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朱鎔基 金融のマクロ調整を適切に行え 1993/01/16

1993年1月16日 北京で行われていた全国銀行分行行長、保険分公司総経理の会議の最終日に朱鎔基が行った講話の主要部分。搞好金融廣觀調控(1993年1月16日)載《朱鎔基講話實錄  第一卷》人民出版社2011年pp.265-268の全訳である。
 (写真は澤蔵司(たくぞうす)稲荷慈眼院入り口のレリーフ。1620年に傳通院別当澤蔵司稲荷慈眼院が起こされたとされている。左手がおそらく旧幸田露伴宅。近くには文人の家が多い。松尾芭蕉の俳句に「ひとしぐれ礫(こいし)や降って小石川」)。)

p.265 国民経済の運行中、金融は大変重要な調節手段であり、価格のてこ(杠桿)を別にすると、金融は影響が最も広範な調節手段である。それゆえ次のように言える。昨年の国民経済が得た成果は、金融工作者の努力と切り離せない。金融戦線の同志諸君は大きな貢献をした。当然、工作中にもいささかの教訓と問題があった。現在出現している問題につき、私は三点話したい。

   一 厳格に総量規制を進め、マクロ調整を厳しく進め経済過熱を防止せよ
 去年、国民経済が高速で発展する中あらわれた諸問題は今も進行中である。現れた問題の原因は、わが国社会主義市場経済体制がなお未形成であること(還沒有形成)にある。国民経済が古いメカニズムの下で高速で発展すれば、問題が生ずるのは避けがたい。これらの問題は、ただ改革の深化によってのみ、企業と金融機構が自ら約束したメカニズムを完成(完善)することによってのみ解決できる。市場メカニズムがまだ未形成の情況のもと、我々は総量規制を厳格に進めねばならない。同時に、資金投資に方向において、産業構造の調整の工夫して、とくに鉄道、港湾、民間航空、通信などインフラの建設とエネルギーさらに原材料工業の発展を支持しつつ、
p.266  全体としての 効果と利益(効益)を高め、通貨膨張を抑制せねばならない。
   去年、固定資産投資規模は前例のないものであったので、今後工作はさらに慎重である必要がある。今年の貸付規模は、厳格に統制し、かならず抑えねばならない。金融のマクロ調整を厳しく進めることは、すなわち、金融はマクロ調整の最後の関所である。ここで我々は工作に努力を始めたら、この関所を守らねばならない。事実がすでに証明しているように、総量規制は相当むずかしい、もしすぐ(不緊)始めなければ、総量は抑制しがたいだろう。
 まずは固定資産投資規模の抑制である。去年そしておととしと三角債を整理した。重点は固定資産投資プロジェクトの超過期限(拖欠)の整理(清理)である。銀行は大きな努力をしたし、この成績は十分肯定できる。現在から見ると、去年の固定資産プロジェクトは設定過剰で、地方自身が集める資金はしばしば「一人の娘にたくさんの嫁入り話(一女多嫁)」で計画は実現せず、最後は銀行貸し付けに頼らざるを得なかった。銀行貸し付けの規模には限りがあり、それほど多くは貸し付けられないとなると、また新たな三角債が生まれる可能性がある。これを我々は真剣に注意すべきである。
   そのほか流動資金の占用が行きすぎており、これがまた現在の貸付規模激増の一原因である。今年はともかく減産し在庫の売却を進めることだ。損失を増益に転換させ、挂賬(賒賬 支払いの延期)を許さない。どれが真実でないかを追求する必要はなく、効益の速度を議論することも不要。およそ売ることにつては、運輸できないものは生産できないし、資金を使わせることもできない。販売のため貸付を減らし技術改造開発のための貸付は増やすこと(壓貸挂鈎)を進めるのは、三角債を整理(清理)する良い方法だ。この方法の実行を継続すべきであり、そうすれば占用される資金を減らすことができ、資金回転を加速できる。

