見出し画像

サブプライム恐慌(OTDモデルと) FDIC CFRWP No.2010-08 Aug.2010 要旨

Amiyatosh Purnanandam, Originate-to-Distribute Model and the Subprime Mortgage Crisis, FDIC CFRWP No.2010-08, Aug.2010 2022年10月9日閲覧 

要旨 貸付のオリジネーター(創造者 ここでは貸し手のこと)が様々な第三者に貸付を売っている貸付のOTD(originate-to-distribute)モデルは、サブプライム・モーゲージ恐慌が始まる前、モーゲージ貸付の人気のある方法だった。(しかし)われわれは、恐慌前の時期に、OTD市場に深く関わっていた銀行が、過度に貧しい質のモーゲージ(貸付)を生み出したことを示す。この結果は、観察可能な借り手の質、不動産の地理的位置、OTD銀行の資本コストの高低(の違い)によっては説明できない。われわれの証拠は、貸付銀行が、借り手の選別に資源を投入しなかったという見解をむしろ支持している。資本が制約されている銀行にとり、OTD貸付が貧弱な質のモーゲージ(をもたらす)効果はより強くなる。全体としてわれわれは、レバレッジをかけてリスクを取る行為に加えて、(借り手を)選別する誘因の欠如が、現在のサブプライム恐慌の要因になったことの証拠を提供するものである。

本文冒頭
 モーゲージ市場における近年の恐慌は、世界経済に巨大な衝撃を与えている。大衆向け報道が、多くの挿話や事例を提供する間にも、この恐慌の正確な原因と結果を理解しようと、大量の学問的研究が手早く進められている(see Greenlaw et.al; Brunnermeier, 2008)。われわれの研究は、貸付のOTD方式に銀行が参加したことの恐慌への影響を分析することで、この文献の列に加わるものである。
 銀行は、逆選択とモラルハザード(訳注 いずれも質の低い借り手が貸付に応募してくる問題を指している)の費用を最小化しようと、借り手を選別し監視することにおいて高い専門能力を、その中核機能の一部として発展させた。(しかし)市場の不完全性、規制の要因、あるいはほかの障害によりこの専門性を活かせないことはありうる。たとえば、規制上の資本要請と外部資本調達における障害とは、銀行が最良の水準で貸し付けることを阻止するかもしれない(Stein, 1998)。当然、金融革新がこれらの障害への市場の反応として生じる(Tufana, 2003; Allen and Gale, 1994)。貸付のオリジネーターが第三者の貸付を売る―貸付のOTDモデルは、これらの障害のいくつかへの解決策として登場した。このモデルは貸付を始める金融機関に、自余の経済とのより良いリスクシェアリング、規制資本の節約、より良い流動性リスク管理を達成することを、許すものである。
 OTDモデルのこれらのメリット(便益)はコストを伴う。(そのため)貸付の慣行がOTH(originate-to-hold)からOTDモデルにシフトするとともに、貸付をする銀行の選別と監視の誘因が妨げられ始める(Pennacchi, 1988; Gorton and Pennacchi, 1995; Petersen and Rajan, 2002; Parlour and Plantin, 2008)。われわれの分析の根底にあるのはOTDモデルのこのコストである。(中略)

本文結論部(5.討論と結論
 (以上)われわれは、貸付のOTDモデルが、近年の質の悪い貸付を生み出したことを論じた。サブプライム・モーゲージ恐慌の開始の前、OTD市場に銀行が参加している規模を用いて、われわれはOTD市場により高度に参加している銀行が、後年、より高いモーゲージ債務不履行率だったことを示した。これらの債務不履行は、モーゲージ市場の中断後、OTD市場に(貸付を)売却できないでいる銀行に集中している。われわれの証拠は、デフォルトリスクの究極的持ち手からの分離が生み出した、選別する誘因の欠如が、現在のモーゲージ恐慌を引きおこした原因の一つだとの人々の信念popular beliefを裏付けるものである。同様に重要であるのは、この誘因問題は、資本が十分でない銀行や、要求払い預金に少なく頼る銀行に、深刻severeだということである。大きな資本ベースと要求払い預金の高い比率とは、銀行にとり規律付けの道具として働くものだったのである。
 これらの発見は金融市場と銀行規制にとり重要な含意を含んでいる。それは、金融市場の規制と銀行部門の資本比率の決定に有用な情報を提供している。われわれの結論はまたモーゲージのデフォルトの可能性は、貸し手がどれだけ予測できるかに依存していることを含意している。このことはモーゲージ担保証券の価格付けモデルに取り重要な情報になりうる。


main page: https://note.mu/hiroshifukumitsu  マガジン数は20。「マガジン」に入り「もっと見る」をクリック。mail : fukumitu アットマークseijo.ac.jp