株式会社ギフトへの入社とは!?

0.今回の趣旨

今回は、就活生の目線で「株式会社ギフト」への入社を検討していこうと思う。ペルソナを設定していないので、自分自身にあっているかのチェック表感覚で読んでほしい。

また、主に有価証券報告書から得られる情報を用いる。すべての項目や内容を扱っているわけではないので、ぜひ読者には参考資料の有価証券報告書を参照することをお勧めする。

1.定性的な分析

まず、就職先を決めるには定性的な情報が重要になる。その会社のあり方に共感することができないと、就職した後に後悔するからだ。そこで、この分析結果から株式会社ギフトに共感することができるか確かめてほしい。

●事業

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A.事業内容

「横浜家系ラーメンを世界への贈り物に!」をコンセプトとして、横浜家系ラーメンを主体とした直営店の運営(直営店事業)、ならびにプロデュース店への食材提供や運営ノウハウ供給等(プロデュース事業部門)を展開しております。(株式会社ギフトの有価証券報告書P.5を引用)

つまり、、横浜で生まれたいわゆる「家系ラーメン」を主力商品とする外食チェーン店だ。ちなみに、家系ラーメンとはスープは豚骨醤油ベースで、麵はやや太めのラーメンである。有価証券報告書によると、家系ラーメンはスープや麵、具材などの工夫がしやすいらしい。イメージ図は横浜家系ラーメン町田商店のメニュー欄から「ラーメン」をもってきた。

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B.事業の特徴

a.部門全体

ラーメン店において重要な麵やタレの他、餃子なども自社か委託先で製造し、直営店とプロデュース店に関係なく、どの店舗でも同じ味・品質を提供することができる。また、製造委託も供給力に優れた食品メーカー(OEM供給を含む)にしており、安定供給ができる体制が整っている。

b.直営店部門

直営店の他に業務委託店形式による店舗を有する。また、ニューヨークとロサンゼルスへの出店を果たし、海外進出をしている。

c.プロデュース事業部門

取引基本契約にて、店舗開発、運営にかかる保証金、加盟料、経営指導料(ロイヤリティ)等が原則ないことになっている。そのため、株式会社ギフトの麵やスープなどの材料を継続的に購入してもらうことで事業を成立させる。また、店舗の立上時のプロデュースは原則無料で、立上後一定期間経過後のコンサルティングサービス(プロデュース店オーナーからの各種要請に基づく)は有償となっている。

●経営戦略(方針)

①既存店売上の維持と向上

地元密着型の展開を進め、地元のお客様に愛され、記憶に残る商品を提供することを重要視して、売上高成長率と売上高経常利益率を向上させていく。

②新規出店の継続と出店エリアの拡大

東日本に加え、海外進出も考慮している。

③内製化比率改善による採算性改善

内製化を進め、一層のコストダウンを図る。

●出世ルート(役員の経歴から推測)

現在の役員は、創業者以外全員が中途入社。よって、新卒で入社した社員が役員に入った実績がない可能性が高い。少なくとも、現段階ですぐ、役員に出世することは難しいだろう。
ただ、会社も創業者に経営を頼りすぎていることを警戒し、社員育成に力を入れることを記載しているため、将来的には新卒入社でも役員に出世できる可能性が高い。

●企業理念と求められる考え方

「シアワセを、自分から。」

当社グループの直営店事業部門、プロデュース事業部門のお客様はもとより、当社グループの授業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関等、ステークホルダーの皆様にシアワセを届けてまいります。当社グループでは、「元気と笑顔と○○で、シアワセを届ける。」というミッションを従業員に与え、それぞれの立場、役割に応じて「○○」での部分を自ら考え、シアワセを届ける行動を促しております。(有価証券報告書p6)

つまり、全ての人にシアワセをと届けることを目標に企業運営がなされており、従業員にはその「シアワセ」を実現するために必要な要素を自ら考え、実行するという主体性が求められる。(「シアワセ」の定義がないため、その定義も自分で考える必要がありそうだ。)

2.定量的な分析

ここからは、会社の経営状態が健全かどうか、数字をみて分析していく。

A.売上高・各種利益率の推移

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上のグラフを見てみると、売上高と売上総利益率は上昇もしくは停滞営業利益率と経常利益率は低下していることが分かる。また、販管費を見てみると、今年度は給料及び手当・雑給・賃貸料が上昇していた。これは、新規店舗の増加によるものと見てよい。(ギフトの注目する経常利益率に注目しない理由は、営業利益率と経常利益率が同じ傾向を示し、営業利益率を改善しなければ経常利益率も改善されないと思うからだ。)


