見出し画像

長崎きまぐれ案内その19 - 黄砂

平成3年に学生を卒業し長崎に赴任した。社会人1年生の長崎での生活は結構大変だった。仕事で大変というのではない。(新しい環境で新社会人、初めての仕事は一言で言えば楽しかった。)大変というのは自然災害でだった。4月に新生活をスタートさせてすぐの5月に雲仙普賢岳で噴火による土石流が発生した。更に6月には火砕流が発生。このとき火砕流という言葉を初めて知った。その年長崎市内に一度だけ火山灰が降った。日本は概して偏西風が吹いている。長崎も例外ではない。長崎市から見て真東に位置する普賢岳から流れる火山灰は通常偏西風に流され東側、すなわち熊本側に降っていた。それが一度だけ東の風が吹いて長崎市内に降って来たのである。社会人になって初めて職場の先輩から譲り受けた中古車を所有していたがその日の朝フロントガラスが真っ白になっていたのを鮮明に覚えている。一瞬雪が降ったのかと思ったが冬ではない。火山灰であるとすぐ分かった。この火山灰、ミクロではとげとげの角がある粒らしくタオルなどで直接拭くとガラスが傷付くとのことだった。フロントガラスをまず水で丁寧に洗い、火山灰を下に落としてから拭く。これが正しい火山灰除去の対処法らしい。まぁそれでもこの火山灰の被害は長崎市内ではその1度で済んだ。
次に7月に台風19号が長崎を襲う。職場の同じ新人だった年下の女子社員は自宅の2階が全部吹っ飛び深刻な被災者となった。長崎市内もビニール製のブルーシートが屋根に掛けられ遠目にはなんだか(不謹慎な言い方だが)スペインかギリシャの欧州の街並みを連想させた。青い屋根が連なって見えたからである。

とんでもない災害地域に引っ越してきたもんだと思ったがこの社会人1年生の年は現地長崎の地元の人にとっても特別だったらしくその後はさほど大きな自然災害はなく比較的平穏な日々を送れた。

とはいっても火山灰の降灰の様な極まれであのとき一度切りの一時的な被害だ。これに対し例年またか!となる長崎特有の自然現象がある。黄砂である。

初めて長崎で黄砂を認めたとき春霞の様な印象だった。とにかく遠くが霞み見えない。見上げると視界が狭い。火山灰のときと同じく車のフロントガラスが今度はうっすら黄色く積もっていた。黄砂も偏西風の影響で中国大陸の大地の砂が風に吹かれ舞い上がって遙か東の日本にまでやってくる。かつては西から飛んで来る黄砂は春特有の現象だった。例えば春一番が吹くとき同時に黄砂もやってきた。これに対し秋の西風が強いときは夏に成長した草木が大地から砂を空中に飛ばすのを防ぎ黄砂の現象はあっても目立たない。しかし、今は中国の大地の砂漠化が進んだせいだからだろうか。秋の季節でも時々黄砂の現象が起きる。長崎で黄砂が顕著に見られる現象が起きるのは言わずもがなだが中国大陸から近いからだ。中国文化の影響が大きい長崎という土地は地理的にも中国の影響をここでも感じられる。

黄砂。はるか西からの便りを長崎は最初に受け取る。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?