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修繕費を下げる方法についてー応用編

先週は仕入れ案件の査定や現地調査でバタバタしておりました。売価と金融機関の評価が合わず、購入を断念した物件もありますが、評価が出る物件に関してはどんどん仕入れていく予定です。

さて、本日は前回に引き続き修繕費を下げる方法について解説します。前回は基礎編ということでお伝えしました。まとめると①工事項目を明確にして見積もり比較する(材料、範囲)②出来る限り重層下請構造の下層業者に発注する。といった内容です。
今まで管理会社に言われるがままに工事を発注していた方は、これをやるだけでも格段に工事費用は下がります。

そして今回は応用編となります。最終的な目標は「自分で見積もりを査定する能力を身に着ける」というレベルです。もちろん細かい部分は良いのですが、ざっくりと外壁塗装でこれぐらいの面積だとこれぐらいの原価でこれぐらいの利益だろうから、この金額が妥当だろうな…… ということが感覚的にできればOKです。

これができるようになると金額交渉もしやすくなりますし、無理な値引き交渉で相手の心証を悪くすることもなくなります。

そのためには工事費の原理原則について知っておく必要があります。工事費は材料費+労務費で構成されます。例えばクロス工事であれば、クロスの材料費と職人さんの人工(にんく)です。人工とは職人さんに支払う手間代のことで一日◯◯円という形で支払いをします。こちらを参照下さい。


これに諸経費と利益を載せたものが見積もりとしてオーナーさんに提出されます。まずは材料費と労務費がどれくらいかかるのかを把握する必要があります。
そのためには、自分で見積書を作成して理解するのが最も早いので、見積書を作る過程をシュミレーションしてみます。

マンションのエントランスのビニールタイルを交換する工事です。まずは材料費を算出しますが、そのためには材料の数量を決める必要があるので、工事箇所の面積を算出します。


続いてビニールタイルの枚数を決めます。ビニールタイル(600mm×600mm)の必要枚数を割り付け図を作成します。図面が描けない場合は全体面積から1枚の面積を割って算出することもできます。

計算で出すると37.08㎡÷0.36㎡=103枚となります。ここで注意点ですが、全て1枚丸ごと使うことができません(端の部分はカットすることになる)のでロス率を必ず設定します。概ね1.1〜1.2倍で設定することが多いです。こちらの図を参照下さい。

これで枚数が決まりました。続いてはこのビニールタイルの価格です。仕上げ類の建材には設計価格が定められています。(メーカーのパンフレットに記載されている価格です)これはあくまでも定価なので、当然ながら工事会社は定価よりも安く仕入れることができます。これは工事会社の規模や材料のグレードにもよるのですが概ね設計価格の30%〜65%ぐらいになります。

エントランスで使用するビニールタイルの場合、6,000円/枚程度となりますので、仮に仕入れを50%とした場合、価格は3,000円/枚となります。ここに利益を乗せます。利益率は概ね15%〜30%ぐらいになります。計算方法は内掛けと外掛けという方法があります。今回は20%で外掛けを採用します。

ビニールタイル1枚の価格がでましたので、最後に購入枚数を掛けます。これで材工の材料費の算出が終了となります。

さて続いては労務費となる職人さんの人工の算出です。これは工種や技術レベルによって異なるのですが概ね18,000円〜28,000円ぐらいとなります。近年は物価高騰に伴い上昇している傾向です。

ここでのポイントは人工だけでは労務費は算出できないということです。今回のケースですと、37㎡のビニールタイルの工事にどれだけの人手がかかるかわかりませんからね。これには経験値が必要で、工事管理をしている人間や、実際の職人さんでないと出せない数字ではあるのですが、「歩掛り」という便利な基準がありますのでそちらを参照します。

公共工事の積算価格を算出する際に用いられるもので、工種別に職人一人が1㎡作業するのに、何日かかるのかを表したものです。

但しあくまでもの基準なので実際の作業日数は前後するのでご理解を。公共工事工事標準単価積算基準と検索するとでてきますので確認してみて下さい。また、全ての工種で歩掛りがあるわけでは無いので近い工種のものを参照するという考えで活用して下さい。

ビニールタイルの歩掛りは近いものを参照して0.06とします。今回は37.08㎡となるので作業日数は約2.2日となります。そして利益を20%として計算します。

また、忘れてはいけないのが、既存のビニールタイルの撤去です。撤去についても歩掛りは同じですが、これは実際にはもう少し安くなりますので掛目をいれます。

これで、全ての数値が揃いましたので、材工それぞれの価格を足したものが見積もり価格となります。厳密にはさらに交通費や仮設費などがかかりますが、わかりやすくするために外しています。粗利約24%の見積書となりました。

工事会社としてはこれぐらいの利益率が適正だと思います。提出された見積もりに対して上記流れで査定をし、利益率が余りにも高すぎる場合は交渉の余地があります。

もちろんすぐにはできるようにはなりませんので、出てきた見積もりに対して毎回同様の作業を繰り返すことで実力がつきます。

是非実践してみて下さい。本日は以上となります。

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