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「人狼殺」の本当の恐ろしさ
最近知った人気のスマホゲーム「人狼殺」がある。
人狼と言えばだれもが一回は耳にしたことがあるはずだ。簡単に説明すると、複数人の村人の中に紛れ込んでいる人狼を見つけ出し、村から人狼を追い出すゲームである。村人は1日に1人村から追い出し、人狼は1晩に1人村人を殺してくる。最後まで村人と人狼どちらが生き残れるかの頭脳戦なのである。
また、村人の中には人狼から村人を守る狩人、誰が人狼かがわかる占い師など役職を与えることで、このゲームをより一層を面白くしている。
僕が初めて友達と人狼をしたとき、このゲームは僕のストライクゾーンに時速160キロで飛び込んできた。頭脳戦で相手の裏をかくのは最高に気持ちがいいし、僕の得意分野だからだ。ちなみに僕は、狩人の役職に就いた際にはファインプレーを連発し名誉あるSECOMというあだ名を授かったほどの腕前だ。
しかしそれ以降、何度も人狼をしたいと思ったが、僕の最大の欠点「友達が少ない」という最大の障害により、この人狼したい欲求は満たされることなかった。人狼熱は常に不完全燃焼だったのだ。
そんな時、某youtuberの動画をきっかけにこの「人狼殺」のアプリの存在を知った。スマホ一台、ネット環境さえあればたとえ1人でも人狼を楽しめるのである。僕のこの不完全燃焼だった気持ちも思う存分燃やせるのである。
(ここでどのような人が人狼殺をプレーしているのか気にになる人も多いと思うが、このアプリでつながる多くのプレイヤーの心境は当時の僕とさして変わらないであろうことは、プレイヤーの名誉のために触れないでおく。)
そんな小さな興奮を覚えながら、アプリをインストールした。
アプリを開くと、現実の人狼との大きな違いに気が付いた。プレイヤーはアバターに置き換わるため、相手を観察するときに重要な表情やしぐさが全く分からないのである。みんな似たような顔をして同じような服を着て見たことのある素振りをするのだ。
要するに、相手の生情報は音声しか得ることができないのだ。そのため、怪しい怪しくないの判断材料は必然と「話す量」「話し方」「話の内容」の3点に絞られるのである。最初の二つの「話す量」「話し方」はある程度テクニックでなんとでもなる。僕もどうにかなった。問題は「話の内容」だ。「ここさえ意識して話せば勝てる」と僕自身確信していた。
ゲームが始まり、私の役職は狩人(村人を守ることができる能力がある)となった。SECOMとして友達界隈をにぎわせたこの実力を見せてやろうと、完全にやる気スイッチをONにした。
しかし、ここで問題が起こった。どうやら、人狼殺には参加人数によって変わる有効なセオリーというもの存在するらしいのだ。もちろん初見でセオリーなんて分からない。さらに、他のプレイヤーは人狼用語のようなものも乱用してくるので、初見の僕には話の半分以上が意味不明なのだ。もはや、日本語での会話は通用しないのだ。
そんなあたふたした状態の時に、自分の話す順番が回って来た。
「えーと、・・・そうですね、○○さんと同じ意見です。・・・はい。」
限界である。そもそも、会話の理解ができず、現状を把握していないのに考察も何もしようがない。話す内容がないのだ。
村人たちは便乗しただの、考察が伸びていないだの寄ってたかって僕を口撃してきた。そしてその日、満場一致でやつらは狩人の僕を村から追い出した。村人を守るはずの狩人が村人に追い出されたのだ。まさか、SECOMも住民が勝手に防犯グッズを取り外すとは思っていないだろう・・・
この人狼殺というゲームでは不可解な発言をしたものは人狼と疑われ、考察が伸びなかったものも人狼と疑われ村から追い出されるのだ。
つまり、人狼殺に存在する村はたとえ村人だとしても馬鹿なら追い出す悪魔のような村なのである。
あの村の本当の恐怖は夜な夜な人を食い殺す人狼ではなく、馬鹿を追い出すあの民意にある気がする。人狼VS悪魔、どっちが勝っても平和なんか訪れないだろうと思い、もう間違ってあの村を訪れないようそっとアンインストールのボタンを押した。
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