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野生の証明

いまから50年前証明シリーズが流行した。流行した中でもとりわけ人気が高かったのが人間の証明という映画だった。主演はいまはなき松田優作。刑事としてのかっこよさと人間の深層にせまるストーリーが視聴者の記憶に残った。人がああいうことをしてしまうのかという結末だった。

昨日GYAOで無料視聴した映画がある。野生の証明という映画で高倉健さん主演。彼を引き立てる豪華な役者が共演している。そのなかに魅力的な女性として印象に残った中野良子さんもいる。さて映画の題名はどこからきたのか。人がもっている野生とは。なにを問いかけたのか。それは役者たちのところどころのセリフに隠れている。

中盤に味沢(高倉健)が越智(中野良子・二役)に告白する。守りたいものがあったんだ、と。終盤になり敵役にはまり役の皆川(松方弘樹)がいう。あいつはやさしさが捨てきれなかったんだ、と。そのあとの皆川の形相は役者としてすばらしい。さらにセリフをさがしてみるとあの刑事役の北野(夏八木勲)が言ったセリフにたどりつく。あの男がすることをよく見るんだ。これが野生の証明なのか。

1978年日本国家に背くものを撃滅するために特殊工作隊がつくられた。エリートの中でも特に目をかけられた隊員が味沢だった。人間に備わった野生とはなにか。その残虐さをおもいとどませるのに必要なのは何か。

中野良子さんが味沢の後ろから味沢に抱き着くとき。あなたと生きていきたいといったセリフにもそのようなものがある。あのセリフはほんとうに女性が男性を頼りにしているときに出たことばであろう。中野さんは高倉健さんのことが好きだったのではなかろうか。それから薬師丸ひろ子さんのような少女になること。慕われることと愛されること。それらを失ったときどこまで人間は野生になりえるか。そう描いたのであろう。

50年経過した今日において人間の持つ野生は少しはよくなったのだろうか。