抜け出すために飛び込んだ世界であたしは溺れて死んでしまいそう
だけどそれもいいかもしれないなと思う。どうせ真実なんてどこにもないんだから。
都合の良い虚構
真実なんて存在しているようでその実どこにも存在していない。虚構を真実だと思いこませようとする人間と虚構を真実だと思いこんだふりをする人間でこの世界は回っている。何もかもは都合よく存在することを求められるのであってありのままの姿を素直にさらけ出すことほど愚かなことはない。
重苦しく開かれた唇も謝罪の言葉もすべては都合よく存在するためのものであって真実などどこにもない。現実世界が少しばかり自分にとって心地良い形をしていたからといって心まで剥き出しにしてしまうべきではなかった。この世界は例外なく敵であることを忘れてはいけない。私の見ている景色は常に誰かの見せたい景色であることを忘れてはいけない。
甘い残り香
夢だったならどれだけよかっただろうと思うことはあっても夢を見なければよかったとこれほどに思ったのは初めてだ。夢を見たことすら夢であればよかったのだろうか。そうだとしても脳裏に映し出された映像は消えないからやっぱり夢など見なければよかった。
手の平で転がしていると思いこんで蓋を開ければ踊らされているのは私だった。上から支配しているつもりで支配されているのは私だった。どこにでも転がっているただのありふれた話。喜劇だってこの身に起これば悲劇に早変わり。
ああ、まだ余韻に浮かされている。その愚かさすらも受け入れられないほどに。
このまま死んでしまいたい。
そして未来に殺される
未来があると思い込めることは残酷だ。現実がどれだけ受け入れがたくとも未来にはそれが変わる、あるいは誤解が解けるなどと希望を抱く余地を生んでしまう。傷を受けたとき私は今この瞬間に傷ついたのだと錯覚するけども未来という時間のもつ不確定性や曖昧さこそが真の凶器だ。未来が存在しなければ死にたいと思うことはない。未来があると信じているから殺される。
現実に対する甘い解釈しかできないのも未来があるからで今この瞬間しか存在しないのならばあらゆることをもっとシビアに捉えられるだろう。私の見ている景色は誰かの見せたい景色だと言ったけれどその誰かとは紛れもなく私である。
溺れていく
沈んでいく身体を止めることができない。
誰かの理想の世界を私はまた壊してしまった。
この長い長いトンネルを抜けたら素晴らしい世界が待っていると信じて飛び込んだけれどこのトンネルは周りの世界が崩れていく重みに耐えられそうにない。この場所もいずれ崩れて私は瓦礫に飲み込まれる。
でも、もうそれでもいいや。だってもう抗う気力なんてどこにも残っていない。