれ? ミステリに……なってきてる?」という不思議感が堪りません。
アニメのBD購入も検討しましたが、先述の通り小説の方が好きだしなあ。
うん。このままアニメを最終話まで視聴し終わったら、小説版を買って読みたいかな? と思っています。
※「表題」を見て、「お前、読んでないんじゃねーか!」という方もいらっしゃるでしょう。絶対に、小説版を買いますから御容赦を……

――ベタ褒めしておいて、最後まで書けないというもどかしさ。でも、アニメが終わる前に読んじゃったら、アニメが楽しめなくなるんだよなあ。(琴子ちゃん……)

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