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パックンの「節約筋を鍛えよ」に激しく共感

ReHacQ(YouTube)で後藤達也さんとパックン(パトリック・ハーランさん)の対談を観た。新NISAスタートの時節柄、基本、インデックスファンド投資の話であって、これはこれでとても勉強になったが、なんといっても、パックンの「節約筋を鍛えよ」にはツボったし、大いに腑に落ちた。

なるほど、そもそも筋トレ全般に興味も習慣もなかったが、ましてや節約筋は一切ケアを怠って来たし、存在そのものもまるで意識して来なかった。

7歳で両親の離婚に遭遇、母子家庭となったパックンは、いくらかでも家計の足しになればと10歳からpaperboy(新聞配達少年)として雨の日も雪の日もコロラドの坂道を早朝から自転車で上り下りしたという。と同時に、

「節約こそが儲けの近道」

との極意を幼くして体得したのである。ゆえに、パックンの節約筋は、いわば筋金入りである。

ただ、なぜパックンの発した「節約筋」の一言に一撃でヤラれたかと改めて考えてみて、はたと思い至ったのである。そうか、括約筋(かつやくきん)をもじっての節約筋(せつやくきん)なのではなかろうかと。

いや、きっとそうだ。なんとなれば、漢字でもひらがなでも一文字違いということはもとより、一方は肛門周りの筋肉で、緩むと便がダダ漏れになるし、他方は、消費行動周りの筋肉で、緩むと金がダダ漏れになるではないか。この年で括約筋を鍛えるのはちと手遅れの感もあるが、節約筋ならまだイケる……というか、この先の、オマケの人生を豊かに過ごすに不可欠な筋力(金力)と思えてならない。

そもそも僕は浪費家ではない。酒や女性にうつつを抜かして蕩尽した、という記憶は皆無である(そもそも下戸である)し、競馬・競輪・競艇・パチンコ……博打の類いもいっさいやらない。

ただ、漫然とお金を垂れ流す、が常態化していることは否めない。

例えば、街中で漫然とスタバに入って漫然と抹茶ラテをオーダーするし、帰宅途中、コンビニに入れば漫然とハリボー(グミ)を買って、これまた漫然とペットボトルのお茶を買う。ときどきスマホに勝手に飛び込んでくるJINSの15%引き、20%引きのクーポンがこれまた曲者で、「念のために……」とばかり手持ちのメガネと同じデザイン、同じ色味のものをまた一本、ネットや路面店で漫然と買い足してしまうこともある。こうした無自覚で小市民的な消費行動は、一つひとつはさほどの財布の痛手とはならないが、積もり積もれば家計にけっこうなインパクトを与え得る。仮にパックンが妻なら、疾うの昔に綱紀粛正を申し渡されているか、さもなければ、常時、ウエラブルカメラの装着を強制されて24時間冗費支出を監視・注意されるだろう。

ダラダラ浪費癖は、その名の通り悪癖であり、なかなかに矯正し難い脊髄反射的な、すなわち咄嗟の行動である。これに対する節約筋の制御行動も咄嗟の判断、瞬発力を要するものの、いわば脳幹反射的とでもいうべきか……ヒトの心臓を動かしたり、呼吸を制御したりと、生命維持により深くコミットする反射……というか、指令であり、究極的にはヒトひとりの生命や人生を救うと心得た。

ならば、いかにして節約筋を鍛えるのか、トレーニング法を2つほど思い描いてみた。

節約筋の筋トレ法その1: 先入れ先出し法

会計学にいう「先入れ先出し法」とは、棚卸資産の評価や原価計算をするようなときに、先に仕入れたモノから先に払い出されたと仮定するやり方である。英語のFirst In, First Out(FIFO: ファイフォ)に由来する。これに倣って、「すでにあるもの、買ったものが先になくならない限り、あるいは劣化、陳腐化しない限り、重複品やスペアは絶対に買わない」と決めてかかる態度である。

ちなみに、これを有効たらしめるには、そもそも手持ち在庫の実態をつぶさに知っておく必要があり、一番良いのは、スマホのメモ機能にでも「在庫表」を入れて四六時中携帯することだ。

実践できているのは、例えば、緑内障の目薬。僕は疲れ目用のビタミン点眼剤も入れると5種類の目薬を常時帯同していて、これを3ヶ月ごとの定期診察のたびに、それぞれ在庫3本ずつに調整するには「在庫表」が欠かせない。で、これはわりと上手くやれているかと思う。

反対に、まったくもってダメダメなのが、それこそJINSのメガネで、安さやクーポンに目眩しに遭ってついつい買い足してしまい、云十本のスペアを昆虫標本のようにして引出しにしまい込んでいる。これはもう、在庫表の作成よりに先に断捨離……とばかり、プラゴミのゴミ出しのたびに、塩で清めてからそっと捨てている。

節約筋の筋トレ法その2: ハイエンド主義

こちらも、(メガネではやれていないが)いくつかの分野ではやれていて、それなりの効果をみている。例えば、腕時計を次に買うなら、金無垢の——しかも、ピンクゴールドの——パテックと決めてかかるのだ。若いとき、テレビの仕事でジャズ・サキソフォン奏者の渡辺貞夫さんとNHKのバンで六本木のご自宅から栃木の宇都宮までご一緒させていただいたことがある。中学生の頃からラジオの深夜番組で楽器を奏でておられた憧れのプレイヤーが真横にいる、という感動が持続したのは5分から10分。道中ずっと渡辺さんがつけていたピンクゴールドのパテック・フィリップが気になって仕方なかった。

以来、云十年、パテックは僕の左手にはついぞ輝かない。でも、それでいいのだ。欲しい時計はこれより他にないわけで、畢竟、究極の節約筋のイメージトレーニングになって来たように思う。

重複購入禁止主義にせよ、高嶺の花至上主義にせよ、大丈夫、慌てずともあなたの欲しいあのモノは逃げはしないから、という前提に立っている。また、そうこうしているうちに、モノの価値が社会の中で、あなたの内側で変化する、そのこと自体を楽しもう、という考え方に拠っている。老成? いえいえ、まだまだ物欲タラタラです。





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