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管虎 斗牛 2009film

   管虎(1968-)監督による「斗牛」は2009年公開の中国映画。舞台は抗日戦争期の山東の沂蒙と呼ばれる山岳地帯の農村。日本軍の接近により、駐在していた八路軍が撤退することになり、八路軍は国際援助で受けたホルスタインの牛を村に託することになった。その世話をすることになったのが、主人公の牛二という貧しい男性。山奥に逃れていた彼が村に帰ってみると、村人が皆殺しに会っているのを見つけるところから、映画は始まる。そのあと、映画は村に残っていた4人ほどの日本兵、さらにほかの村から逃げてきた農民の大軍、これらと遭遇しながら、牛二が問題の牛とともに生き延びてゆく姿を描いている。
 大変不思議なのは、日本軍の残虐行為も描きながら、登場する日本兵や将校は、人間として悩みをもつ存在として描写されていることだ。村に残っていた日本兵が、どうも日本軍から遺棄された存在であることも示唆されている。
 制作余話を読むと、農村の現状は現代化されているため、何もない抗日戦争期の村の様子の再現が大変であったこと、牛という動物が相手の演技が大変であったことなどが書かれている。
 主演の黄渤(1974-)はこの映画の演技で台湾台北の金馬影展で主演男優賞を得ている。なお管虎監督は、もともとテレビ映画の制作で評価されており、この2009年には、まさに沂蒙を舞台にした抗日戦争を描いた連続テレビ劇「沂蒙」を発表している。おそらくだが、「斗牛」と「沂蒙」の二つは並行して制作されたのではないだろうか。


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