見出し画像

【五丁目ラジオ】美味しんぼ完全感想コーナー~きょうのしろう~#004-第2話「士郎対父・雄山」Bパート

https://www.5chome.tokyo/archives/1341

このコーナーでは、新井(あらい)・上妻(あがつま)の両名がそれぞれの視点から、1988年10月17日から1992年3月17日まで、日本テレビ系列で放映されたテレビアニメ『美味しんぼ』全136話について、毎回感想を発表していきます。ことの発端は、新井さんがアマプラで『美味しんぼ』を何周もみてしまったことがきっかけですが、上妻も幼少期に美味しんぼの単行本を買っていたというノスタルジーからこの企画はスタートしています。「きょうのしろう」という副題の通り山岡士郎の人間像にもおもしろおかしく迫っていこうと考えています。

飛び立つハト

第2話「士郎対父・雄山」Bパートも前回に引き続き上妻が担当します。よろしくお願いします。

でBパート。いきなり辞表出しちゃってます。で「食い物の味が一大事みたいにいう人間を見ると吐き気がするほど腹が立つのに、そういう俺自、身食い物の味に拘らずにはいられない。忌々しくて、自己嫌悪すら抱いているんだ…」と自分と食べ物との関係について内心を吐露しています。

で、そんなこんなしてるとなんかいかつい高級車に乗った和装の男が来ちゃうわけですよ。で、鳩が飛ぶシーンがここにインサートされてるんですけれども、ここはなかなか憎い演出ですね。ハトという平和の象徴が飛び立つ、これから起きる波乱を予感させます。ま、そんなことしてるうちに、雄山来ちゃうんです。3階に。あー文化部って3階なんだーってここでわかる。

アムロVSシャア

で、やっと第2話の「士郎対父・雄山」ということになるわけです。これは原作漫画だと第6話「油の音」に該当する回です。アムロとシャアがもう戦うわけです。京極さんっていうのはジーンとかデニムな訳ですよ。噛ませ犬みたいな。その証拠に「京極さんを相手に子供騙しのことをしていい気になっていたようだな。」と京極さんを子供あつかいですよ。

で、雄山は「では、お前に天ぷらの味がわかるか?」と一方的にお題を指定してきます。士郎はこれに対して、売り言葉に買い言葉で、「あんたの思い上がりを徹底的に叩きのめしてやる!」と返します。

でも「天ぷらの味がわかるか?」に対してこの発言はおかしいなと思いませんか?「わかる」とはどういうことかを海原雄山は問うているのです。これに対して、士郎が固執しているのは「思い上がりを叩きのめす」ことだけです。(俺=士郎の方がより)わかるので、(お前=雄山の)思い上がりを徹底的に叩きのめすことができる、と確信しているのでしょう。きっと。でも、何を根拠に?って話ですよ。

で、当日、また一方的に、海原先生はいうわけですよ。「天ぷらを食べてうまいのまずいのと判定するのは簡単だ。揚げる前に、どの職人がうまい天ぷらを揚げられるか、それを当てることにする。」と。

帝愛グループのやり方

これゲームのあり方としてはフェアじゃないと思うんです。「ジャンケンにしよう。」「じゃんけんのルールは、グー・チョキ・パーのどれが一番強いか、それを事前に決める」という割とカイジの「限定ジャンケン」という主催者側が圧倒的に有利なやつですよ。で、さらに「このテープの天ぷらを揚げる音が、変わったと思うところで手を挙げろ。」ってテープレコーダーで揚げる音を聞かせる。これもカイジの限定ジャンケンでいうところの「他のプレイヤーとのカードの交換や売買は黙認される」や「星についても交換や売買は可能である」という説明されないルールの解釈は可能ですというチートではないかと、帝愛グループのハメ方ではないかと。

まぁ、そんなこんなで、士郎は初対決で負けてしまいます。負けた士郎に対して海原雄山は「よく覚えておけ!!料理は人間が作るものだ、どの職人がうまいものを作るか作ってみるまでわからん者が得意げに食通振りおって!!」と一喝します。もう。ごもっともなんですよ。「人の観察を怠るな」ときっとそう言いたいんでしょうね。

逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ

あと、勝つためには筋道があると言いたいのかもしれません。で、立ち去ろうとする士郎に対して「逃げるのか士郎」と。で逃げちゃう。シンジくんは「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…」って戦ったのに。

エンディングのパートでは、皇居周辺を歩く谷村・富井・栗田の3人。富井が「景気づけにどうです、一杯」と谷村を飲みに誘います。すると、逃げ出したはずの山岡が「付き合いますよ俺」と言い、さらに辞表も撤回すると言い出します。「あの企画本気でやってみたくなりました。」「海原雄山。究極のメニューを作って必ず俺の前に平伏させてやる」というセリフで終わります。

これだと山岡が本当に浅い人間のように感じられてしまいます。目的は「海原雄山を俺の前に平伏さす」のではなく「究極のメニューを作る」ことのはずです。「究極の」と言ってるのですから、カント的にNGです。これはテレビ用に作られたセリフで「士郎対父・雄山」の構図をわかりやすくしてくれています。

しかし、原作漫画にこのセリフはなく、1ページぶち抜きで、山岡が立っているだけの絵になっています。解釈の余地が残されているという点で、こちらの方が深みがあるというか…。ね。

何故、究極のメニューに山岡士郎は取り組むのか

というわけで、第2話「士郎対父・雄山」というのは、ひとまず「何故、究極のメニューに山岡士郎は取り組むのか」を宣言した回であったわけです。

アムロが何故ガンダムに乗ったのかとか、シンジくんがなんでエヴァに乗り続けたのか、というそういうロボットを起動する話なんですよ。まとめると。究極のメニューというロボットに山岡がパイルダーオン!したっていう話。で、シャアとか使徒とかきちゃったなー。っていう。

で、後々にテム・レイとかゲンドウくんとかを倒すというか、乗り越えてくエディプスコンプレックスの話で、ビルドゥングスロマン的な物語なんだよ、ということを宣言した回な訳です。

小ネタとしては、天ぷら屋での勝負のときにね、雨なんです。これ、多分湿度云々とかいう天ぷらを揚げるコンディションの問題と、雨の音と天ぷらの上がる音がよく似てるっていう、耳の良さ、聴覚の問題を提示してるんじゃないかなと思いました。

以上。トゥーオブアース。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?