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朱鎔基 企業改革における国有資産流出を防止せよ 1994年11月6日

朱鎔基 企業改革中要防止國有資產流失(1994年11月6日)載《朱鎔基講話錄 第二卷》人民出版社2011年,pp.56-61  1994年11月4日から6日北京で行われた全國國有資産管理暨全國清產核資工作會議での講話の一部分。微妙で重要な問題。企業改革に伴う国有資産流出問題を論じている。最後の部分では国有資産管理局の在り方について述べている(なお写真は1週間後、1994年11月14日上海市主催の会議に出席した朱鎔基。同前書p.63より転載)。

p.56  党中央、国務院は国有資産管理をとても重視している。江沢民同志は何度も指摘している。我々は歴史に責任がある。国有資産を流失させることはできない、流失させて歴史に説明できるだろうか(不好向歷史交代)。私は今回の会議のまとめを拝見したが、皆さんは国有資産管理工作中の問題に対して、多くのとても良い意見を提起されている。
 国有資産管理工作を強化することは、全企業改革の中で重要な内容の一項目であり、同時に現代企業制度が成功するかどうかを保証するものである。これはまず我々は社会主義市場経済を行っているからである。社会主義市場経済とは何か?私の理解は、そのすべての活動(動作)は市場経済の規律に従って、国際慣例により進行するものだが、しかし必ず社会主義的公有制を主体とするものでなければならない。私有制を基礎とする市場経済もまたおそらく効率がとても高いが、社会の公平は実現できない。それゆえ我々は国有資産を維持保護しなければならず、国民経済中の公有制経済の主体地位を保持しなければならない。さらに一条(の条件は 訳者挿入)公有制を主体とするのでなければ、労働に応じた分配もない。公有制の主体は国有企業である、もしすべての国有企業さえ管理されておらず(如果連國有企業都管不住)、国有資産を流出させたのであれば、それは私有化されたのであり、もはや社会主義ではない(就談不上社會主義了)。現在、国有資産は我々全国人民の共同財産、国家の命(命根子)、社会主義の根本を担保するもの(根本保證)だといえる。国有資産がなければ、社会主義もない、それゆえに我々が国有資産管理工作を担う事は、光栄ある歴史責任を引き受けたということでなければならない。
p.57  我々は全国人民の共同財産を保護している。我々は国家の命を維持保護している。我々は社会主義の基礎を保護しているのである。
 今まさに開かれ終わったところの全国建立現代企業制度試点工作会議では、企業改革が現在から来年にかけての経済体制改革の重点であることを再度明確にした。今年の上半期主として税財政、金融などのマクロ改革が進み、(その)改革の成功は、企業改革のために良好な基礎を打ち固めた。今後、改革工作の重点は企業改革に向かわざるを得ない。企業改革がもし不成功で、国有企業経営メカニズムがなお転変しなければ、マクロ改革もまた十分成功できない。それらは相互依存的なのだ。全企業改革試点において、国有資産管理部門は積極的に参加すべきであり、それが企業改革の成功を保証する。以下、私は二つの問題について話すことにする。