つまり、新規出店で売上高が上昇し、内製化によって売上総利益率は安定した。(売上原価に含まれるのは主に自社工場で内製化している一次加工品で、販売価格を大幅に変更する可能性が低い。)ただ、コロナウイルス感染症対策により既存店で損益分岐点を下回った店舗が存在したことにより、営業利益の上昇が抑えられた。その結果、売上高の上昇幅よりも営業利益の上昇幅が小さくなり、営業利益率が低下した。ちなみに、プロデュース店に関しては、商品の棚卸しによる収入しか入らないので営業利益率にはさほど影響しないと考えられる。

グラフと上記より、今回の営業利益率と経常利益率の低下はコロナウイルス感染症対策によるものと考えられ、長期的には再度10%弱に落ち着くものと考えられる。

B.賃借対照表の変化

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資産自体は増加した。そして、その内訳で固定資産が拡大している。また、負債においては、固定負債の内訳のみ拡大した。上記に加え、純資産は微減したため、純資産の割合は大きく縮小している。これらの原因は、店舗の拡大だ。

店舗拡大を続けるという強気の経営方針を出しているため、今後も、「内訳において、固定負債が拡大し純資産が縮小する傾向」は持続するだろう。ただ、中小企業実態調査で宿泊業・飲食サービス業で売上高が10億以上の企業では自己資本比率が26%となったので(筆者の計算が合っていれば)、それと比較すると、まだまだギフトには固定負債を増やす体力が残っていそうだ。

D.その他

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総資産額・株価収益率・従業員数も上昇していて良い。経営の力強さや従業員を寄せ付ける力がありそうだ。

3.他社比較

今回は、「丸千代山岡家」と比較する。理由は、

1売上高が一番近いラーメン上場企業
(ギフト:丸千代山岡家=約11億:約14億)

2ラーメンの単一セグメント

であることが挙げられる。
また、簡略化のため、今回は、定量分析のみの比較とする。

A.売上高・各種利益率の時系列推移

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2つのグラフから、丸千代山岡家が利益率を安定させながら緩やかに売上高を伸ばし、ギフトは利益率を変動させながらも売上高を伸ばしていることが分かる。


B.損益計算書

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あまり、大きな違いはなかった。ただ、売上原価の割合がギフトの方が高い。これは、ギフトが卸売を行っているためであると考えられる。

ちなみに、どれだけ人件費に利益を回すかを

(給料及び手当+雑給)÷売上総利益

で出すと、ギフトは約36%、九千代山岡家は約47%と丸千代山岡家の方が人件費に利益を回しやすいことが分かった。

C.賃借対照表

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ここの大きな違いは、ギフトの方が負債の割合が小さく、純資産の割合が大きいことだ。ここから、ギフトには企業としての体力が十分に残っており、強気の新規出店に踏み出せていることが分かる。

4.まとめ

株式会社ギフトは、「力強いラーメンチェーン店」という印象だ。また、勢いに任せて新規出店をしているのかと思いきや、自己資本比率も高く維持され、経営の健全性も確かめることができた。
ぜひ、飲食サービス業に就職してみたい方は調べてみると良いと思う。

5.補論

今回、ギフトを調べて、「新規出店」「内製化」にこだわりすぎていると感じた。目標を国内1000店舗・海外1000店舗と掲げている。しかし、これは実現できるのであろうか?丸千代山岡家で153店舗、一風堂においても129店舗である。ラーメンほど、味の好みが地域で変化し、日本全国で展開することは困難であると、筆者は考える。この目標に固執して、過剰出店が起きないことを祈る。
加えて、内製化をあまりにも正当化しているように感じた。内製化には技術流出を防ぐ、コストダウンなどメリットはあるが、それにも限界がある。特に、コストダウンにおいては、慎重に考えて外注か内製化を考える必要がある。事業の方針で、「コストダウンするために内製化を進める」とだけ考えることのないようにする必要がある。

参考資料

【有価証券報告書】
・ギフト(2020年10月期)
https://pdf.irpocket.com/C9279/HTFv/lCgR/Vpgw.pdf
・ギフト(2018年10月期)
https://pdf.irpocket.com/C9279/sCL4/UxGB/BR35.pdf
・丸千代山岡家(2021年4月)
http://www.kabupro.jp/edp/20210430/S100L93Q.pdf
・丸千代山岡家(2020年4月)
http://www.kabupro.jp/edp/20200430/S100IILI.pdf
・丸千代山岡家(2019年4月)
http://www.kabupro.jp/edp/20190426/S100FP10.pdf
・丸千代山岡家(2018年4月)
http://www.kabupro.jp/edp/20180427/S100CV1X.pdf

【その他】
横浜家系ラーメン町田商店メニュー
https://www.eak-ramen.jp/menu

一風堂 店舗一覧
https://stores.ippudo.com/

中小企業実態調査 確報(2017実施)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003297911

Funda
・売上総利益率
https://business-navi.funda.jp/article/gross-profit-margin

・売上高営業利益率
https://business-navi.funda.jp/article/operating-profit-margin



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