夢のトンネル


夢の中で僕はトンネルを歩いている
杖をついて
トゥック トゥワック コン
トゥック トゥウィック カツ
歩きながら
冬のマントラを
唱え続けている
不思議なことに
このトンネルは
どこから見ても
紡錘形をしていている
こちらの世界を吸い込む
別の世界がトンネルの中にあるようだ
壁の楔文字は時にその均衡が崩れたことを示している
それは邪悪な何かの仕業のようであり
僕は気づかれないように気配を消した
よく見るとトンネルの奥、靄の中に
顔が二つあるヤヌスがいて
それが次第に裂けていっているのがみえる
セメダインような糸をひく
そこに向かって歩いているが
歩けば歩くほどヤヌスは遠くなる
距離は一向に縮まらない
瞬きの瞬間に時間が戻っているようなのだ
古代の鳥のつんざく声が聞こえる
白い糸のようなものが
ヒラリハラリと落ちてきて
繭のように体を包んでいく
僕は奇妙な安心感に
満たされていた
トンネルの天井に穴が開いて
星が滴るように降ってきた
僕はトンネルから抜け出せない


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