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朱鎔基 科技人材の培養を加速強化せよ2000年6月7日

2000年6月5日から9日、中国科学院第十次院士大会、中国工程院第五次院士大会が北京で開会された。これは朱鎔基同志が北京人民大会堂で両院院士に向けて行った形勢報告の一部である。朱鎔基講話実録第三巻2011年pp.509-512. 以下はその全訳である。(写真は2000年6月7日当日の朱鎔基の姿である。同上書p.511より転載)

p.509   新たな形勢の挑戦に適応するため、当面の重要問題は人材(人才)の培養である。人材がなければ、すべてはゼロに等しい。国有企業問題は、もとよりメカニズムが不健全であることや、制度が万全でない(不完勝)ことが関係しているが、とても大きな原因の一部は、企業指導者の無知にある。かれらは、経営(管理)とは何かを知らない。わたしは「管理科学は興国の道である」と話したことがある。そして一部の人達は企業管理制度というものが、すべて曖昧なのだ。現在科技人材の競争はとても激烈である。我々は科技と教育への投入を強化し、とくに人材培養方面の投入を強化したのであるが。しかし大きな問題がある。それは培養した人材の多くが出国していることである。ある統計によれば、マイクロソフトの職員(員工)の6割は極東(亞裔)であり、極東の職員の7割は中国出身で、大部分は北大、清華の卒業生である。またこうもいわれている、マイクロソフトの全技術職員のうち42%は中国人であり、我々がマイクロソフトの代わりに小学校から大学までタダで人材を培養したのに等しい。清華と北大の学生は出国して多くは戻ってこない、戻って来ても外国会社の中国代表の身分で戻ってくると言われている。これらと我々が知っている人々は、我々の情況をよく了解しており、彼らと交際するとき我々はしばしば悔しくなる、というのは彼らはもっとも優秀な人々であり、かつ彼らは中国をもっともよく理解しているからだ。現在ある外国の大会社が皆さんの秘書や助手の意思を探っていると聞いている、皆さんは用心しなくては。
p.510   しかし、だからといって我々は留学を奨励しないことはできない。問題の鍵は、我々は留学を奨励すると同時に、彼らを引き戻す適切な政策をもつことである。我々は去年からこの政策を研究しており、最近一つの文書を出し、一部は試行しているところである。文書の内容は二つの方面を包括している。一つ目の方面は銀行、証券、保険業と国有大中企業について、彼らが国外中国留学生が戻ることを引き寄せられるように、賃金や待遇を自ら決めて、国家が制限しないことを許したということである。その一つ目の根拠は留学生本人の学びが確かであること(真才實學)、二つ目の根拠は業界、単位の受け入れ能力である。いくら賃金を払うべきだということならそれを払うべきだと。このようにしなければ、人を引き戻すことはできない。とくに銀行、証券、保険などの部門では、業務人員が国際金融に熟練していなければ大損失である。この方面では国際的にトップの人材を大量に養成しなければ、国際社会で生き抜くことはできない。それゆえ、少し代価を支払い、出費して人材にお帰りいただく。国有企業も同じくである。この方面で我々は完全に自由化すべきである。二つ目の方面は科学研究と教育部門も同様に人材を吸引引き戻す必要がある。これもまた根拠は学びが確かであり、それの賃金はなにがし払うべきならそれを払うべきだということである。ただし科学教育部門は、「国家資金(皇糧)」を食べる事業単位である。進行について報告批准を求めて抑制する必要がある。国家のカネを報告批准を受けずに支出してはならず、一研究所所長あるいは一研究院院長が好き勝手に科学者の年棒を100万米ドルと決定する、これはだめでしょう、この100万米ドルはこの単位が自分で作り出したものではなく、国家財政の財布から出されるものであり、決められた報告批准に従う必要がある。当然、我々はその他の形式で待遇を引き上げることもできる、例えば企業が経営する人々に一定の株式を与えることができ、年俸制などを試行できるように。さらに我々はバランスにも注意する必要がある。すなわち、現在は新たに戻る留学生に比較的良い待遇を与えることができるが、だからといって先に帰国した留学生が早く帰国せずもっと遅く帰国すべきだったと感じさせることはできない。さらに彼らが国家に果たした貢献があれば、しかるべき待遇が与えられるべきである。
 去年12月にシンガポールを訪問したときに、リ・グアンヤオ(李光耀)は私に言ったー留学生を引き戻すのにそれほど沢山のお金が必要とはかぎらない、賃金は国内の2倍で十分だと。彼の
p.511   話には確かに道理がある。まず外国での仕事は、結局は国内とはちがい、各種各様の差別を受けるものだ。たとえあなたの地位がとても高くても、人々のあなたを見る目も同じとは限らない、誰が好んでそのような環境で仕事と生活をするだろうか。一般的に言えば、機会があれば、留学生はなお国内に戻り祖国に力を尽くすことを希望している。そして、国内外の生活水準は違うので、同様の生活に必要なお金も違うもの。たとえば全く同じ質の家が、深圳ではわずか100万元、香港地区では1000万元必要だと。さらに出国時間が少し長い留学生が、基本生活を保証できる状況にあっても重視するのは、ビジネスと戻ったという感覚だ。それゆえなお喜んで帰国するのです。それゆえ我々は国内の各種有利な条件で国外の人材を引き戻すことを考慮でき、また外国でのような高待遇を与えることが決まって必要ではない。
 それゆえ人材を安定させるには、私は根本的には賃金を引き上げるべきだと考える。現在の
p.512    賃金は大変低いものだが、皆さんの基本生活を保証するには問題がないもの。当然生活は確かにまだ富裕ではない。とくに国家公務員、知識分子、もし彼らに相応の待遇を与えなければ、外国人に比べかくも差が大きければ、中国人はほかの人々に比べ頭一つ小さいようであり、それはまたとても良いことだとはいえない。或る意味からすればこれは比較できないことだが、確実なことはまた賃金を引き上げるべきだということだ。


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