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Samuel Purdey / Musically Adrift

スティーリー・ダンを長年聴いていて、俗にいう「フォロワー」的なミュージシャンもチェックしているが、近年こそ良いなと思うアルバムに出会ってはいるものの、90年代や00年代はまだまだ満足いくものには出会えなかった。

かつては「スティーリー・ダン・シンドローム」と言って、いくつものグループ(大体ユニットが多い)が紹介されていたが、俺にとってはどれもダメで、単純にデュオだからじゃねみたいなのが多くて音楽的には好きになれなかった。

そんな中、1999年にこれぞスティーリー・ダン・フォロワーと思えるアルバムを手に入れた。それがこのサミュエル・パーディの『Musically Adrift(邦題:「夏のハイウェイ」』だ。

サミュエル・パーディはドラマーのバーニー・ハーレイと、ヴォーカルとギターのギャヴィン・ドッズの2人からなるユニットで、両名ともジャミロクワイのバンドに在籍していたことがある。特にバーニーはかなりのスティーリー・ダン・フリークらしい。そもそもこのサミュエル・パーディという名前も人物名みたいで、そんなところも本家みたいだし。

Samuel Purdey / Musically Adrift (1999, Good Sounds)
  1. Whatever I Do

  2. Valerie

  3. Lucky Radio

  4. Only When I'm With You

  5. I Can't Move No Mountains

  6. Late For The Day

  7. One Of A Kind

  8. Santa Rosa

  9. Soon Comes Another

  10. Bitter With The Sweet

このアルバムの何がスティーリー・ダン・フォロワーたらしめているか、それは「本家」に近づこうとする徹底した拘りにあると思う。

このアルバムの曲のほとんどのギターを担当しているのは、スティーリー・ダンの『Can't Buy A Thrill』に収録されている"Reelin' In The Years"の印象的なギター・ソロを残しているエリオット・ランドールだし、『Gaucho』やドナルド・フェイゲンの『The Nightfly』にコーラスで参加しているフランク・フロイド、そして極めつけとして『Aja』でのエンジニアやフェイゲンのソロ・アルバムで共同プロデュースを務めているエリオット・シャイナーが参加している。どれだけ本家に近づけたいという思いなのかが十分に伝わってくる。

なにせギャヴィンがギタリストだというのに、エリオット・ランドールを登場させるなんて、ウォルター・ベッカーを彷彿とさせるじゃないか。そんな拘りが伝わってくるこのアルバム、悪いわけがない。1曲目の歌いだしなんてフェイゲンっぽくもあるし、初めて聴いたときは「これだよ、待ってたのは」と思ったほどだ。コーラスも本家に寄せてきているし。

こういうのを聴くと、次にさらに期待してしまうが、残念ながら彼らはこのアルバム1枚しかリリースしていない。そもそもこのアルバム、当時は日本でしか出ていなかった。その後いくらググってみても海外記事は出てこなかったし。2013年になって、ようやくイギリスやアメリカでも発売されたが、その時はジャケットが変わっていた。

2013年に出た盤、イギリスではTummy Touch, アメリカではRAKというレーベルからリリースされていた。自分が持っているのは後者(写真はたぶん前者)。

なぜ当時日本だけでのリリースだったのかは理由がわからない。ああ、イギリス人はこんな素晴らしいアルバムを知らないのかって当時は思っていた。なんとなくレアな存在のアルバムだなとは思うが、知る人ぞ知るみたいな位置づけにしておくのはとてももったいない。


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