 二 金融改革を深化し、銀行リスク抑制(約束)メカニズムを建設せよ
 現在われわれの銀行は、一面で行政の圧力を受けている。もとの計画経済体制の慣性作用のもと、行政に服従せねばならず、あなたが貸せというからすぐに貸さねばならない。別の一面では、
p.267   銀行は貸せば貸すほど奨励金(獎金)がでる。事務棟もますます高くなる。私はこれを脅迫と自己意思とが結合したものとみた。すなわち銀行には、奨励メカニズムだけがあり、リスクを負担する抑制メカニズムがない。貸付プロジェクトが効果と利益を考えず(沒有效益)、貸付は回収できないとしても、銀行は責任がない、これは駄目だ。専業銀行は金融企業として、自主経営、自ら損益を負い(自負盈虧)、国家政策の統一指導の下、金融活動を進めるのでなければならない。命令されたから貸付けるというのはあってはならない(不能搞奉命貸款)、貸付は審査、評価を経ねばならない。政策性貸付を含め審査することが必要であり、リスクを国家に転嫁してはならない。今回の会議は、責任制問題を提起している。皆さんにはよく実践されて、銀行が受け入れるリスクの抑制メカニズムを一歩ずつ建設されたい。ここで投資体制改革問題に広げて議論する。私は感じるのだが現在の投資体制には大きな問題が存在しており、改革しないわけにはゆかない。多くの国家が市場経済を成熟させた経験を借りて、投資体制を改革し、真正の政策性銀行、独立した商業銀行を成立させ、銀行はリスク抑制メカニズムをもつものとせねばならず、自主経営、損益を自ら負う銀行とせねばならず、銀行を政府あるいは部門の出納会計にしてはならない。

 三 厳格に証券発行を統制し新たな金融機構を建設せよ
    国庫券は国家が財政収支をバランスさせるために発行する証券で、発行しないことは良くない。現在、企業債券の発行はかくも多く、問題葉少なくない。銀行貸し付けを通じ、さらに産業政策により、国家はマクロ経済の進行を調整でき、プロジェクトは順位付けられる(可以優選)。しかし企業債券は銀行の統制を受けず、あるものの利息は20%に達している。企業はどうして返済できるだろうか。実際上、最後のリスクは国家の上に転嫁されうる。このほか、債券の発行が多くなると、銀行の預金(存款)にも影響する。新たに成立した中国証券監督管理委員会は、株券と債券の発行を厳格に統制せねばならない。我々は公衆の利益を保護せねばならず、国際慣例に従い進めるべきで、ルールに従った(規範化)管理を実行せねばならない。まずは推進して、あとでルールを掛けるという主張は間違っており、企業を混乱させるもので駄目だ。我々の意見はまず立法であり、さらに一部で試して(在試點)経験を得てから再び推し進めるというものだ。我々は証券発行には慎重さが必要だと希望する、発行が大きくなりすぎる必要はない。現在国庫券の売却がうまくいってないが、主要な原因は国庫券の利率が企業債券やその他債券の利息に比べ高いことにある。特にある地方は盲目的に
p.268   内部職工株券を推し進め、高い利息で資金をあつめ、最後に株券を社会に推奨しているが、(これは)将来のリスクがとても高い。
    今一つの問題は新たな作られる金融機構にまた厳格な統制が必要だということである。最近、首都鋼鉄華夏銀行が批准成立したが、多くの国有大中型企業がつぎつぎに(紛紛)自身の金融権を与えよと要求している。私は外国の大企業集団が同様に銀行を保有していることを知っている。これはその企業集団総合経営の一種の業務である。もしそれをその企業集団の「銭袋」や「保険の引き出し」だとすると。いつでも「保険のひきだし」を開けて銭をとったとして、どうして公衆の利益を保護できるだろうか。現在我々の企業集団には銀行をする条件をまだもたない。ただ華夏銀行この一行があるだけである。先に(これを)試してみよう。また中央銀行の統一管理を受けさせてみよう。企業集団が財務会社を行ったり、部門、地方が信託投資会社を行うにはいずれについても厳格な条件を定める必要がある。かつ審査批准が必要で監督を強める必要がある。現在、金融、財政などのシステムが多数の投資会社、証券会社を運営している。(これに対して)如何に管理するかまた法律を造り調整すべきである(應該加快立法步伐)。私が以前話したように、銀行業と証券業の分離は堅持されるべきで、銀行が証券業務に従事することは禁止されるべきであり、銀行の貸付を用いて証券業務を経営することは厳しく禁止されるべきである。銀行が設立した証券会社は、必ず銀行と分離(脫鈎:車両と車両の連結を外すのが原義)され、組織、人事関係もまたすべて分離される。証券会社は預かっている、顧客の取引保証金を貸付に用いることはできない。行政機関が行っている信託会社、証券会社、不動産会社、証券会社と銀行の間の資金短期貸借(拆借)、信託投資会社の証券業務兼営、預金貸付利率と債券利率の協調など、これらは至急研究して管理方法を定め、法制を進め(納入法治的軌道)ねばならない。

#朱鎔基 #金融改革 #澤蔵司稲荷慈眼院

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