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高垣寅次郎「近代日本金融史」1955

 地方銀行協会の第四回銀行講座における1953年に行なわれた前後3回の講義記録に、その後の研究成果を加筆されたもの(写真は成城大学3号館1階のピロティ)。内容は江戸時代末から明治に入り日本銀行創立までの経緯の紹介である(とくに伊藤博文、大隈重信、松方正義などの言動・役割について書かれている部分が注目される(歴史家には周知のところだが、米国に赴いた伊藤博文の建議:1870年が、円を単位とする金本位制を採用するとした新貨条例:1870年、さらに国立銀行条例:1872年に結びついたこと。つまり米国での貨幣制度、銀行制度の議論が日本の貨幣制度、銀行制度の確立に影響を与えたことは注目される。大隈は外債募集によって不換紙幣償却を図る案を立てたが、これには批判が多かったこと。1881年の政変により、大隈が政権を追われたあと、中央銀行の設立を兼ねて建議していた松方が財政の枢機を握り、1882年日本銀行の設立:発券の集中、さらに1884年兌換銀行条例制定:名目の金本位制のまま、実質は銀本位制の確立、が実現したこと。このようにどのような議論を背景に日本の貨幣・銀行制度が形成されたかが詳述されており、日本経済史専攻の方には一読を勧めたい)。記述はいわゆる大隈文書や伝記類を駆使されてかなり緻密。本書は、講演記録というよりは研究論文集あるいは研究案内といった方がよいかもしれない。
 全国地方銀行協会から銀行叢書XXとして1955年に刊行。章立ては以下の5章仕立てである。本書はかなり前に入手したものだが、この紹介にあたり読み返した。
 第一章 明治維新前後の幣制
 第二章 貨幣制度の建設
 第三章 銀行制度の建設
 第四章 紙幣整理の促進
 第五章 日本銀行・兌換制度の確立
 高垣の研究は、本書末尾の文献案内から理解されるように、地道な資料探索がベースになっている。なお高垣寅次郎について私は10年ほど前にPDFを集めたことがある。それは以下であるが現在であればもう少し大きなリストを作成できるであろう。
    高垣寅次郎について 

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