書評~ナチスは「良いこと」もしたのか~を読んで

まず私はナチ支持者ではないことを申し上げる。

この本を読む前に期待したことは、これまでのステレオタイプの
ナチ=完全悪
という歴史の図式と違う方向からのアプローチがあるのでは、ということだったが、そうではなかった。

この本の論点の組み立ては3つ。
1.オリジナリティ
2.目的
3.成否
である。

1.では
「ナチは◯◯を初めて実現したといわれている。しかしその考え方は第一次大戦以前よりあり云々」
「ナチは大衆車を開発販売したが、フォードの模倣云々」 
このようなパターンが繰り返される。

2.ではさらに沼は深まり、
「すべては民族主義、軍国主義の実現のため」
に帰結する。

3.では
「大した成果はなかった」
「結局戦争に力を入れたからろくに実現しなかった」
と締めくくられる。

「ナチは悪。目的が悪だから評価しない」これが筆者に最初から「ありき」の最適解であり、あえてこの本を読む価値はなかったと思わざるをえない。

 過去からあった政策にもかかわらず他の国々が実行しなかったことをナチが実行したというところにフォーカスし、 よくも悪くも 評価することを期待したのだが「ナチが発明したわけではない  あいつら悪者 ハイ論破」 という 紋切り型ばかりで本としての 面白さも深さも感じない。

歴史上の「良い政策」が全て歴史上初の試みで、目的は正義と道徳に溢れ、成功を繰り返しているだろうか?
大半は過去の政策を組み合わせ、チャレンジしては時の政府の正義から横溢した人々の反発を買い、 一時的な成功もいつかは終焉を迎えている。
完全なオリジナリティ、完全な正義、完全な結果を併せ持つ良い政策をやっている、と言っているのは朝鮮半島の北半分以外には知らない。

タイトルの付け方で売れるか売れないかは決まる、というマーケティングにはまった私がバカなのか。この本を「借りて」読んで判断することをおすすめしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?