通学沿線 気になるあの子


中学高校時代は徒歩通学だった。当時夜にヤングタウンというラジオ番組があり時々聞いていた。その番組の中のコーナーの一つに「通学沿線気になるあの子」というものがあった。内容は毎朝何時何分どこそこ駅発のどこそこ行きの電車の何両目に乗っているあの学校の制服を着た女子学生さんと連絡を取りたい付き合いたい、といったリスナーの要望に応え橋渡しをして番組中に電話で初対面どうしの2人の会話を聞くというものだった。投稿者の希望が上手くいく場合もありもちろん上手くいかない場合もある。男子学生が女子学生にだけでなく逆に女子学生が男子学生にという場合もあった。不思議とバス通学のケースはなかったと記憶している。電車通学に限られていたと思う。まして徒歩通学は蚊帳の外だった。この点は間違いない。バス通学が対象外だったのはバス故の定時運行の不確かさからなのかバスの車内の空間の狭さの問題なのかそれともその他の問題なのかよく分からない。

何にしても蚊帳の外に追いやられていた徒歩通学で中学高校6年間男子校通学(痛学?)していた自分はラジオの向こうから聞こえる電車通学の同じ世代のやりとりに何故かドキドキしながら聞いていた。今思えば番組のスタッフの人達も大変だったろう。要望のある朝の電車に乗り込み依頼者の確認を取ってその意中の相手とコンタクトを取る。夜の番組で電話中継をする。意が叶ったら相手の連絡先を聞いて依頼者に教える。結構手間のかかるコーナーだった気がする。

携帯電話、スマホが普及している今ならこの様な企画そのものが時代遅れとなるのだろうか。メールやラインでお互い連絡がつき人と人との新たな繋がりもインターネットを通じて橋渡しされる時代である。今となってはあのコーナーの番組作りのプロセスそのものが持って回った遠回りなものに見えるのかも知れない。思いが頭の中を巡ってから実行に移し目的を果たせたか否かの結果が出るまでの時間やプロセスの流れが昔と今では全く違うのが際立つ。あのコーナーで応募したかつてのリスナーが経験したであろうものからすれば現代はあまりにも印象がかけ離れていて実感がわかないのが本当のところだろうか。この手の出来事につきもののドキドキ感を持って何日も過ごす付録の様なひとときが端折られてそれが手っ取り早くて良いのか悪いのか。待つことのタメを知らずに言わば流れ作業の様な経験を積むと人はどうなっていくのだろうか。得体の知れない危惧を抱く自分はすでに時代に取り残された年寄りなのかも知れない。

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