     一 国有資産管理工作が現代企業改革の試点のなかで、起こすべき主要作
   用はまさに国有資産流出防止である

 我々が試点に参加する主要任務は、国有資産流出の止めること(制止)にある。全員がこの一条を明確にすべきである。国有資産管理局は私に一つの材料を提供したが、(その報告書)は現在国有資産流出には様々な方式があり、大変深刻(非常嚴重)だとしている。去年、国有資産管理局は初めて調査を組織し、24の省区の5800単位を調査した。国有資産360億元が流出していた。10の直轄市と計画単列市(行政では省に隷属するが経済管理の権限は省級である市 訳注)の280単位を調査したところ、国有資産の流出は85億元であった。ひとをおどろかす数字である。国有資産流出の方法は7種類ある。
 第一は、中外合資で建設された企業そして株式制改組のなかで、国有資産を評価しないか意図的に低く評価すること。これは最も重大(厳重)であり、またもっともあってはならないことである。合資経営を行い、そして株式制を行うにあたり、国有資産を意図的に低く評価したり、あまりに無知であるでため、あるいは極端に無責任であるため、国有資産をただで上げてしまうものである(拱手送人)。もっとも典型的なのは湘潭精細化工公司とシンガポール企業との共同経営である。まず。外国側の合資の株式(その裏付けは 訳者補語)はボロボロの中古設備である。株の評価はとても高い。ソフト技術はすべて西欧国家のいくつかの処方のコピーであるが、まったく試験を経ていない。この株の評価はとても高い、結果は生産に入ってから、合格製品がでない。その後、中国側は
p.58  土地や工場をとても低い評価で株にするが、これは半分売って半分上げる(半賣半送)と呼ばれている。最後に経営の過程で、外国(資本)側が外国で売る値段はとても低い、国内市場価格に比べ低いのである。外商の普通のやり方は輸入の材料価格がとても高いというもの、香港で精算の時もインチキが行われる、輸出価格はとても安く、中間の暴利は彼(外商)のもの。この種の合資企業は結局どのような意味があるのか?根本において我々の対外開放政策の本意とは符合しない。笑えるのは最後に中国側が退出すると、全工場はシンガポールの商人に与えられ、彼の工場になってしまったことだ。その事情は理解しがたいものだ(莫名其妙)。これは自分のもうけのために国や人民を裏切ること(賣國求榮)ではないのか。国有資産を売り払ってしまう、タダであるいは安い価格で売る、これは最大の一つの問題である。
    第二は、株式制企業が国家株に対して配当を払わない(不分紅),株を配らない(不配股),すべて労働者に分けてしまうというもの(都分給職工)。現在財産の分割が開始されている。国有資産の数量化は個人に分けること(分給個人)に代えられている。これはまさに私有化をすることではないか?
 第三は一部の地区では明確に所有権の名において、国有資産を無償あるいは低価で個人に売り与え,負債で持ち株させている(搞負債持股     対価なしに股、つまり株式を与えたという意味であろうか。)。
   第四は一部の企業は経済困難において、企業を改組解消(分解)し、”大船は浅瀬につかまるが小舟(舢板)は逃げる”、債務から逃げるもの。債務は幾つかの工場のためで老弱残兵が守っている。銀行が債務(返済 訳者挿入)を迫るがしかし、人の命を迫ることはできない。企業はカネを返さない。大量の職工が分かれて経営をする、債務がないので、カネを稼いだあと、ボーナスを大判振る舞いする。この種の状況はとてもありふれている。それゆえ私は話すのだが、債権債務関係は明確にするべきだ。国家というものは、どのような経済をするにせよ、企業が債務にきままに頼っていると、この国家は経済の効率をいうことはできない。私は思う、この債務を作るということは、過去は政企不分開(政治と企業が分離していないという)問題であり、多くは上級の滅茶苦茶な(瞎)指導(指揮)により企業が負債を背負うことだった。繰り返して言えば、企業の債務を圧縮するには、その歴史の経緯(歷史包袱 歴史の負担)を軽くすることである。もしこの企業がそこで良くなるなら、それは見る価値がある。問題は絶対そうならないことにある。この大量の債務を圧縮しても、さらに次の大量のものがあり、終わることがない。企業の経営メカニズムが転換しなければ、債務依存を改めなければ、歴史が証明するところでは絶対うまくゆかない。我々は企業の歴史経緯問題を未解決ではなく、その債務を一挙に償却してないのでもない。どんな方法を取るのか?破産という方法であり、永遠に取り払った。現在多くの地方で企業の債務は圧縮された、その結果、不足はますます多く、永遠に圧縮は終わらない。過去、国家による「撥改貸」により重点建設、基礎設施建設が行われ、償還能力は十分でなかった、特に中間また為替相場の変化、確かに償還しにくい債務があった。それゆえ我々は考慮する、償還できない企業に対しては「撥改貸」を国家投資の株式資本に代えて、利息の支払いも不要の国家投資とする。中央の指示により、国家計画委員会は積極的に方案を制定、組織して実施している。
p.59 第五、一部の企業事業単位の部分国有資産は帳簿に入っておらず、大量の簿外資産になっている。これはとても大きな問題である。とくにその海外(境外)投資情況は根本的に明らかではない。各部門、各地区でつまるところ海外でどれだけの企業(活動 訳者挿入)を行っているのか?あまりに多くが帳簿にはいっていない。なかには国務院の批准を受けることなく香港で、殻を買って上場(”買殼上市”),株をいじって(炒股票),延々と絶え間なく国内資金は国外に流れ続けている。私は国家国有資産管理局がこのことをよく管理することを希望する。国家国有資産管理局は党中央、国務院が国有資産を管理するうえでの耳と目を務めるべきである。国有資産流出を制止できないとしても、国有資産がどのような水路(渠道)を通って流出しているか,流出の多少、誰が流出させたかの状況報告をを適切なときに(及時)国務院にすべきであり、もって研究し政策を制定すべきである。皆さんが方法を考え、探索することが、国有資産の管理を始めることです。
 第六、まったくの民間企業(全民企業)が集団(集体)企業をするもの。国有資産を無償で切りとり、無償で占有する。国家所有制を集団所有制に変化させる(変成する)。集団(集体)の資産を個人の資産に変化させる(変成する)ことによって。分けてしまうことで(給分掉了)。
 第七、規則に拠らない所有権取引において、国有資産を安価で売ることで、(国有資産を 訳者挿入)流出させる。所有権取引が現れたあと、国務院は明確に法令により禁止した。しかし実際上は禁止できていない。なおその辺で行われている。規則によるものは、なお良いものだが、現在は規則によることなく、大量の国有資産が国有から私有に変化されている。もしこのようなことが繰り返される(折騰下去)なら、国家が亡くなるところまで続くことだろう(就把國家都折騰光了)。
 国有資産管理工作には、検査(清產核資)、資産評価、所有権登記、所有権を確定する(界定)その一連の仕事が含まれているが、どれも国有資産の流出防止のために役だっており、いずれもとても重要な仕事(工作)である。私は国有資産管理部門が、国有資産管理に十分な一組の基本的制度を建設することを、強く希望する。まずは情況を明確にすること、そうしてこそ政策をだすことができる。決して急いで政策を出す必要はない。急いでことをなす必要はない。国有資産管理部門が国有資産管理を上手く行えるのであれば、価値を保持増殖できるのなら、さらに経営参与を考えてはどうか。
p.60  国有資産管理局はどうすれば経営に参与できるだろうか。ただ一組の基礎的管理制度を建設することによってのみであり、それはいつも国有資産の変化情況の監視を続けるもので、経営管理がそこで流出状況について、随時、国務院に報告し、我々はもう一度、対策を研究する。
 国有資産流出は国有資産管理部門だけで解決できる問題ではない。しかし皆さんの責任はとても大きい。これは光栄ある歴史責任であり、負担せねばならないことである。皆さんは情況について明確に語ること、地道なやり方、系統的な報告、制度、組織機構、監督の方法が必要で、さらに着実な仕事、実際的調査が必要で、これらがあってこの仕事はうまく行うことができるし、さもなければうまく行えないものである。(以下略)

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