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「砂漠の祭典」バーニングマンに参加した(そして、大雨/洪水で立ち往生した)

先日「砂漠の祭典」バーニングマンに参加してきました。その際の体験がとても印象的だったので、個人的な記録を残してみようと思います。また、今年は異例の大雨/洪水で多くの人が一時的に脱出困難になりました。その経験についても自分が体験した範囲で書き残してみようと思います。

バーニングマンとは

バーニングマンとはアメリカはネバダ州で 1 年に 1 度、架空都市 Black Rock City を作り上げ 1 週間開催される砂漠の祭典です。Black Rock City 自体は五角形の街であり、その中に扇形の活動スペースと中心部分のオープンスペース、その他周辺部分で成り立ちます。

Wikipedia より 2005 年の写真

扇形の活動スペースでは滞在スペース兼ブースとして様々なテントが立ち並び、オープンスペース(に限らずですが)では思い思いのアート作品が展示され、その中心にバーニングマンの象徴である人形の造形物「ザ・マン」があり、その後ろには「ザ・テンプル」も設置され、通常であれば土曜夜と日曜夜にそれぞれ燃やされ、バーニングマンのクライマックスとなります。

2023 年のザ・マン

ここまで聞くと、そこまで特徴的なイベントではないように聞こえるのですが、イベントの参加には過酷さ、というより、準備を要します。

まず、会場は人里離れた砂漠なので地形的には外部とほぼ遮断されており、会場には電気、水道、ガス、インターネットなど、およそ現代生活に必要とされる生活インフラは整備されておらず、基本的には全て自分で持ち込まなければいけません。

また、商業活動も基本的に禁止されているので、現金はおろか、何かを会場で購入するということは基本的にできません。会場には仮設トイレの他、一部の例外(e.g. 氷、コーヒー)を除いて設備が用意されてないことになります。

持ち込んだテント。ここで生活します。

バーニングマンの参加の仕方

バーニングマンの参加の仕方、特にチケットの購入の仕方にはいくつかあります。具体的な内容はバーニングマンのジャパン・リージョナルのサイトの以下のスライドが詳しいです。とはいえ、チケットはすぐに売り切れてしまうため、獲得が難しいことで有名です。今年は奇跡的にシャトルバスと入場券がセットになったチケットが売れ残ってると友人に教えてもらったので参加することができました。

参加自体の方法にも大きくテーマキャンプとオープンキャンプがあります。

テーマキャンプとは事前登録制でキャンプ場所がアサインされ、基本的には何かの企画をグループとして提供する参加の方法です。テーマキャンプ参加の方法は様々ですが、基本的に何かしらの貢献の代わりに個人では用意の難しい設備にアクセスできたりします(e.g. キッチン)。

オープンキャンプとはそうしたグループには所属せず、用意されたフリースペースに自由に参加する参加方法です。自分は参加スケジュールがイレギュラーだったので、オープンキャンプを選択しました。

バーニングマン参加の準備

自分はオープンキャンプを選択したのでテント、寝袋、水、食料など、全て自分で用意しなければなりません。また、シャトルバスの制限上、スーツケース等は 2 つまでに抑えなければならない上、砂漠の性質上、昼は 40℃ 近く、夜は 5℃ 程度まで下がる可能性があるので、多くの食料は傷んでしまいます。自分たちは火器も持ち込めなかったため、カップラーメンなども難しく、結果的にパン、エナジーバー、缶詰などに落ち着きました。

準備については公式がサバイバルガイドを出してる他、ジャパン・リージョナルが公開してくださっているスライドがとてもよくまとまっています。自分が忘れたのはタオル、雨具(ポンチョ、長靴)、そして、ラジオでした(ラジオは本当に大事。現地での現実的な情報収集の手段はラジオ Burning Man Information Radio (94.5 FM) になります)。

その他、便利ツール

  • 2023 バーニングマン参加者 FB グループ(日本語)

    • まじで神。運営の皆さんには頭が上がりません。長年参加されている経験者の方を初め、様々な情報を提供してくださる上、ミートアップなども複数回開催され、事前の疑問を解消することができます。本当にありがとうございます!

  • iBurn

    • 非公式のアートやイベントのアプリ。会場入りすると位置情報などがアンロックされる。これないとつらい。特にオープンキャンプはテントの場所を見失いやすいので、このアプリで自分のテントをホームボタンを押して登録しておくと帰ってきやすい。

その他にも色々ありますが、自分は上記 2 つに最も助けられました。

バーニングマン当日!!

