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目で見て口で言へ(映画篇)6本目「友だちのうちはどこ?」7本目「そして人生はつづく」8本目「オリーブの林をぬけて」

Amazonのプライムビデオでアッバス・キアロスタミのジグザグ道三部作「友だちのうちはどこ?」「そして人生はつづく」「オリーブの林をぬけて」を見ました。今だから告白しますが、ずっとこのイランの映画監督のことを「アッバス・キアロミスタ」だと思っていました。(スウェーデンの映画監督イングマル・ベルイマンのこともイングマル・ベイルマンだと思ってました。ああ情けない)

それはさておき、まずは「友だちのうちはどこ?」ですが、これは何というか、非常に見ていて辛くなる映画でした。大人と子供の意思の疎通がほとんど行われない(閉塞感)、というところが一番ですが、自分のせいで友だちが学校をやめさせられてしまうかも、という状況のなかで、自分の言うことをまったく聞いてくれず、頭ごなしに命令してくる(か、無視する)大人たち、暗くなってなかなか辿り着けない友だちの家ーーとワタクシにとってはホラーに近い味わいがありました。そしてあのストン、と断ち切るようなラスト(なんともあっさり開放的)!このラストの感じ(あまり説明しない)は、続く「そして人生はつづく」「オリーブの林をぬけて」にもちょっと形を変えて継承されているように思いました。

三部作のなかでは、次の「そして人生はつづく」が一番好きかもしれません。1990年のイランを襲った大地震の傷が生々しく残る(どころか地震直後で、被害の全体像もやっとわかり始めたばかり、ようやく復興の緒に着いたところ)なか、前作の主演の少年の安否を尋ねる「友だちのうちはどこ?」の監督(つまりキアロスタミ自身)と彼の息子のロードムービーという体裁です。キアロスタミ監督はこの三部作では職業俳優を使わないので、主人公はイランの公務員が演じています。こういうセミドキュメンタリーの外国映画を字幕で見るときに、ふと思うのは、「現地の人が映画を見て、登場人物の芝居に対してどう思うのだろう?」ということです。

そして三部作の最後、「オリーブの林をぬけて」は、前作の撮影現場を舞台にしたお話です。ということで前作でキアロスタミ監督を演じた「役者」が出てくる他に、その映画を撮っているキアロスタミ監督(役の人)が出て来ます。もうこの物語の何層にも重なるレイヤーにちょっとクラクラしました。ですが、一番興味深かったのは、助監督兼制作を担当している女性です。この三部作のなかで、女性としてはもっとも重要な役割を担っているのではないか(特に「友だちのうちはどこ?」では家族以外に女性が出てこないんですよね、これは途中で気づいたんですけど)と思います。

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