目で見て口で言え「過去からの呼聲」「火山での決闘」
国立映画アーカイブの「サイレントシネマ・デイズ」で伴奏付きの上映に行ってきました。まずは上屋安由美さんの伴奏でイタリア映画「過去からの呼聲」。
ヒロインは養子である息子から恋心を抱かれ、動揺する。日本で当時最も高く評価されたイタリア映画の一本で、壮麗な邸宅からヴェネツィアの風景までロケ撮影が見事。また、一部褪色しているものの、染調色の高い技術も伺える。上映プリントでは息子と母親が一夜を過ごしキスするシーンが、当時の日本の検閲により削除されている。(作品解説より)
ヒロインのマリヤ・ヤコビーニの美しさにまずは目を惹かれますねえ。特にあのアイメイクはなかなか普通の方が出来るものではない(かつやっても似合わない)のでは?と思います。上屋さんの演奏は、まるで最初から映画に付けられていたようで、(上屋さんだけではありませんけれど)楽士の皆さんの技術には自らを省みて項垂れて溜息をつくしかありません。
個人的には、夫を亡くし、遺児とともに暮らすヒロインが不慮の事故で一人息子も死なせてしまい、療養先で貧しく子沢山の男から子供を引き取って育ててあげるところで、「あなたもその方が助かるでしょう(大意)」と父親に向かって言ってしまうヒロインにまずは「ん?」となって、ラスト、自らに変わらぬ好意を寄せる医師と立派な青年に成長した養子の船上での決闘をなんとか回避したものの、疲れ果てて全てをうっちゃってひとり旅に出るという結末に「んん?」となりました。それはそれでリアルにありそうで、でも残された人たちはどうしたのかな(特に「養母を愛している」男と結婚する娘とかその父親とか)と遠い目をしつつしばし黙祷を捧げました。傷心の旅に出ることを決めたヒロインが手に取ったのが「時刻表」で、その後のカットでフィレンツェの水路を行く船の絵になるので、「船の時刻表ってあったのか!」と驚きました。
続いて見たのは、中国映画「火山での決闘」です。こちらは湯浅ジョウイチさんと丹原要さんの伴奏です。
1923~26年にかけてアメリカの大学で映画の演出や撮影技術について学んだ孫瑜監督は、緻密で大胆なストーリー展開とリアリズム的手法により、1930年代の中国映画界に革新をもたらした。地主に一家を皆殺しにされた青年の苦悩、逃れた南洋の港町で出会った踊り子とのロマンス、そして再会した敵との壮絶な戦いを描く。黎莉莉が16才で初主役に抜擢され、スター女優へのスタートを切った記念すべき作品。(作品解説より)
ヒロインがこの時16歳だったというのにまずは驚きがあり、名前を見て野球の一塁コーチャーになった気がしました(一塁にランナーがいる状況)。湯浅さんと丹原さんの演奏は、緩急自在で、印象的な短いフレーズを積み重ねて盛り上げて行くところなど、こちらも「生で演奏している」ことを忘れてしまう素晴らしいものでした。
さて、中盤以降は舞台は南洋(さて、ここはどこなのか?はっきり明言されませんが、ハワイあたりなんですかね、やはり。島っぽいし。踊りもフラダンスっぽいところもあるし)で、女性が露出多めの衣装で踊るショーが売りの呑み屋にしてもヒロインがやたら太ももを見せるのは、時代を考えるとかなり攻めているようにも思います。タイトルにある「火山」がいつ出て来るのかワクワクしてましたけれど、実は割と早い段階から画面には出てたのかも。引きで呑み屋の周り(島?の全景?)も映している部分、暗くてほとんど見えた気はしませんが、あそこで背景にあったんですよね、山が。ラストの地主との対決、意外と強い地主(素手)と比べ、店で暴れる酔っ払い(ナイフ持ってる)を素手でやっつけるような主人公が、武器(剣)を持っているにもかかわらず苦戦するところが面白かったですねー。あと、「俺が見ていないと心配」てな顔で主人公と一緒に行動する従兄弟がほとんど役に立っていない(特に終盤)ところもw火山の噴火シーンはまあ、あれはあれでクライマックスのアクションの彩りになったのではないでしょうか。
あとは、国立映画アーカイブあるある、なのでしょうか、「火山での決闘」で二つ隣の席の方が、冒頭から盛大に船を漕いでらして、上映前はあんなに楽しそうにお連れの方と話してたのになあ、人間って不思議、と思ったことでした。
次回の「サイレントシネマ・デイズ」では、もっと見られますように……!
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