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クマシ


 ガーナ第二の都市クマシに来た。家からトロトロ(粗末な乗用バンのバス)を乗り継いでおよそ6時間ほどで到着。とにかく遠いし狭い座席に何時間も閉じ込められるのは不快なのだが、もう慣れてしまったようだ。道中はほとんどが舗装された対面2車線で、中には非常に走りやすそうな区間もあれば、クレーターだらけの舗装もある。
 第三の都市タコラディ(家から1時間)と比べると数段活気があり、市域もずっと広いように見える。しかし、タコラディが放射状に整備されているのに対して、クマシはランドアバウトがあちこちにあり、全容が把握しずらい。日本で言うと大阪のようなイメージだ。
 クマシの特徴的な建物は2つある、1つは西アフリカ最大級の市場、ケジェティアマーケットだ。そしてもう1つはなんと宮殿だ。かつて、アシャンティ王国という国がクマシを中心に栄えており、そのアシャンティ王の王位が存続しており、王国の領域だった地域では今なお尊敬を集めている。

ケジェティアマーケット


マーケットの入り口


 とにかくデカい。3階層くらいの建物に所狭しと小さな個人商店が詰め込まれている。さらにそれらの個人商店以外にも歩きながら物を売る人や、空いてるスペースで勝手に店を開く人などもいて、ビジネスに対する熱意で溢れている。
 個人商店がいくつも並んでいてそれぞれ、布や靴、鞄といったファッションアイテム、PCやスマホとその関連商品を中心とする電化製品、洗剤や台所用品といった日用の品々といった、ガーナのマーケットで見られるものは全てこの建物で買うことができる。魚や肉といったスナックを除く食品類は売ってなかったかもしれない。途中で疲れてフードコートに座って、頭にクーラーボックスを乗せたおばさんからアイスクリームを買って休憩舌が、結局全部見る前に消耗しきって出てしまった。
 しかし圧倒的な売り場面積を誇っているが、私の愛するヨドバシカメラ梅田店に比べればそれほど商品のバリエーションがなさそうに見えたのだ。小さな個人商店の集合体であるが故の宿命であるのかもしれない。そして、タコラディで見るものはおおよそ全てこの建物の中で買えそうな気がしたが、逆にタコラディでお目にかかれないような希少なものもここでは見なかったのだ。ガーナでは、マイナーで特殊な需要に対応できるだけのマーケットが成熟していないのかもしれないと感じた。同時にそれは、特殊な需要自体がまだ少ないことを意味しているのかもしれない。
 そうは言っても、このマーケットの熱気がガーナのこれから成長していくであろう経済を象徴していると言っても、反論をはさむ人はそう居ないだろう。

分かる人にしかわからない例えだが、コミケほど人はいないが、ワンフェスくらいには人がいる。


パレスミュージアム


 もとはアシャンティ王の宮殿だった建物が現在は博物館として使われている。ちなみに現在の宮殿も同じ敷地の中にあるようだ。庭には巨大なインドゴムの木と孔雀!がオスもメスも歩き回っている。

博物館外観
孔雀!
現在の宮殿はこの向こうにあるらしい


 入場料は1人100セディとお高いが粘り強い交渉の末、二人分の料金で四人入れるようになった。現地語を地道に勉強したお陰だろう。
 アシャンティ王国は、17世紀後半からクマシを中心とした現在のガーナの中部で勃興してきた国だ。王位を象徴する黄金の床几は、日本でいう三種の神器のようなもので、現在の王室にも受け継がれている。
 アシャンティ王国は建国以来、周辺の国を戦争で次々に破り、それによって得た捕虜を奴隷としてエルミナを筆頭とするガーナ沿岸部のヨーロッパ人に売り渡すことで巨万の富を得た。

 19世紀になると、イギリスが他のヨーロッパ諸国のガーナへの影響を排しアシャンティ王国との交易を独占する。次第にアシャンティ王国とイギリスの関係は悪化し、イギリスが黄金の床几を譲り渡すように要求したことから戦争が勃発(黄金の床几戦争)。戦争以前からイギリスに囚われていた王に代わり、王母ヤァ・アサンテワアの指導のもとアシャンティ王国はイギリス軍と激しく戦うも敗れ、アシャンティ王国はイギリス領へと併合される。
 アシャンティ王室はイギリスへの併合後も領内への影響力を維持し、イギリスの支配も限定的なものであった。ガーナが他のアフリカ諸国よりも早期に独立を獲得できたことにも、アシャンティ王国の力がイギリスからの干渉の度合いを小さくしたという背景があった。

 さて、博物館内は、かつてアシャンティ王が実際に使用していたものを中心としてアシャンティ王国の歴史を学ぶことができる展示内容となっている。王の執務室や応接室を復元した部屋には、電話、天井設置型ファン、モノクロテレビ、冷蔵庫などいずれもアシャンティ王国に初めて持ち込まれたという年代物が、それらが使われていた当時そのままに置かれている。さらにイギリス王室から送られた玉座や歴代の王が使用していた品などアシャンティ王国の貴重な宝が展示されている。クマシに来た際には訪れるべき場所であることは間違いない。

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