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わたしの視点:遊馬しいし(ペーパークラフト作家)

 遊馬しいし(あそま・しいし)さんは、2/14〆切のクラウドファンディングを実施中です。

 今回は寄稿ではなく、被服支廠キャンペーンメンバーの瀬戸麻由がインタビュー形式でお話を伺いました。被服支廠を知っている。興味はある。けれども今回のクラウドファンディングの背景などあまり知らない。そんな方に遊馬さんの声が届いたらなと思っています。


どうぞよろしくお願いします。さっそくですが、遊馬さんご自身のことも少し教えてください。もともと広島のご出身なのでしょうか。

 いえ、出身は山口県の下関市です。22年前に転勤で広島へ来ました。原爆ドームは知っていましたが、それ以外のところは広島に来て知ったように思います。子どもを通して平和学習でいろいろ見聞きして、その範囲で知っていきました。被服支廠については、名前は知っていましたが、2019年12月のニュースを聞いて初めて現地へ足を運びました。

そうなんですね。初めて現地に行って、どんなことを感じましたか。

 レンガの美しい居並びが印象的でした。綺麗だなと思ったんです。周りを歩いてめぐるうちに、負傷者が運び込まれて亡くなられたという話も思い出して、改めて畏敬の念を感じました。

 そしてこのレンガ倉庫の美しさをモデル化したいと思いました。形も独特なので、それも立体化したいなという気持ちがすぐ起こりました。ワクワク感というよりも、使命感的なものですね。とりあえず形を作ってみて、できたのがこのミニペーパークラフトです。

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 作ったものをなんらかの形で有効活用できないかなと、すでに活動している人たちにメールを送ってみました。そのうちに被服支廠に関する活動をしている団体が集まる連絡会に参加するようになりました。

そして、今回のクラウドファンディングをすることになったんですね。

 最初からクラウドファンディングをしようというイメージはなかったんです。ただ、自分の子どもも被服支廠のことを知らなかった。知らない人が広島市内であまりにも多い。会社の同僚などと話をしていても知らない人が多いし、知っていても「残して欲しくない」という話も。「残す・残さない」の議論もあるけど、まずはみなさんに被服支廠のことを知ってもらうのが先かなと。

 効率的な広報の仕方として、小学校・中学校・高校になんらかの形で知らせることができればと思いました。ガイドブックを作り始めていたら、「せっかくペーパークラフトを作ったんだから盛り込んだら」と言われて確かに!と思いまして。本当は生徒に一つずつが理想的ですが、それは難しそうだったので、せめてクラスに一つずつにすれば生徒さんがとりあえず目にしてくれるかなと考えました。そこから生徒さんが家に帰ってご両親にお話ししてくれるかなと。

 子どもたちに知ってもらいたいですし、保存や活用も子ども目線で考えて発信してもらえたら嬉しいです。子どもたちに知らせるだけではなくて、届けた先に子ども目線での発案が何かある、というところが今回の自分のゴールと考えています。

なるほど。モチベーションとしては、まずは「残したい」というよりも「知ってほしい」という気持ちが大きいんでしょうか。

 気持ちとすると、6割7割残してほしいと思っています。でも残して欲しくないという人の話も聞いたので…。でも、残るなら残してほしいです。これは現場に行って五感で感じて、初めて感じた気持ちでした。

 残してほしい理由は、「場の力」ですね。「行って初めて感じるものがある」から。4棟まるまる、手を入れずに、現存のままで残るのが一番人に伝わる形かなと思っています。それが難しくても、仮に4棟残ったとして、少なくとも1棟はほぼ手を入れずに残してほしいという想いがあります。

被服支廠以外にも原爆ドームやレストハウスなど様々なペーパークラフトを作ってらっしゃいますよね。そもそも、ペーパークラフトでいろんな建物をつくるきっかけは何だったんでしょう。

 もともとはペーパークラフトの創作と平和活動とは切り離していました。ペーパークラフトで最初に作ったのはウルトラマンシリーズです。そこからペーパークラフトを本格的にやっていこうと思った時に、広島の観光支援をしたいなと思ったんです。宮島や広島城、その中で原爆ドームも作ったし、「この世界の片隅に」のすずさんの家のモデルも監督の監修を受けて作成しました。そしてすずさんの映画にも出てきたレストハウスも…そんな流れで自然に広がっていきました。

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 「この世界の片隅に」の発信にはとても感化されました。厳しい時代にあって、すずさんの日常をコミカルに描いている。それと原爆が落ちた後のギャップに惹かれます。加えて、実は私の父親が呉で大和の整備に関わっていたんです。だから呉の登場する映画には惹かれますね。

今回クラウドファンディングに挑戦してみて感じていることはありますか。

 初めてのクラウドファンディングだったので、あとから思えばやり方の失敗もあったかな、例えば価格設定などもう少し練ったほうがよかったかな、などの反省もあります。けれど、100人を超える支援が集まって、正直びっくりもしています。こんなに支援者がいてくれているんだと。金額はまだ足りてないけれど、嬉しいです。
 とはいえ目標達成するための最低の金額はやっぱり必要で…。今回はAll-in形式。どんな形であれ、プロジェクトは実行します。いただいた支援金をできる限り有効に使いたいと思います。

ありがとうございました!

(インタビュー終了)

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 隔週で行っている連絡会(被服支廠に関する活動を行っている団体や個人の情報交換の場)で、悩みながらもクラウドファンディングの準備・告知を進める遊馬さんの活動を個人的にも応援しておりました。

 「被服支廠を保存しよう」にせよ「こんな風に活用しよう」にせよ、大きな決断をみんなでする前には、一人一人に知ってもらうというとっても地道な広がりが大切なんだと思います。

 今回のクラウドファンディングでは、広島市内の全小中学校のクラスに一冊ずつ配布という、地道ながらもなかなか大規模な「広がり」が目標になっています。ご興味のある方は、ぜひファンディングサイトをチェックしてみてください。


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