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Antitrust by Fred McChesney from Econlib.com 反トラスト マクズネィ

By Fred McChesney, Antitrust
Cited from Econlib.com

(著者はNorth Western大学の法学教授)

 1890年より前は、反トラスト法は慣習法common law(の領域)だった。申し立てられた制限的交易契約(つまり価格固定協定)はしばしば(成文)法の適用範囲ではなく、しかし当事者にいかなる法律上の免罪符sanctionsを与えるものでもなかった。経済学者たちは、一般的には独占やその他の交易制限は悪badである。なぜならそれらは通常、産出を減らすので、生産者と消費者の全体的経済の厚生well-beingを減らすから、と信じている(独占を見よ)。実際、「交易の制限restraint of trade」という言葉は正確に経済学者が独占とカルテルをなぜ嫌うかを示していた。しかし法律自身は、独占を罰していなかった。1890年のシャーマン法は、カルテル化(交易を制限するすべての契約、連携combination、謀議conspiracy)と独占化(独占化を企てることを含む)とを非合法化することですべてを変化させた
    シャーマン法は、交易を制限する行為practicesあるいは独占化する行為のいずれをも定義していない。二番目の重要な反トラスト法であるクレイトン法は、1914年に可決されたが、より個別的specificだった。同法は、あるタイプの価格差別(異なる買い手に異なる価格を課すこと)、結び付けることtying(財Aを買いたい人に財Bを買わせること)、そして合併を、これらの行為が、実質的に競争を弱めるか、独占を作り出すか、の影響を持つ場合について、非合法化した。また、非公開の反トラスト訴訟、損失の3倍化を認め(訳者 制裁金の上限の意味だろうか)、労働組織を反トラスト法から除外した。
 経済学者たちは、反トラスト法のためにロビー活動をしなかったし、支持もしなかった。これらの法律の採択は、一般的にはIda Tarbellのようなポピュリストのmuckrakers(マックレーカー 醜聞を暴露して社会改革を進めようとした人々のこと)の影響として描かれた。(Tarbelは)しばしばcorporate giants(the trusts)の登場を、生産を減少させて価格を引き上げ顧客を搾取する推定される能力として批判した。ほとんどの経済学者がこの法律に無関心だったのは、推定される反競争的行為が達成する高い価格は、より大きな運営上の効率と安いコストとによる価格削減効果に圧倒されるという信念からだった。興味深いことにTarbell自身が、トラスト取締り派trustbustersのTeddy Rooseveltと同じく、トラストはより効率的な生産者かもしれないと譲歩している。
 最近、経済学者たちは反トラスト法が必要とされていたかどうかについて「経験的証拠」(実世界で何が起こっていたか)に注目した。世紀の変わり目(19世紀から20世紀への)にカルテルと独占が気ままにふるまっていたrampantという見解は、いまでは多くの経済学者にとって不正確だと思われている。Thomas DiLorenzo(1985)は、トラストは、シャーマン法が指図しようと考えていたこととは逆に、実際に国全体の生産を数倍速く拡大していたことを示した。同様にトラストの価格は、国全体の全企業のそれより早く下落していた。言葉を代えれば、トラストは、経済理論が独占やカルテルは独占利潤を刈り取らねばならないと言っているのとは真逆のことをしていた。
(中略)
 ほとんどの反トラストの実務家は、かつて水平的合併(すなわちある会社の他の会社の取得。供給者あるいは消費者のいずれか)は競争を減らすと信じていた。今日、ほとんどの反トラストの専門家は水平的統合は、通常は反競争的でないと信じている。
(中略)
 おそらく経済学者たちの理解におけるもっとも重要な変化は、合併の分野で起きた。とくにJoe BainとGeorge Stiglerの1950年代の仕事によって、経済学者(そして裁判所)は、市場における競争の不足を産業における上位4企業の集中割合(産業における4企業の販売額の割合)から導くようになった。しかしYale BrozenやHarold Demesetzといった経済学者たちのその後の仕事は、集中と利潤の相関は一時的であること、あるいは反競争的行為よりも優れた効率に依存していることを示している。彼らの仕事にOliver Willamsonのものが続いた。(Willamsonは)合併が独占力の増加をもたらすとしても、費用の削減は小さいにせよ、より効率的となることを示した。この新たな発見と新たな思考の結果、経済学者たちと判事たちは、もはや集中がすぐに独占を導くとは仮定しなくなった。公開されている司法省とFTCの合併ガイドライン(1980年代に公開され様々に改定をうけたもの)は、集中を政府のchallengeを招く要因として強調しなくなった。
(以下略)


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