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須一瓜「會有一條叫新大的魚」『青年作家』 2018年第3期

須一瓜(シュウ・イーグア)は1960年代前半生まれの女性作家である。この小説は当初『青年作家』2018年第3期に発表された。『短編小説2018年中国年度短編小説』灕江出版社2019年154-183より。

 場面は高層マンションの1階に、住む二組の家族。一組は老夫婦。その息子が庭の水道栓を直していると、隣家の小さな女の子がやってくる。そばにあったはずの金魚はどこに行ったのか、と。実は昨夜、老母が転倒して、金魚鉢は割れて、中にいた金魚は死んでしまったのだった。息子が金魚は俺が食べたのさ、とからかうと、女の子は「私の魚を食べてしまった」と泣き出してしまう。
 息子は、老母が転倒してケガをしたので駆け付け、今日は休みをとったのだが、電気を点けろとか、口うるさいので老母は閉口している。息子は役所勤め。隣家は、小さな女の子に両親だが、お母さんは自動車事故で失明。お父さんは経営者だというそれぞれの家庭状況が語られる。
 で場面が変わって小さな女の子の家。お父さんが帰ってくる。で意外にもお父さんに区司法所から政治学習の呼び出しがあることがわかる。これは社区矯正という、犯罪を犯した人に社会教育をするシステムでの呼び出し。講義をうけたり、社会奉仕のような労働をしたり、といった内容のようだ。
 それで一体どんな罪を犯したのかと読み進むと、どうも女の子は、実の子ではなく、未成年の男女の子供。で、書類を偽造した(実際は買い取ったことは後でわかる)としてお父さんはけん責を受けたこと。またお母さんは産院の看護師のお母さんから頼まれてその子を引き取ったことが見えて来る。

 女の子を引き取ったのは善意として、法の建前とどう決着がつくのか。と言うのがこの話に見どころだろうか。背景には未成年者の出産や偽造した書類の売買があることが透けてみえる現代小説だ。その後、作家の須一瓜について以下の映像を見つけた。語り口が独特で、なかなかのキャラクター。聞いていて思わず引き込まれた。

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