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読んだはしからすぐ忘れるから!42冊目「クモの奇妙な世界」43冊目「ハダカデバネズミ」44冊目「怖い絵」45冊目「ひどい民話を語る会」

今年42冊目は「クモの奇妙な世界」。出版は家の光協会というのがちょっと最初は意外でしたが、よく考えたらJAグループなんですね。農業にまつわる生態系を支える生き物クモの本を出すのも不思議ではないわけです。クモというのは世界に119科4140属、4万8000種強もいる(種名が決まっている!)というのは本当に驚き。

最初の図説(クモのカラダの構成、造網性のクモの作る網の種類、系統図など)のイラストがわかりやすい。イラストなので苦手な人も大丈夫ではないか。クモの生態というのは本当に興味深くて、たとえばカバキコマチグモの「母親食(Matriphagy)」という習性とか、糸を使って空を飛ぶ「バルーンニング現象」(gossamerとか遊絲とか雪迎えとか国によって呼び方がある)とか。

昔遠藤周作の小説のドラマ化で、人間の体に卵を産みつけるクモの話があって、これが今でも印象に残っていてどちらかというと得意ではない方ですが、いやー、なかなか面白い生き物でありますね、クモって。

参考文献
「ハエトリグモハンドブック」須黒達巳(文一総合出版)
「クモハンドブック」馬場友希ほか(同上)
「日本のクモ」新海栄一(同上)
「世にも美しい瞳ハエトリグモ」同上(ナツメ社)
「ハエトリグモ」池田博明ほか(福音館書店)
「クモのはなし」(技報堂出版)
「フィールドの生物学 クモを利用する策士クモヒメバチ」高須賀圭三(東海大学出版部)
「日本産クモ類」小野展嗣(同上)
「クモの生物学」宮下直(同上)
「クモの巣と網の不思議」池田博明ほか(文葉社)
「写真日本クモ類大図鑑」千国安之助(保育社)
「交尾行動の新しい理解」粕谷英一ほか(海游舎)
「狩蜂生態図鑑」田仲義弘(全国農村教育協会)
「毒グモ騒動の真実」清水裕行(同上)
「蜘蛛」斎藤慎一郎(法政大学出版局)
「環境アセスメントと昆虫」石谷正宇(北隆館)
「一寸の虫にも十分の毒」川合述史(講談社)
「クモの網」新海明ほか(LIXIL出版)

ひどい名前、キョーレツな姿、女王君臨の階級社会。動物園で人気急上昇中の珍獣・ハダカデバネズミと、その動物で一旗あげようともくろんだ研究者たちの、「こんなくらしもあったのか」的ミラクルワールド。なぜ裸なの?女王は幸せ?ふとん係って何ですか?人気イラストレーター・べつやくれい氏のキュートなイラストも必見!


岩波科学ライブラリーからは「ハダカデバネズミ」を読みました。なんとも身も蓋もない(でもその佇まいをこれほど正確に表している名前もないと思われw)生物に魅せられた研究者たちの奮闘記。彼らの魅力は、その姿だけでなく、真社会性生物であるとう点ですよね。でもこの本を読むと、必ずしもその役割は永遠に固定、とうわけでもなく、下剋上もありうる、と!これはますます気になるではないですか!まずはナマで見なければ、と固く心の誓うのであります。今のところ一番行きやすいのは上野動物園ですかねえ。

ワタクシ、去年くらいからYouTubeの「山田五郎のオトナの教養講座」にはまっておりまして、その動画にもゲストとして出演されている中野京子さんの「怖い絵」を次に読了しました。

ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
ティントレット「受胎告知」
ムンク「思春期」
クノップフ「見捨てられた街」
ブロンツィーノ「愛の寓話」
ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
ルドン「キュクロプス」
ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
ホルバイン「ヘンリー八世像」
ベーコン「ベラスケス〈教皇インノケンティウス十世像〉による習作」
ホガース「グラハム家の子どもたち」
ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
グリューネルヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
ジョルジョーネ「老婆の肖像」
レービン「イワン雷帝とその息子」
コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
ジェリコー「メデュース号の筏」
ラ・トゥール「いかさま師」

