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📕トーマス・マン「ブッデンブローク家の人々」を読み終えてとりあえずの雑感



⭐️一撃必殺のエピソード描写。トーマス・マン「ブッデンブローク家の人々」、読了しました。

トルストイの「戦争と平和」で、エピソード描写の何たるかを朧げながら掴み、「ブッデンブローク家の人々」でその描写の構造まで自分なりに理解することができました。

そして、そんな構造に関係なく、下巻の終盤、死を前にしたハンノ少年がピアノを演奏する描写(なんと、文庫本5ページに渡る!)はやばいね、、、痺れました。

ここまで積み上げてきた数々のエピソード(中には退屈なものもあったけれど)が最後のエピソードの破壊力を何倍にもしている。そんな感じ。

⭐️キャラを極限まで映させる小説構造〜トーニに始まり、トーニで終わる。

やはり、この物語の主人公はアントーニエだったのか、、そう思わずにはいられない。

上巻最初のページで登場したトーニはまだ8歳。そして、下巻最後のページに登場したトーニは50歳。この物語は、ブッデンブローク家という商家が四代にわたって、徐々に没落していく様を描いていると一般的には言われているけれども、そんな商家に生を受けたアントーニエの人生を描いた物語という側面もある。

これは個人的に思っただけなんだけれど、登場人物ひとりひとりの人物描写をきちんと書き分けた上で、周りのキャラ全てが、アントーニエという女性に輝きを与えているような気がしました。そして、さらに言えば、数々のエピソードも、アントーニエを軸にして計算して配列されているのではないか?とすら感じた。

いずれにしても、長い旅でしたが、終わりました。

なお、下巻を読み終えた直後に、上巻の書き出しを読むと、余韻が倍増します。お試しを。

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