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逆張りの慈善活動家: ジョン・テンプルトン

ジョン・テンプルトンと聞いて、20世紀後半を代表する投資家としての彼を知っている人は投資家だろうし、研究者はジョン・テンプルトン財団を通じて知っているだろう.

だが、彼が何者なのかその半生と共に知っている人は少ない.

ジョン・テンプルトンはテネシー州で1912年に生まれた投資家・篤志家である. 彼の半生は、2022年にYoutubeにコントラリアン(="逆張り投資家")というタイトルであげられており、彼の性格そして活動をよく表現している. イェール大学に進学するとポーカーで他の裕福な学生を打ちまかし儲けていたようだった.

彼が投資業界に入るきっかけとなるのが、リーマンショックで破綻したMerrill Lynch(メリルリンチ)の前身となるFenner & Beaneで働き始めることになる.

彼の投資スタイルは、伝説的な投資家であるベンジャミン・グレアムから影響を受けているとされている. 世界で最もお金持ちになったことがある人物の1人であるウォーレン・バフェットがその投資方法を学んだ師匠である.

その投資スタイルはバリュー投資、つまり割安な株を買い叩く方法である. 特に, 世界恐慌時に下落した複数の企業の株を購入し, 1940年代に投資の回収に成功している. さらに、1960年代からは高度経済成長期の日本に投資し、そこでも成功している. 彼が1954年に立ち上げたTempleton Growth Fundは、38年で約200倍のリターンを収めており、年率平均15%は伝説的な結果となっている. 特に、暴落時に空売りするのが彼の成功のスタイルだったようだ.

彼の投資スタイルについては、テンプルトンの姪の娘であるローレン・テンプルトンによってGoogleで語られていたり、書籍の中で語られていたりする. また、ローレン・テンプルトンは、ジョン・テンプルトンからシード投資を受けて設立したTempleton & Phillips Capital Management, LLCの創業者でもある.


ジョン・テンプルトンが残した代表的な慈善活動には3つある. Templeton PrizeJohn Templeton FoundationTempleton World Charity Foundationである.

最も最初に支援を開始したのが、1972年に設立されたTempleton Prize for Progress in Religion (現在ではTempleton Prizeとして知られている)である. 

ジョン・テンプルトンには、『人生には法則がある』というのが彼の信念にあるように見える. 『人生を開花させる秘密のプラン』(サンマーク出版)では、彼のそのような人生訓がまとめられている. (稲盛和夫の書籍を見れば、共通点があることがわかるだろう. また、稲盛が京都賞を立ち上げその中に思想・芸術部門を作ったのもの似た背景がある.)

Templeton Prizeでは、宗教における進歩に貢献した人たちを表彰し、これまでに53名の受賞者がいる. 受賞者の中には、マザー・テレサダライ・ラマなど宗教的実践家や宗教家のみならず、理論物理学者のフリーマン・ダイソンなども受賞している. つまり、宗教のみならず科学によって宇宙の真理や人類の真理に応えるような研究や活動をしている人たちに与えられるものとなっている. また面白いことに常に、ノーベル賞の賞金を常に上回る金額が提供され、2019年の賞金額は110万ポンド(約1億5000万円超, 1ポンド 139.2625円換算)となっている.

また、John Templeton Foundation (JTF)は、1987年に設立された組織であり、人類における難問に答えようとする科学や試みについて支援を行っている. この組織のビジョンは、人類繁栄へ貢献する研究を促す触媒になり、人々に目的と意味のある人生を与えられるようにすることを目的としている.

これまでに、3588のグラントを作り、約21億ドルの支援を行っており、1万4000件の学術論文が出版されている.

Templeton World Charity Foundationは、1996年に設立され、”人間の繁栄の重要な側面を改善することを目的としたイノベーションの強固なパイプラインを形成する研究プロジェクトを支援”しており、JTFと同じような支援目的を持っている. 一方で、JTFと異なり招待制の申請となっているようだ.

その中には、世界各地域におけるスピリチュアリティ、意識、赦し等に関する研究や研究ネットワークの構築に対して支援が行われている. 

ジョン・テンプルトンの精神世界への傾倒は、クリスチャンであった母親からの影響が大きいとされている. 彼の興味は、Templeton Prizeで明らかなように宗教と科学という対立を超えるあらゆる試みや問い(ビッグ・クエスチョン)にあるようであった. だからこそ、ノーベル賞で顧られなかった宗教、思想、哲学等などを重要視し、常にその賞金額を上回るようにしている.

精神世界と科学に関する重要な支援組織として、John Templeton Foundationはその使命を果たし続けている.

追加情報: 意識研究者へ向けて

ジョン・テンプルトン財団と聞いて知らない意識研究者は少ないだろう. 近年、意識研究では代表的な理論同士を比較するための研究が行われており、注目度は高まっている. 敵対的な協力(Adversarial Collaboration)と呼ばれる方法によって、統合情報理論グローバルワークス理論を比較しようという流れがある. 

なんにせよこういった研究は資金を受けづらいというのが常識であった. 少なくともアメリカの主だった国の助成金は受けられない. ここに支援しているのが, Templeton World Charity Foundation (TWCF)である.

2024年には、Association of Scientific Studies of Consciousness (ASSC)の年次大会が東京で開催される予定だが、TWCFより若手研究者支援のための資金獲得(総額5万ドル)も行われている. 


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