バーニングマン到着までにも様々なドラマがあったのですが、記事も長くなってきているので省略します。

当日!!バーニングマンの楽しみ方は個人的には人それぞれだと思います。会場はとにかく広くて回りきれないのと、各人が思い思いの行動をしているのでかなりカオスです。

アート作品を楽しむのもよし…

アートカーと戯れたり、DJ ブースに足を運ぶのもよし…

あてもなくテーマキャンプを渡り歩くのもよし…

こうして長い人は 1 週間ほど、一部の人はそれより短い期間、様々な思い出を作るのでした。

バーニングマンに参加して

バーニングマン自体はとても楽しかったと同時に、色々と自分の考え方に影響を与えるイベントでもありました。バーニングマンには以下の 10 原則があります。自分個人としてはこの原則を端々で感じることになりました。

 『どんな者をも受け入れる共同体である』(Radical Inclusion)
 『与えることを喜びとする』(Gifting)
 『商業主義とは決別する』(Decommodification)
 『他人の力をあてにしない』(Radical Self-reliance)
 『本来のあなたを表現する』(Radical Self-expression)
 『隣人と協力する』(Communal Effort)
 『法に従い、市民としての責任を果たす』(Civic Responsibility)
 『跡は何も残さない』(Leaving No Trace) 
 『積極的に社会に参加する』(Participation)
 『「いま」を全力で生きる』(Immediacy)

引用元: https://ja.wikipedia.org/wiki/バーニングマン

もちろん何から何まで自分で用意しなければいけない Radical Self-Reliance もそうですが、本当に様々な人が手を差し伸べてくれる Communal Effort。「足りないものはないか」「何かあったら言ってくれ」僕が経験した限りはそうした優しい世界でした。

また、Radical Inclusion。自分がテーマキャンプをそっと覗くと Come on in! と招き入れてくれて、ギュッと抱擁してくれる。そうした経験は(アメリカでマイノリティとして過ごしてることもあり?)自分の心に染み入りました。

加えて、Gifting。「パンケーキとベーコンを焼いたんだけど食うかい?」と何十人にもサーブしてるキャンプもありました。砂漠にそうした設備を持ち込んで人々に提供する義理はありません。なんて優しいコミュニティなんだ、自分も Participation せねばと思わせる経験でした。

さらに、Immediacy。現代社会と異なり、ネット回線もなく、イマココに集中するしかありません。多くの人が夜寝ることなどあまり考えず、時間にとらわれずその時その時を楽しんでるように見えました。もちろん 1 週間と限られたイベントだから可能になってる側面は多分にあります。ただ、自分の日常生活で得難い何かを自分はそこで感じました。

暖炉を囲んでその日に会った人達とゆっくり語らう

大雨

楽しんでいたのも束の間、砂漠には珍しくにわかに雨が降り始めました。雨具もなく、雨とともに気温も低下し始めたので、いそいそとテントに戻ったものの、結局止む気配なく、雨は夜通し降り続け、夜が明けた頃には以下の光景が広がってました。

写真からは分かりづらいのですが、辺り一面が泥化し、歩くのが困難なほど足に泥がまとわりつき、体力を奪います。また、地面が泥化した結果、通常の車ではタイヤがぬかるみを抜け出せず、なんと実質的に通行・脱出困難になってしまいました。まさか砂漠で大雨が降るとは、まさか車が通行不能になるとは、まさか滞在が延期されるとは、、、

この時、いくつかの問題がありました。

  • 滞在が予期せず延期されたため、物資不足の可能性(水、食料)

  • ネットがないため、帰宅・職場復帰の延期を関係者に伝える方法の欠如

  • ネットがないため、刻一刻と変わる状況の情報収集の困難さ

1 つ目は幸いにして余裕を持って準備していたので、大幅に遅延しない限りは深刻な問題にはつながらなさそうでした。

2 つ目は、一部の人がスターリンクを持ち込んでいたので、スターリンクのアンテナを探して、一つ一つ "May I use your wifi?" と尋ねていきました。ただ、大雨の影響か、彼ら/彼女らが持ち込んだ発電機もダウンしてしまったらしく、最終的に 5 回目くらいで使わせてくれる人にたどり着けました(後から公式の wifi も一部で開放されたのですが、この時は知る由もなく、一刻も早く連絡を取るために必死でした)。

3 つ目は幸いにして隣のテントの人がラジオを持っていたため、時々情報提供をお願いしました。後は基本的にそこら中を歩き回って情報収集をしていました。

脱出

幸いにして次の日には地面が少しずつ乾きだし、元々翌日出発の予定だったので、数時間遅れで出発できると思いきや、またもや雨が降ってきました。流石に少し落胆していると「脱出する」と。運営の方々がこのぬかるみでも走行できる車(e.g. 4WD?)を駆り出し、一番近い舗装された道路まで荷物のみ運んでくれるとのことでした。人間は数マイル先の道路まで雨とぬかるみの中、歩く必要があります。ところが、、"Hey you wanna ride?" なんと優しい運転手が僕たちを空いたスペースに乗せてくれました。そうしてなんとか最寄りの道路まで到達することになります。

遠くのプラヤ(会場)から歩いて脱出する様子

その後いくつかバスを乗り継いだものの、最終的には無事帰宅することができました。臨時のオペレーションを組んでくださった方々には感謝しかありません。

最後に

こうして初めてのバーニングマンは波乱万丈の末、終りを迎えました。個人的にはとても刺激的で、ユニークで、恐らく現地でしか会えないだろうバーナー友達(バーニングマン参加者)もできた上、今回は Man Burn も Temple Burn も逃してしまったので、また機会あれば参加したいという気持ちがあります。

帰宅後、久しぶりに近くのレストランで日常の食事を取ってる時にふと…「あぁ自分は近くに座ってる人に(バーニングマンでしたように)気軽に声をかけたり、ボディコンタクトしてはいけないんだ」と思うと、僕の今年のバーニングマンも終わったんだな、という気持ちになりました。

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