どの作品も興味深いものでしたが、特にムンクやアルテミジア、レービン、ジェリコーの絵がとても好みでありました(ムンク以外はとてもリアルなタッチです)。

参考文献
「数奇な芸術家たち」ウィットコウアー(岩崎美術社)
「絵による服飾百科事典」キバロバー(同上)
「絵画の見かた」クラーク(白水社)
「ヴィーナスを開く」ディディ=ユベルマン(同上)
「ザ・ヌード」同上(美術出版社)
「イコノロジー研究」パノフスキー(同上)
「恐怖の博物誌」トゥアン(工作舎)
「イメージ・シンボル事典」ド・フリース(大修館書店)
「図説世界シンボル事典」ビーダーマン(八坂書房)
「老い」ボーヴォワール(人文書院)
「西洋美術解読事典」ホール(河出書房新社)
「絵の言葉」小松左京ほか(講談社)
「名画を見る眼」高階秀爾(岩波書店)
「美しきもの見し人は」堀田善衛(朝日新聞社)
「ブリューゲル全作品」森洋子(中央公論社)
「死都ブリュージュ」ローデンバック
「マリー・アントワネット」ツヴァイク

最後は「ひどい民話を語る会」。

「囲炉裏端にはコンプライアンスもポリティカル・コレクトネスもないんです。そして――。ひどい民話が誕生するんです」京極夏彦(「はじめに」より)

「桃太郎」の冒頭でお爺さんは柴刈りに、お婆さんは洗濯に行く。その理由とは……?
メジャーな昔話の陰には数々の「ひどい民話」が埋もれている。
妖怪を愛好する面々が縦横無尽に語る、知られざる民話の世界。
全国各地から選りすぐりの民話を紹介する、伝説的トークイベント「ひどい民話を語る会」が、満を持して書籍化!
学問としても芸術としても敬遠され、表舞台からパージされてきた荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ。

柳田國男が提唱した伝説、昔話、世間話というカテゴリのうち、囲炉裡端で爺婆によって語られる世間話が、聞き手の要求(受け)によってツボを見つけどんどん盛られて「ひどい民話」になる。桃太郎、犬婿入、逆さ犬、雁取り爺などなど、ひどい民話はシモの話がほとんどで、スカトロ(か、エロ)系の話。また、身も蓋もないひどい話。いつもひどい目に遭う隣の爺婆。何とも面白くて、これは自分で掘り甲斐のあるジャンルだなあ。桃太郎なんか、婆さんが川で洗濯している理由などからきちんと描いて、鬼退治をしないまま終わるバージョンとか、紙芝居にしたいなあ。なかなか発表できそうもないけどなあ。

参考文献
「日本昔話集成」「日本昔話大成」(角川書店)
「日本昔話通観」(同朋社)
「柳田國男未採択昔話聚稿」(瑞木書房)
「浄法寺町昔話集」(荻野書房)
「奥備中の昔話」「南加賀の昔話」9飯豊山麓の昔話」(三弥井書店)
「アイヌ民譚集」(岩波書店)
「手っきり姉さま」「とんとひとつあったてんがな」「土佐の民話」「奈良の民話」「茨城の民話」(未来社)
「柴波郡昔話集」(三省堂)
「富士吉田の昔話・伝説・世間話」(富士吉田市)
「周防大島昔話集」(瀬戸内物産出版)
「聴耳草子」(三元社)
「青森県の昔話」(津軽書房)
「日本の伝説」松谷みよ子(講談社)
「現代民話考」同上(立風書房)
「昔話と文学」柳田國男(創元社)
「日本の民話」(ぎょうせい)
「大江のむかしばなし」(大江町教育委員会)
「利根昔話集」「下野昔話集」(岩崎美術社)
「奄美大島与論島の民俗語彙と昔話」(奄美社)
「信濃の昔話」(スタジオゆにーく)
「民話の手帖」(日本民話の会)
「新潟県伝説集成」(恒文社)

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