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ナスビじゃなくて干し柿

干し柿は、奥深い食べ物です。甘いだけではなくて、タネもあるし、グニョグニョしているし、ゼリーみたいではあるけど、そんな単純なものでもなくて、何だかいくつもの時間を食べてるような気になるじゃないですか!

そんなにたくさん干し柿を経験したわけではないし、自分で作っているわけでもないけど、好きなんです。年を取ってきて、だんだんと好きになってきました。

本当なら、ちゃんとしたお茶を淹れて、お皿にのっけて、しみじみ眺めて、あれこれ味わいながら、一緒にいる人と共感しながら食べられたらいいんだけど、口がいやしい私は、取り出したらすぐにムシャクシャ食べてしまう。下からかぶりついて、すこしずつ上へと噛み進み、全部を平らげる。味わうとか、味を話し合うとか、そういうのができていない。

干し柿はおしゃべりしながら食べる食べ物なのです。

それができていない人は、本来は食べてはいけない。干し柿道みたいなのを開発するというか、すでにそういう世界はあるんだと思うけれど、みんなその世界に入るのが難しいから、こそこそとご家庭で食べておられるのでしょう。

あの不思議な歯ごたえは、その道を究めようとする者にしか得られない奥深さがあるのでしょう。

以前、高校の恩師の先生んちにひとりで出かけて、何十年ぶりだったのですが、長野県におられるという弟さんから送られてきた干し柿を食べさせていただきました。あれは、本当においしかった。家にも持って帰らせてもらったのですが、家族にも分けないでひとりで食べてしまった。

どうやら、私は干し柿が好きなオッサンになったらしい。それはいつからなのか? 自分でもわからないけれど、干し柿オッサンになり、勢いで干し柿の絵を描いてみたけれど、ナスビみたいで、困ってたりします。いくら絵を描いてみたところで、干し柿はやって来ない。お店で買わないといけないね。