廣島農人ーPt.1.ウーベンアグリ

未来の種まき 廣島農人

 FM東広島「農業のカルチベート」という番組を始めた。行政書士でシェアハウスを管理されている中嶋 直哉氏、元プロ競輪選手で異業種から農業参入した(株)鈴光ファーム代表の鈴光 洋彦氏、(株)マスタード・シード22のパートナーであり、広告代理店経営者麻尾 康二氏、そして私、岸保 宏の4人を、廣島農人(ひろしまのうと)というグループで9月よりスタートしている。
 実質、今回より本格的に農業に関連する方をゲストに呼んで、お話をお聞かせいただく形で進めている。

新規就農、農業を始めよう

 今回は、ウーベンアグリ代表の塩谷壮二さんをお呼びした。塩谷さんは、前職で企業の農業責任者でトマト栽培農家をやっていた経験もあり、令和2年の3月より東広島市の八本松、寺家地区でミニトマト、白ネギ栽培農家を始めた。
 新規就農?ラジオの中で新規就農って何ですか?って、パーソナリティーがお聞きになられましたが、農業になじみのない方は??なのかもしれませんね。新規就農者という言葉は、「新規自営農業就農者」「新規雇用就農者」「新規参入者」の3者をまとめて指します。家族経営体の世帯員で、新規自営農業就農者とは、他の仕事から自営農業への従事が主になった者。新規雇用就農者とは、法人等に雇用されることにより、農業に従事することとなった者。新規参入者とは、土地や資金を独自に調達し(相続・贈与等で親の農地を譲り受けた場合を除く)、新たに農業経営を開始した経営の責任者及び共同経営者、という定義になります。家族経営の継承や雇用就農ではなく“独立就農”としての新規就農で、塩谷さんの場合は、新規参入者として、新規就農ですね。

農地の確保はどうする?

 塩谷さんは、東広島市の出身ではなく他地域からの移住者である。移住と言っても、長い間、東広島市八本松に在住し、地域に溶け込んだ人間でも農地の確保は大変だったようだ。塩谷さんが農地を持っているわけではなく、農地を借りるという形で農業を始めることになる。新規就農で独立となると、ほとんどが農地は借りることことになるのではないか。農業を始めたいということになれば、農業大学校で学ぶとか農業法人で働きながらK実務を学ぶとか、あるだろうが、塩谷さんは技能・技術というところは経験済であったので、その点はクリアーされていた。それでも、農地の確保は困難を極め、2年かかった模様だ。通常は市町村の農業委員会などに農地の相談などしたり、JAに相談したりする。最初は、老朽化したハウスを活用してくれないかという相談が塩谷さんにあったようである。そこから2年もかかるのだから、信頼を築くことの難しさを感じる。塩谷さんはJAにも相談したそうだが、自分の人脈の中で地域の取りまとめをしているような方を介して、農地のあっせんに動いたが、それでものらりくらり、進んでは戻るの連続だったようだ。なかなか貸してくれない。要は事業ベースに乗せるだけ農地の確保をしないと、独立がままならないわけだ。離農者の多く、新規就農者も約35%が離農するなど、うまくいっていないのも現実だ。このコラムも紹介しておくことにしよう。【新規就農者の35%が離農する現実──未来の農業の担い手を定着させる方法とは(https://smartagri-jp.com/farmer/470)】  

始めるための資金調達

 天候に左右がされにくい施設栽培をするためには、多額の資金を要する。農業を事業にしていくことを考えると、事業戦略も必要になる。前職で事業計画などの策定した経験もあるにせよ、資金調達には苦労したようだ。青年等就農資金を活用して、資金調達が結果的には出来た。青年等就農資金を説明すると、日本政策金融公庫が新規就農者のために行っている融資を『青年等就農資金』のことを指す。
   この融資には主に以下3つの目的があります。

・新規就農者への初期投資
・農業経営が軌道に乗るまで(5年間)の費用を支援し、新規就農者が農業に定着でき   るよう促す
・せっかく経験を重ねた新規就農者が資金不足で離農せざるを得なくなる事態を防ぐ

  新規就農者を増やして定着してもらう意図があるため、青年等就農資金は無利子となっている。融資の限度額は3,700万円で、12年間にわたって返済しますが、最大5年間の据置期間が設けられている。3,700万円あれば土地を取得できますし、設備投資も行えます。
 
 という資金であるが、3,700万円が上限と言っているが、なかなか貸してはくれない。JAや国・県・市まで巻き込み、広島県の新規就農者では最高額の融資を得た。制度と実際は乖離しているようだ。それだけ新規就農の事業継続が厳しいということだろう。

新規就農の必須条件

  塩谷さんは、新規就農をするにあたって、認定農業者を必ず認定を受けること。そして、雇用を考えるならば、その生活資金を加味した資金調達を考える。この2点を強調された。前者の認定農業者を説明すると、以下の通りである。認定農業者制度は、農業者が農業経営基盤強化促進基本構想に示された農業経営の目標に向けて、自らの創意工夫に基づき、経営の改善を進めようとする計画を市町村等(複数市町村で農業を営む農業者が経営改善計画の認定を申請する場合は、営農区域に応じて都道府県又は国が認定)が認定し、これらの認定を受けた農業者に対して重点的に支援措置を講じようとするものである。認定農業者になると、融資や補助金や税制など優遇措置が得られる。
 つまり、融資の枠が広がる、補助金が多くなるなど、認定農業者にはメリットがある。この認定農業者を取得してから、それをベースに今後に話をしていくことが必須であると、塩谷さんは言う。ちなみに認定農御者の申請手続きも煩雑と言えば煩雑かもしれない。役所などに聞くと、書類を見てあきらめる人もいるそうだ。
 また、生活原資。生活費を十分な蓄えがあって、事業をスタートするかどうかは肝である。その生活原資も加味をしておかないと、作物がないとき(ちょうど休耕や実がなる成熟期など)にも、人件費など経費が掛かり続けることは考慮に入れるべきである。

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