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2006年黒部ルート見学(1)

 富山の黒部川にある黒部峡谷鉄道の終点の欅平の先にも、なにやら怪しげなルートがあるらしいということは、地図を見てなんとなくわかっていたが、ここは関係者しか入れないので、一般人は行くことのできない所だと長年思っていた。ところがネットで調べてみると、近年関西電力主催の「見学会」に参加すれば行くことができることがわかった。しかしながら応募者はかなり多く、結構な倍率らしいので、何度も申し込まないとダメかなと思いつつ申し込んだらあっさり当選。一人での参加申し込みなのがよかったのかもしれない。それ以上に普段からの行いがよかったのかもしれない。
 欅平駅での集合時刻が早いので前日の夜に出発し、米原から夜行急行「きたぐに」の寝台車に乗った。しっかりと寝るために、富山までの短い時間ではあるが思い切って寝台車としたのだが、これが失敗。結構列車が揺れたため、そして寝台車に乗ること自体が珍しいのでなかなか寝付けなかった。寝台車を使ったのに完全な寝不足状態。
 富山から富山地鉄にのりかえ、さらに宇奈月から黒部峡谷鉄道に乗る。黒部ルート見学者は指定の列車に乗車する。ここの車窓も絶景の連続なのだが、寝不足のために時々気を失う。もったいない。
 欅平駅の2階にある食堂が集合場所。ここからはヘルメット着用を義務付けられる。案内人に連れられて出発。

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 欅平駅はホーム1面のみ。そこで見学者用特別列車に乗る。といっても車両自体は普通の観光用トロッコ列車のもの。ただし、進行方向は宇奈月とは反対方向。いよいよ秘密トンネルに入るかと思うと気分が高まる。
 すぐにトンネルに入る。そして一旦止まって方向転換し、またすぐに停まる。線路はまだ続くが、この先は竪坑エレベーターとなっている。この施設は、この先の黒部川第三発電所の取水ダムである仙人谷ダム建設のために作られたのだが、列車ではダム建設場所まで登り切れないために、いったんエレベーターにのせて一気に高度を稼ぐ、というもの。参加者全員を載せて上昇するが、当然エレベーターお姉さんはいない。

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 エレベーターを降りたそこは、トロッコ列車の「欅平上部駅」。展望台があるので、そこから黒部川を眺める。一般の人たちが見ることのできない、欅平駅より200メートルほど高いところからの景色だ。ちょうどこのあたりを、仙人谷ダムを経て黒部ダムへ向かう、ベテラン登山者用ルート「水平歩道」が通っているとのこと。昔はこのルートを通ってみたいと思ったものだが、相当の上級者向けコースということで、写真を見るしかなかった。
 そして、いよいよ専用トロッコ列車に乗り込む。

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 小さなトロッコに乗り込み、出発。
 このトンネルは、昭和16年に黒部川第三発電所建設のために開通されたものだが、途中数々の大事故が発生。常識的には工事中止となるところを、逼迫する電力事情と当時の世界情勢がそれを許さなかったという代物。発破用ダイナマイトが自然発火したという現場は、今は導水管のために40度で収まっているとのことだが、空気は生暖かく、硫黄の匂いが充満している。トンネル側面には湯の花がこびりついている。この現場ではトロッコは徐行してドアを開いてそのを見せてくれる。ちなみに、トロッコの窓にはワイパーがついているが、ワイパーは窓の内側についている。ここらあたりになると窓に水滴がつき外が見えなくなるのを拭うためにある。もっとも水滴を拭って見えるものは、事故でなくなった作業員の亡霊かもしれない。吉村昭著「高熱隧道」を読むと、これが全然冗談でないくらい凄まじい現場であることがわかる。

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 高熱隧道を抜けると、そこは仙人谷ダムだった。一応ここも駅ということ。ここでトロッコ列車はしばらく小休止。
 ここは、欅平と黒部ダムを結ぶ「水平歩道・旧日電歩道」も通っている。というか、横切っている。ただし、歩くのがイヤになっちゃったからって、この列車に途中乗車することはできない。

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