営業利益率を比較しよう(製薬会社編)

0.営業利益率とは

営業利益率とは、営業利益を売上高で割ったものだ。

ここでの営業利益は売上高から売上原価と販管費を差し引いたものである。つまり、

営業利益=売上高ー売上原価ー販管費

営業利益率=営業利益÷売上高

それでは、本題に入っていこう。

1.製薬会社の営業利益率

まず、この4社を見てみる

武田製薬

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久光製薬

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塩野義製薬

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中外製薬

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上記のグラフをみると

中外製薬は営業利益が高く、久光製薬は営業利益が小さいことが分かる。また、中外製薬は他3社よりも販管費が小さく、調べてみると多くのことが分かりそうだ。

よって、今回は中外製薬と久光製薬を抽出して比較する。

2.営業利益率が違う理由の仮説を立てよう

ここで、2つの会社でなぜ営業利益率が違うのか、仮説を立てよう。下に、上記のグラフを再掲する。

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2つのグラフの違いは

「久光製薬の売上原価が5%高いこと」と「久光製薬の販管費が20%高いこと」

である。つまり、この2点が営業利益率の差に起因している。そこで、

A.久光製薬の方が単価の安い製品を販売している

B.久光製薬の方が販売費を多くかけている

の2つの仮説をたてる。

3.仮説Aの検証

仮説Aは「久光製薬の方が単価の安い製品を販売している」だ。

では、2つの会社がどのような製品を販売しているのか見てみよう。

<中外製薬>

まずは、中外製薬だ。

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上記の内訳を見ると、がん領域や骨・関節領域が多くを占めている。これらの領域の商品を、素人感覚で考えてみると、医療従事者向けの高単価な薬品であると考えられる。

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実際、「エディロール 中外製薬」や「アクテムラ 中外製薬」と検索しても購入ページには飛ばず、あっても薬の原理などに関する詳細資料や医療従事者向けのサイトに行きつく。

よって、

中外製薬の製品のターゲットは医療関係者で、単価の高い製品を販売している

ことが判明した。

<久光製薬>

次に、久光製薬を見てみよう。

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上の表とグラフより、久光製薬は「医療用医薬品」と「一般医薬品・その他」が多くを占め、その割合は3:2である。


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また、主な相手先を確認すると、上の2社は医療従事者と一般小売の両方に販売、残りの1社は一般向けの小売への流通であった。

以上より、久光製薬は「単価の高い医療用医薬品」と「比較的単価の安い一般向けの医薬品」の双方を販売していることが分かる。


これらのことから、仮説Aの「久光製薬の方が単価の安い製品を販売している」はある程度、裏付けられたといえる。

よって、仮説Aは

立 証

4.仮説Bの検証

続いて仮説Bの「久光製薬の方が販売費を多くかけている」の立証をする。ここでは、それぞれ「製品売上高に対する販売費の割合」を比較する。

<中外製薬>

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この表から、製商品売上高が786,946百万円で、販売費が72,585百万円なので、比較する数字は

約9%

であることが分かる。

<久光製薬>

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上の2つの表から、売上高は114,510百万円で販売費は28,631百万円(広告宣伝費+販売促進費)であるから、比較する数字は

約25%

※販売促進費のみを販売費にしても約12%


よって、

中外製薬(9%)< 久光製薬(25%)

であり、販促費は久光製薬が高い。

理由としては、「久光製薬は一般消費者向けの商品が存在するため、法人向け商品を売る中外製薬よりも販売費がかかる」ことが挙げられそうだ。

そのため、仮説B「久光製薬の方が販売費を多くかけている」も

立 証

5.久光製薬が営業利益率を伸ばす方法

大きく分けて2つの方法がある。

a.売上原価率を下げること

b.販促費を下げること

だ。

ただ、「aの売上原価を下げること」は商品の性質と国内の医療費抑制の流れから困難であることが予想される。また、サロンパスなど一般向けの医薬品に関して、ブランドや成果を確立しており、医療従事者向け事業に一本化することは好ましくない。そのため、「bの販促費を下げること」が有効な施策になる。具体的には、「知名度が高い商品のCMを少なくする」「SNSやその他のネット広告で効率化する(日本と海外の双方で利用できる)」などが挙げられる。(?)

6.まとめ

以上が、営業利益率に着目した企業分析だ。ざっくりとした、分析だが、何かの役に立てばいいかな・・・。

7.参考資料

<有価証券報告書>

・武田製薬https://www.takeda.com/49e9e2/siteassets/jp/home/investors/report/consolidated-financial-statements/asr144_jp.pdf

・久光製薬

https://www.hisamitsu.co.jp/ir/pdf/yuuka/119/4Qall.pdf

・塩野義製薬

https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_1_52.pdf&src=[%0],[%1]&rep=127,52

・中外製薬

https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_1_52.pdf&src=[%0],[%1]&rep=127,52

<その他>

・中外製薬の医療従事者向けサイト

・大木ヘルスケアホールディングスのビジネスモデル

・Funda





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