見出し画像

育成か勝利か

 

育成とは何でしょうか?


ジュニア年代の指導現場において、よく問題になることがあります。
それは、指導者が勝つためにやっているということです。
所謂 『勝利至上主義』 です。
スポーツなので勝ち負けは必ずつきます。勝ったほうが負けるより、自信もつく!より強いチームと試合が出来る!子供が勝ちたがっている!などが勝利至上主義者の主張になります。
 
私は、勝利は育成において必要だが最優先してはいけないと考えています。

では、勝利至上主義の指導者(チーム)は具体的にどのような指導を行っていると思いますか?
 
 

勝利至上主義の特徴


①メンバーが常に固定されていて、試合に出場出来ない子がいる
②相手チームに合わせてメンバー(システム)を代えている
③プレーの選択を指導者がやっている

①②に関しては、プロチームは必ずやっています。ジュニア年代においても必ずしも悪いとは言えないかもしれません。

しかし育成とは、目標からの逆算によって長期-中期-短期とやるべきことを決めなければなりません。その過程で試合に勝ちたいからと言って、やるべきことをおざなりにしてはいけないのです。

最も見分けがつきやすいのが,③のプレーの選択を指導者がやっている
です。しかもほとんどの指導者がやっています。
いくつか代表的な例を挙げましょう。

「サイドに蹴れ」「真ん中に蹴るな」「前に投げろ」「あの選手にパスを出せ」

どうでしょうか?
あなたのお子さんのチームの指導者はこういう指示を出していませんか?

もしかしたら指導者はこれらが勝利至上主義とは気付いていないかもしれません。
しかしサッカーは試合中、目まぐるしく展開が変わります。その中で、ジュニア年代の子供が的確な判断をするのは難しいことです。たくさん間違ったり、失敗します。
その失敗によりチームが負ける(失点する)のを嫌って、指導者が最もリスクの低いプレーを指示しているのです。

しかし成長には、たくさん失敗して、気付き、学び、やってみるというサイクルが必須です。このサイクルをさせてもらえない子供は、自分で考えることを止めて、指導者に怒られないようにプレーすることを選びます。そういう選手は当然プロになることは出来ません。

では、なぜこのようなことが起きているのでしょうか?

選手が考えることをやめると強くなる!?


 ジュニア年代の子が自ら考え、判断し、実行するのは簡単なことではありません。育成には必須です。このサイクルを通して選手は成長します。
しかしチームは弱くなります。
なぜか?
答えは簡単です。
サッカーは複雑で難しいスポーツだからです。一瞬一瞬に適切なプレーを選択することが求められるのです。それをボールを扱うのにも苦労するジュニア年代の子がやらなければならないのです。
なので当然たくさんミスをします。そのミスに指導者は耐えられずプレーの選択肢を指示します。そうするとどうなるか?

チームは強くなります。

なぜか?
子供は自分で考える必要がなくなり、やることがはっきりします。指導者に言われるがままプレーをするので、正しい選択肢でプレーできます。その結果チームは強くなるということです。
ほとんどの指導者は、こういう指導をしています。チームが強ければ自分の評判も上がるし、選手もたくさん入ってきますからね。
残念ながら、こういったチームがたくさんあります。


まとめ PLAYERS FIRST


 これは日本サッカー協会が、指導者向けの講習会で提唱している言葉です。つまりD級以上のライセンスを持つ指導者は全員、この意識を持つべきだと知っています。
ですが現状は上述したように、選手の可能性を潰している指導者がほとんどです。
一番問題なのは、指導者がそのことに気づいていないということです。自分の指導が正しいと思い込んでいます。しかし指導者というのは一番勉強しなければいけないのです。それはサッカーの戦術だけでなく、心理学、栄養学、育成理論など多岐に亘ります。常に選手にとって何が必要なのか?他の指導法はないか?を考え、新しい知識を習得しなければなりません。
学ぶことを止めてしまったら指導者は務まらない。
ジュニア年代に限らずですが、子供を預かるということは、その子の将来に対して責任が生まれる。ということです。
指導者は育成者です。軽い気持ちでやってはいけないのです。
育成に携わるなら、相応の覚悟を持ってやっていただきたい。
育成のために勝利も必要です。でもそれは、選手の可能性を最大限に広げることで得られる勝利でなければなりません。
指導者のみなさん、子供たちの可能性を我々が一番信じてあげましょう!!


全てのフットボーラーに愛を込めて
Con affetto a tutti i calciatori.

Ciao!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?