平岡監督を振り返る

 エスパルスは平岡監督の元で何を目指したのか、シーズンインしてからの試合を観てどうだったのか。そんなことをつらつらと考えました。考えただけだと忘れてしまうのでメモ書きとして残します。ということで、客観的な分析ではなく、なんの当てにもならない個人の感想です。文章の構成も無しに並べただけなので適当に流してください。

平岡監督であった理由

 昨年、エスパルスはぎりぎりで残留を果たしたわけですが、僕は頭を抱えました。毎年、監督が代わり残留争いを繰り返すなんて異常です。何が問題なんでしょうか。

 昨年末から開幕直前までずっと悩んだ末に、思いついたのが「エスパルスには成功体験が無い」でした。

 チームの方向性がとか、スタイルを作るべきとか言われますが、エスパルスにはそれが根付いているとは思えません。僕はその理由をチームとして成功体験がないからと考えたわけです。

 成功しないからやっていることを信じられないのではないだろうか。ならば何かに徹底的にこだわって、少しでもいいから結果を出す。結果とは前年より1つ上の順位でもいいし、とにかくやり切ったとみんなが信じられればいいんです。そのためには難しい何かを目指すより、まず自分たちが納得できて、かつとにかく続けられるやり方でなくてはなりません。

 そして一番大切なのは、選手だけでなく、サポーターやクラブスタッフ、スポンサー、メディアなどエスパルスに関わる全ての人でそれを信じることです。そうして成功体験を積み重ねた結果、みんなが共有するものが生まれ、それが自然とスタイルになるのではないかなと考えました。

 となれば、昨年末の雰囲気を踏まえて、エスパルスに関わるみんながまとまれる最大公約数が平岡さんというのは納得です。

 こんなことを考えていたら、開幕直前にエスパルスサポのmokichiさんがnoteを書いてくれました。もしかしたらここで書かれているムーブメントは僕の思ったことに近いのかもしれません。勝手に同意を得た気持ちでなんとか納得感を持ってシーズンインすることができました。

向かう矛先は正しかったのか?

 上に書いたのは言ってみれば勝手な自分の気持ちの落としどころなのですが、少しひっかかるところもありました。サポーター間の意見を見ていると「これまでは勝てなかったのは、選手が闘えてなかったり、一体になれてないからだね」みたいなものが共通の認識になっている雰囲気がありました。(言いすぎかもしれないけど選手がまだ半人前だから勝てなかったみたいな)

 確かにチームはマニュフェストでそういったところを掲げましたが、それはあくまで強調するテーマです。それがチームが弱い根本原因でないと思います。それらを原因としてしまうのはちょっと選手を馬鹿にしすぎで、基本プロの選手である以上闘いますし、現にエスパルスにも闘えるところに特徴を持つ選手はいるわけです。

 仮に選手が闘えてないとしても、選手は毎年入れ替わっています。それでも闘えなくなるとしたら、戦えなくしている何かがエスパルスにあるということになってしまいます。だとしたら改善すべきは選手ではなく、選手をそういう状態にしてるエスパルスの何かであるべきです。理屈で考えたら、改善の矛先は選手だけでなく、その何かにも向かうべきではないでしょうか。

 陰謀めいたことを言いたいのではなくて、闘うことはまとまるために強調するテーマであって弱い原因のすべてではないということです。原因を選手の姿勢とすることで本来向き合うべき様々なことに目がいかなくなっているのではないか。そんな違和感を感じました。

シーズン始まってから見えていたこと

 非常に前向きな雰囲気でスタートしたエスパルスでした。選手のコメントでも試合で起きたプレーを自分事として取り組んでいる様子がうかがわれます。マニュフェストで掲げた選手のマインドを変えていく面では積み重ねができているのかもしれません。
 次に実際にピッチで見えるゲームモデル的なものに触れます。まず高い位置からプレスをかけてショートカウンターを狙うのははっきりしています。ただプレスがはまる時と、はまらない時の落差が大きく、一番やりたいことではありますが、整備しきれていない印象を受けました。
 ボールを持ったら保持、ダイレクトにあまりこだわっていません。そして最近では、最後尾でボールを動かすところが向上していて、相手がプレスにきてもある程度は外してサイドバックなりにボールをつけることはできています。
 後ろでボールを動かした後は、相手のウィークな部分などある程度狙いところを伝えつつも、あまり選手のプレーに制約をつけないのも特徴です。そのためサンタナやカルリーニョス、オセフンなど前線でパンチのある選手が合流すると得点の可能性が見えたきた。そんな現在地だったように感じました。
 こういったスタイルに関しては良いも悪いも特に意見はありません。ただし、戦術やスタイルに関わらずやらないといけないことがぼやけていたことは気になります。そこは抑えないといけないよという場所を空けていたり、そこから動いちゃいけない時に動いたりが繰り返されています。
 例えば、サンタナと唯人で受け渡しながら相手のアンカーを抑える役目を担っているのに、同時に前に行ってアンカーをフリーにしたり。ボランチが2人とも出て行って真ん中を空けてしまったり。
 いくらサッカーの本質は球際だと取り組んでも、サッカーという競技である以上、盤面をどう攻略するかという要素は必ず含まれます。
 前から奪うことにチャレンジしたからいい、または選手を成長させるためあえて指示しないとしてその考えに文句は言いませんが、サッカーで必要とされる部分を詰め切れてなければ勝てなくても仕方ないよねということになってしまいます。
 逆に一戦必勝、勝ちたいというならば、多少難しくても必要なことは選手にやってもらわないとなりません。
 そうこうしているうちに、平岡監督は勝てないという理由で解任されてしまいました。じゃあその辺りをクラブはどう考えていたのでしょうか。とても興味があります。

