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朱鎔基 質の管理と技術の監督について 1991/05/15

1991年5月15日 国家技術監督局が開催した第二次全国技術監督工作会議開幕時の講話。《朱鎔基講話實錄》人民出版社2011年, 第一卷pp.1~7(写真は1991年2月6日 上海の自動車工場見学に訪れた鄧小平を接遇する上海市長朱鎔基。この2ケ月後の4月に朱鎔基は国務院副総理に就任する。)

p.1 国家技術監督局が成立して3年、大量の仕事が行われ、多くの成果が得られました。私が国家経済委員会で仕事をしている間に、国家標準局、国家計量局、国家経済委員会質量局の仕事を主管したことがあります。この三つの単位はまさに現在の国家技術監督局の前身です。当時3年以内に1.2万の国家標準項目を制定せねばならないと提起したのですが、現在すでに1.7万項目近くが制定されています。当時、国際標準と国外の先進標準の適用の拡大(推廣)を提起したのですが、現在これもまた超過達成されています。製品の質の認証、生産許可証の処置(發放)、計量器具の検定、企業のクラスの計量、昇級などの仕事、はいずれも大きな成果を得ました。
 最近、国務院指導の同志は改めて仕事の分担を明確にしました。李鵬同志は私(訳注 1991年4月から1998年3月国務院副総理)に、国家技術監督局の仕事を含め、工交各部分担管理を補助させることにしました。いわゆる「補助分管(協助分管)」で、つまり総理を補助して仕事をすることです。それゆえ私はまずは工交各部門を一つずつ訪問し、意見を伺おうと思いました。昨日午後私は国家技術監督局に伺い、局の党組織の同志と話し合いましたことは、私にとり大きな助けとなりました。工交各部の部長と党組織同志に皆さんの支援と支持を得られれば幸いです。私は北京を離れて三年経ち、多くの情況が変わりました、慣れるまでの間、よく知る仕事でまず調査研究を進める必要があります。
 質の管理と技術の監督の仕事にについては、今、宋健同志の報告が全面的に詳しく述べたところです。私はいくつかの点を再度強調したいと思いますが、3つの話に概括できると思います。
p.2  第一の話は現在の製品の質の情況は十分高いと推論すべきでないということです。私は感じるのですが、この2年間の整理整頓により経済情勢はすでに好転しました。現在国民経済にはなお見過ごすことのできない問題があります。第一に生産の成長速度が比較早いなか、効率(効益)は低下。とくに全民所有制企業の効率が低下しています。第二に現在、物資の在庫は減少趨勢だが、製品の在庫は増加を続けています。第三に国営企業の損失が拡大を続けています。国営大中型企業を活性化すること、とくに国営大中型企業の効益を引き上げられるかは、現在の重要問題の一つです。それゆえ国務院が今年を「質、品種、効益の年」とすると提起したのは、大変正確でした。第一は質です。現在、全体の情況をみるに質は十分高いと推論はできず、一部の企業の問題はなお相当に深刻です。
 私は上海の情況を話しましょう。私は上海において、経済市委員会と市政府の同意を得て「質は上海の命(生命)だ」このようなスローガンを提起しました。このスローガンは大中型企業工場長会議で提起されたものです。当時記録した同志はこれを「質は製品の命だ」と改め、のちに又別の同志がこれを「質は企業の命だ」と改めました。どの同志も私のこの言葉をそのまま(原封不動)に話さなかったのです。彼らは考えました、もし「質は上海の命だ」なら、政治はどうか?後に、私は何度もこの問題を解釈したことがあります。私は言います、同志の皆さん、私は現在、経済工作の話しているのであり、政治工作について話しているのではありません。「政治工作はすべての経済工作の生命線である。」この言葉はいつも私の頭に刻まれ、忘れることはありません。現在私は経済の話しをしています。なぜ「質は上海の命だと提起せねばならないのか?質の問題は上海にとり、確かにすでに生死を分ける(生死攸關的)問題だからです。皆さんが知っているように、上海にはエネルギーがなく、原材料もなく、資源がありません。上海が必要とするエネルギー、原材料はすべて各地から長距離運ぶ必要があり、上海の労働力のコストもまた高い。このようにして生産された製品には競争力がない。もし我々の製品に高い質がなく、良い性能と多品種ということがなければ、そうであるなら瞬く間に駆逐されるでしょう。実際に上海の製品の国内市場の占有率は不断に下降している。同時に輸出製品がもし質が高くなければ、国際市場にはいれません。最近、私は西欧六ケ国を訪問し、一つは彼らの住宅建設に注目(注意)し、またもう一つは彼らの市場に注目しました。彼らの市場にある商品は確かに豊富です。我々の製品は同様に
