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七宝山飯店(瀋陽)

すてきなホテルをご紹介
 昔は安くて小汚いホテルに泊まったのが自慢というか競争のような考え方があった。かつてイスタンブールでは1泊5ドルのところに泊まっていたが、毎晩ロビーで宴会してとても楽しかった。中国ではドミトリーといってベッドを借りる形式のところに泊まっていた。大部屋になると病室のような雰囲気。実際調子が悪くて寝込んでいる病人もいる。今までの経験では、安いところで1泊300円位のところもあった。韓国のソウルでは今でも1泊2000円位のところに泊まる。ただ最近は年なのか安かろう悪かろうというホテルに泊まる気力がわかなくて、中国の大連に行く時は日航ホテルに泊まっている。それでも1泊1万円くらい。今回は、そこまで高くなくて、かつそこにしかない素敵なホテルを紹介する。
 中国東北部遼寧省の都瀋陽、戦前は奉天という、満州事変のあったところ。観光名所もいろいろあるが、ここには日本の領事館がある。北朝鮮から逃げてきた脱北者の集団を、中国の公安が、本来立ち入ることができないはずの領事館の敷地内にまで追っかけてきて、捕まえているのを領事館員がただ傍観していて、それどころか落ちた帽子まで拾ってあげたという、外務省の評判を落とした事件で有名なところ。大連が日本企業の勢力範囲なのに対し、瀋陽は韓国企業の勢力範囲のよう。あと北朝鮮の諜報活動や非合法活動者など、スパイの巣窟らしい。脱北者には危険な街。
 そんな人たちだけでなく表の人たちの拠点となっているホテルがある。その名も七宝山飯店(中:チーパオシャン 朝:チルポサン)。北朝鮮政府関係が経営するホテルとのこと。街の中心部に近い。三ツ星で1泊5000円くらい。日本からも予約できる、というか、した。1階には北朝鮮のフラッグキャリアの高麗航空、エアコリョの支店がある。ただし営業しているのを見たことはない。同じフロアにはおみやげを売る売店がある。平壌焼酎や煙草を買った。結構いい値だった。レセプションは北朝鮮人が立っていて完璧な英語を話す。北朝鮮関係のバッジをしているからわかる。
 2,3階にはレストランが入っている。中に入るとチマチョゴリを着たきれいなお姉さん方がいる。たぶん北朝鮮人で中国語を話すが日本語は話せない。こういう北朝鮮系レストランではショータイムのようなものがあり、従業員がマイクを持って歌を歌ったりしてくれる。日本人が来る店だと日本語で歌ってくれることもある。その時いた団体のお客さんは中国人か韓国人かわからないが、うれしそうに従業員とデュエットしていた。子供に見せたくない風景は世界共通だ。私は言葉がほとんどできないので、ちょっかいを出すことは残念ながらしなかったが、鴨の焼き肉はおいしかった。キムチがあまり辛くないのは北朝鮮風とのこと。従業員は中国人と違って働き者で、常に私の背後に立ち、グラスのビールが少なくなるとすぐについでくれた。まるで監視されているようだ。
 他にも怪しげな北朝鮮系の会社のオフィスが入っているらしく、うかつにそのエリアにはいると消されたり拉致されるかもしれないが、たぶん大丈夫。
 客室はごく普通の部屋だが、テレビは朝鮮中央放送が見られるらしい。あの話し方が勇ましい名物アナウンサーのニュースもたっぷり見られる。ただし私の部屋は見られなかった。日本人に見せると都合の悪い番組、例えば横田めぐみさんの消息がわかってしまうようなものが放映されていたのかも。ちなみに部屋にあるテレビはサムスン製(だったかな?)。番組の節目に映る故金日成主席の大アップ画面の下に南の傀儡政権の犬どものロゴがあるのは、自称21世紀の強盛大国にしてはいただけない。

 いろいろ述べたが、ベッドが異様に硬かった以外は案外普通のホテルなので、安心して泊まりに行ってください。って、今はもうないらしい。

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