戦術あるなしとか、選手に任せるところとか

 最近気になったトピックについても触れてみます。
 サッカーが11人で勝ちを目指すスポーツである限り、個人のプレー、判断であっても全て戦術行為です。そういう意味ではどんなチームも戦術はあります。
 そういったうんちくは別にしても、普通の意味での戦術もちゃんとあるのは試合を観ていればわかります。僕は、逆に相手の特徴に対してどこを狙うとか、試合への対策は割と練るタイプの監督だなと感じていました。
 次にチームの約束事を増やすのか、選手に任せる部分を増やすのかという話。僕はこの話題はあまり意味がないなと感じました。
 なぜならチームの設定を与えず選手に全ての判断を任せたとしても、結局選手間でバランスを取って調整はおこなわれるからです。例えば、11人足の速い選手がいても全員が全速で走るわけにはいきません。誰かは後ろでパスを出して、誰かがゴール前に入ったりといった役割分担が発生します。これらは選手の中から発生した約束事のようなもので、結局戦術を与えようが選手に任せようが必ず各選手に制限は入るのです。
 逆に約束事を与えることで適切に選手の役割が整理される場合もあります。お互いの特徴が整理されれば、選手間の相互作用が高まり、チーム力が単純な足し算以上に引き出されるはずです。
 つまり選手個々の判断をチームの方向性に繋げることが大切で、そのために今いる選手や状況に合わせてどういったアプローチをとるかの問題でしかないわけです。それさえできればそのバランスはどちらでもいいと僕は思います。

サッカーの競技としての面をもっと見たい

 長々勝手な感想を書いてきましたが、正直今でもよくわかりません。クラブが平岡監督をどう評価して、何を求めていたかは知りたいところです。
 ファンはエスパルスのどこを好きになるかは自由です。別にみんながサッカーを掘り下げて考える必要はありません。
 しかしクラブ自体は、サッカーのクラブである以上サッカーの競技面を高めることが中心であるべきだと思います。
 僕はエスパルスがどうやって競技面を高めて継続的に強くなろうとしているか知りたいのですが、クラブやメディアから聞こえてくるものと、実際のピッチで起きていることの整合性はぼやけているように思えてしまいます。
 マニュフェストで掲げたようなプロ選手としてのパーソナリティを高めることも、選手が生き生きプレーすることも、エスパルスに関わるみんなが納得できるスタイルも、全て大事なことです。
 しかし、サッカーで勝つことを考えた場合は、それだけでいいというわけにはいきません。サッカーが一定のルールの元で勝ち負けを競うゲームである以上、ゲームの特性から求められる様々な要素が存在します。そこで相手を上回れるよう突き詰めないと試合には勝てないのです。
 その方法は、ドン引きで守備を固めようが、前からアグレッシブに行こうが、日本人監督だろうが、外国人監督だろうが、球際と走力を生かそうがサッカーという勝敗のあるゲームとしての要素をピッチ内で突き詰められていればスタイルは何でもいいんです。
 当然、エスパルスも突き詰めようとしているとは思いますが、もう少し実際見えていることと、自分たちが取り組んでいることが一貫しているんだということをわかるように示してくれるとありがたいです。
 最後に大変な時期に監督という重責を担ってくれた平岡さんには感謝でいっぱいです。この約半年間、悩みながらも試合を掘り下げて見直すのはやっぱり楽しかったです。
 次期監督が誰になるかわかりませんが、これからもエスパルスがサッカーというゲームにどう向き合って戦っているかを見て、寄り添い、楽しんでいきたいと思います。



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