見出し画像

多重恋愛をどう捉えたらいいのか

半世紀以上前に愛知県豊田市の小学校に通っていた。そこではクラスがいくつかあり座る席が指定をされていた。授業によって先生が変わる。生徒は変わることがなく同じ位置に座っていた。どういうわけかわたしはある女の子のことが気になってしかたがなかった。どこかテレビに出てくる人形さんに似ていた。

年度が変わるとクラス編成がありしばらくの経つとその女の子のことは忘れてしまった。中学校と高等学校とそういった気になることを繰り返し大学までたどりついた。大学には女子学生が化粧をしてやってくる。するとほとんどの学生が人形のように見えた。なんというか小鳥が花にとまっているように見えることもあった。

あるオンラインイベントでポリマリーについて話をした。ポリマリーというのは交際相手を一人だけに限定しない恋愛関係のこと。多重恋愛ともいう。交際相手も全員そのことを認めている。写真は英紙エコノミストの記事から切り取って掲載したもの。さて質問はこの関係を理解し認めることができるかというもの。新しい愛情表現だという提言があった。まずポリマリーというのは一体何なのか。

通常はある人を好きになったのであればその感情を伝える。伝えた側がその意思に対して合意するか否定するか。付き合いたければそうするしそうでなければ断る。二人の異性から同じ時期に意思を表明されたときはどうするか。これまではどちらの好意が強いのか。そして自分にとってどちらを選ぶのがいいのか。そういった秤(はかり)にかける必要があった。

ところがこの関係はそういったものを前提としていない。恋愛関係にあるひとたちが認めるのであればどんなひとでもその関係の中に入ってくることができる。そういったオープンでおおらかな関係を表す。

ではこの関係を理解し認めることができるのか。わたしは理解はなんとかできる。ただ認めるとなるといくつかの課題があるのではないか。

人は複数のひとを同時に好意をもつことはある。順番もわからない。それはほんとうであろう。自分のまわりにどこかとてもあこがれる人が複数いる。それはまぎれもない事実として理解できる。いっしょに生活をしていくことも視野にはいる。それがプラスに働くであろうと理解できる。

たとえば写真のように3人で生活した場合をあげてみよう。3人とも働き年収が500万円くらいであった場合を想定してみる。すると3人であれば1500万円の収入になる。2人で1000万円よりひょっとしたらいい生活ができるかもしれない。ひとり500万円で生活するよりははるかによい。

ただこのような関係を理解し合法化をするのかとなると事情は少しばかり違ってくるのではないか。たとえば日本は少ないながらも配偶者は家にいながらにして経済的メリットを受けることができる。現行の制度を前提にすれば健康保険、税金、そして年金である。

会社で働いている場合人事に詳しいひとがいる。健康保険組合に加入しており職員の健康保険の負担を会社が支払っている。配偶者であることで家にいても健康保険の恩恵を受けられる。ところが配偶者が2人いると仮定した場合に保険組合にどういう説明をすればいいか。3人分の健康保険を会社が負担するのか。そういった疑問がわくであろう。

税制度ではどうだろうか。ひとりが働いていてもうひとりが家にいる。子育てをし家事もする。税制面で恩恵をうける。税制優遇措置として税金の控除が受けられる。配偶者控除というもの。また扶養控除というものがあり税制面で優遇される。その制度はポリマリーにどう適用されるのか。控除を2倍にできるのだろうか。

そして年金制度。配偶者は年金機構により65歳から年金が支払われる。ひとりが会社で働きもうひとりが生活を支えると両方年金がもらえる。ただし家にいる配偶者は額が少ない。こういった一般的な家族形態というものを前提にした制度といえる。ではポリマリーに対しても年金の負担をするのであろうか。年金受給資格というものを適用できるのか。そういった疑問が出てくる。

これは日本国内の話であってアメリカになると話は違ってくるのかもしれない。家族の年収が1500万円であってもそれほどよい暮らしができない場合もある。だれかが危険な仕事をして病気やけがをしてしまう。あるいは旅立たれてしまい未亡人になってしまったらどうするか。そのときに子供がいたらどうするか。そういったことも想定としてはあろう。

たがこの恋愛関係を社会福祉のコスト(健康保険、税金、年金)で割り切れるのか。

大学に通っていたころを思い出す。どうしても気になる素敵な女性が3人ほどいたこと。そしてその3人というのは話をしたり食事をしたりといったことをした。いっしょにいるだけでなにか幸せというかいい時間の過ごし方だった。ただしパートナーとしてずっといっしょに過ごすのかということは考えてもいなかった。

どうも好意の一形態を金銭という側面から議論をして何かしらの結論を出すというのは難しいのではないか。もうちょっと違う側面からスタートしたほうがいい。幸せになるではないかというのもちょっとおかしい。

はたして大学生の読者の皆さんはこの恋愛関係をどう捉えるでしょうか。