p.3  とても豊富ですが、品種や質で彼らにかないません。彼らの市場に、中国の製品を探し出すことはとても困難です。イタリア生産の製品はとても多く、とくに消費品方面ですが、絹製品、服装、家具、皮革製品はほとんどすべてイタリア製で、西欧のとても大きな市場を占領しています。家電製品の大部分は日本が生産したものです。ドイツのような高度工業化国家でも、市場で売られている家電、カメラなどはまた、基本、日本で製造されたものです。それゆえ、製品の質が高くなければ国際市場には入れません。上海の経済効率、財政収入、長年続く地滑り状態(處於滑坡的状態)、このままやっていたのでは上海には未来がありません。それゆえ、私は先ほど既に述べたあのスローガンを提出します、みなさんに本当に一種の危機をもつように。私はこのスローガンは全国各省区市に適切だとも思いません、皆さんは自身の実際状況に基づいて自身のスローガンを提起できます。
 しかしこのスローガンを1988年に提起して、3年進めたわけですが、理想とは程遠いのです。二つのことを話しましょう。第一は去年(1990年)第四四半期に全国製品品質抜き取り調査を実施しましたが、上海の製品品質合格率は76%に過ぎず、全国平均より低かったのです。この調査結果は、私に警鐘を与えました。3年間製品の品質(問題)に取り組み3年「質は上海の命だ」と唱え、調査結果はなお全国平均を下回ったのです。我々はそれでも(この結果を)新聞紙上に発表することが必要で、かつ評論を発表することも必要だと決定したのです。(中略)第二は乗用車(轎車)「サンタナ」のことです。「サンタナ」の国産化は私が国家経済委員会にいた時に開始されたものです。(中略) 
p.4  「サンタナ」の国産化はまだ全部完成していません。ようやく60%にたっしたところ、なお40%は輸入が必要です。輸入の部品の品質はすべてが良いわけではありません。(しかし)輸入生産のものの不合格率に比べ上海生産のものの不合格率は少し高いのです。そのために「サンタナ」の生産は予定に比べ少なくなり、外国(外地)企業の上海での協業生産での部品の効率は高くなく、賠償を要するほどで、(そのため外国企業は)積極的でないのです。このほか客観的な問題として、サンタナの部品協業生産箇所が160余りもあって(多いため)質の管理保証がむつかしいことがあります。この二つの事例は、質の管理工作が大変大きく、ブランド品についても、なお決して楽観できないことを示しています。
    第二の話は、質の管理と技術の監督の仕事はとても重要だと言うことです。現在我々が実行しているのは、計画経済と市場調節を結合したもので、中国特色のある社会主義モデルです。しかし実際のところ、現在市場はまだまだ発達しておらず、本当に多くの製品は売り方市場です。(もちろん)現在一部の家電製品市場は一定の買い方市場を形成したところですが、大量の製品は需要に応じて生産されておらず、あるいは「皇帝の娘は嫁に行くか悩まない」「大根を早く抜きすぎて、泥を洗っていない」(状況です。)この種の病気はずっと存在していました。かようにして、消費者利益がしばしばとても良い保護は受けれず、完全に競争に任せることも、企業自身のメカニズムに依存して製品の質を引き上げることも、ともにとても容易ではない。このような状況の下では、(政府による)技術監督工作はとても重要で十分に必要です。私は1984年のことを覚えています。経済が過熱し、製品の品質がすごく下がり、ニセモノで質の悪い(假冒僞劣)商品が市場に溢れました。この状況は1985年までずっと続きました。当時国務院は一連の措置を取り、全国人大常任委員会では製品の質問題を集中して議論しました。1985年7月鄧小平同志は一つの重要な支持を行いました。「工業生産とくに輸出製品の生産において、
p.5    中心は質を高めることであり、質を第一位に置くことだ」。その年9月に開かれた党の全国代表会議で、彼は再び製品の質問題を強調しました。私はその年の第三四半期に、国家経済委員会が製品の品質下降情況を転換させるために一連の措置をとり、とくに国家監督抜き取り製品品質制度を初めて作ったことを覚えています。この制度は以来保持されて、効果を発揮しています。(中略)
p.7   第三の話はたとえ製品の質が上がる軌道に乗ったそのあとも、技術監督の仕事は依然重要だということです。西欧の先進国(発達国家)の製品の質は上がる軌道にあると言うべきでしょう。彼らには市場メカニズムがあり、製品の質が上がらなければ、企業にはたちまち破産の危険があります。しかしかれらの輸出が(仮に)我々のこちらの製品でということだと、これは前例によると不合格のものがあるだけでなく、不合格なものが相当に多いことになります。というのは彼らの製品は一つずつ検査はしないが、抜き取り検査をする。ですから技術監督工作は取り消すことはできないし、軽視もできず、永遠に堅持するしかないのです。(中略)

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