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造船技師時代の目標

造船技師として25年以上仕事に携わった。設計が仕事であると基本はデスクワークになる。ただ例外もある。現場へ出るとき、試験の立ち会い、アフターサービスでの訪船など。もっと稀な例外が保証技師乗船である。顧客との契約によるが船が完工して引き渡され処女航海に向かう際造船所代表として同乗しアフターサービスの窓口となる。(普通は造船所側から乗船はない。新設計や新システム採用の船であるケースが多い。)基本現場である工作部の船の担当者が乗船する。自分の所属する課は機装設計課で機関室(エンジンルーム、E/R)内の設計担当であった。機装設計課で設計者としてキャリアを積む中で中堅あたりになるとこの保証技師の仕事をする機会が訪れる。この保証技師の仕事を完遂すると機装設計課で一人前とみなされる、という慣し(?)があった。自分は下関の造船所から転勤で長崎に戻って2年か3年経ったときLPGC(液化プロパンガス運搬船)の保証技師として日本から中東を往復した経験をした。

続いて2回目の保証技師乗船は蒸気ボイラの新システム搭載したLNGC(液化天然ガス運搬船)を担当したのが50歳の頃。この時は長崎からオーストラリア東岸でLNGを積み韓国で揚げ荷した。

船に乗ることが本来の仕事ではなかったが仕事上乗船することもある。乗船することが避けられないこともある。そんな中で心密かに目標にしていたことが3つあった。

・パナマ運河を通過すること
・スエズ運河を通過すること
・赤道を通過すること

上記の3つを叶えられたらと長年希望していたがLNGC乗船の際にオーストラリアへ向かうことで3つ目の目標である赤道を通ることが出来た。ホイールハウス(W/H、またはブリッジ)で緯度と経度を表示するディスプレーを見ていて緯度を表す数値がプラスからマイナスへ、マイナスからプラスへ、変わるだけで外の景色は何の変化もなくドラスティックなものではないのだが何だかとても嬉しかった。残りの2つの運河通過はもはや機会が訪れることは難しいだろうが何かの機会があれば是非挑戦したい。客船?造船技師である。仕事ならともかくお金を払ってなら誰にでも出来る。何の魅力があるだろう。

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