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『ブラック企業は法律違反だ!』と知ることが、私たちの力になる。

【ハラスメント自己防衛マニュアル(3)】

これまでに書いて来たハラスメント対策は、マガジンにまとめていますので、ハラスメント被害に遭っている方は参考にしてください。



1、「ブラック企業は法律違反なんだ」と知ることが、私達の力になる。

 「毎晩遅くまで働いているのに、うちの会社は残業代が少ない。休みも取れない。ほかの会社と比べると、何かが変なんだけど、具体的に何がおかしいのか指摘できない。」そんな思いで、苦しい働き方を強いられている方も多いのではないかと思います。日本は、海外と比べても、労働者を保護する法律が整備されている方なのですが、そうした規制が守られていないケースが多いようです。

 2019年4月から労働基準法が改正され、罰則付きの労働時間の上限規制が導入されました。中小企業に対しても、1年遅れの2020年4月から改正法が適用されています。

 法律による労働時間の上限は、「年間720時間、複数月平均80時間、月100時間未満」とされています。 

 年次有給休暇についても、「1年間で5日間は、企業が時季を指定して、労働者に必ず取得させなければならない」こととされました。

 残念なことに、ブラック企業と呼ばれる会社では、これらの法規制が守られていないのです。

 「職場における優越的な地位」を利用して、法令に違反した残業を強要したり、有給休暇を取得させないようなことがあれば、それは立派なパワーハラスメントです。

 経営者自身が確信犯で、組織ぐるみでハラスメントが行われている場合には、個人の力では、なかなか対処が難しいものです。皆さんの中には、「法律に違反していることが分かっても、職を失いたくないから、会社の命令に従うしかない」という状況に置かれてしまっている方もいらっしゃると思います。 でも、そうした状況下であったとしても、無理な働き方を続ければ、いずれ身体やメンタルに不調をきたしてしまうでしょう。

2、まずは、労働者を守ってくれる法規制を正しく理解しよう

 自己防衛の第一歩は、私たち自身が、どんな法規制があるのかを正しく理解し、ブラック企業の何処がおかしいのかを、具体的に指摘することができるようにならなければなりません。

 一番わかりやすいのは、「労働時間」と「有給休暇」です。残業が多いのに、残業時間が正しくカウントされず、残業が払われていないと感じたら、まずは、自分の働いた時間を毎日記録することから始めましょう。

 そして、「毎月の残業代がきちんと払われているか?」、「複数月平均80時間、ひと月の上限100時間をオーバーしていないか?」等を確認しましょう。

 残業時間が残業代に正しく反映されていなければ、未払い賃金があるということですし、残業時間が総量規制を超えていれば、労働基準法に違反して働かされているということになります。

 何が法令違反なのか、何がハラスメントに当たるのかと言ったこと理解するには、厚生労働省のホームページが一番わかりやすいと思います。ハラスメントの種類に応じて、「厚生労働省」+「パワハラ/セクハラ/マタハラ…」と検索してみてください。過重労働であれば、「厚生労働省」+「労働時間/残業/休暇」といった「検索ワード」で検索すると、わかりやすいパンフレットやチラシが多数用意されていることがわかります。

3、自己防衛策は、客観的な事実を記録することから始める。

 ハラスメントへの自己防衛は、客観的な事実を記録することから始めます。

 行政の相談窓口を利用するにしても、弁護士や社労士に相談するにしても、自分が受けているハラスメントの内容を客観的に示せなければ、支援を受けることが難しいのです。「おかしいな、辛いな、いやだな」と思ったら、それらの客観的な事実を記録することから自己防衛を始めましょう。

 労働時間や休日に関する問題であれば、自分自身で、働いた時間や休暇取得状況を記録に残すことが重要です。過去の過労死をめぐる裁判でも、死亡した方の奥さんが毎日記録していた、出勤時間と帰宅時間の記録が、労災認定の決め手となった事例があります。まずは、スケジュール表や手帳等に、自分の就業時間を記録することから始めましょう。

 パワハラやセクハラでも、具体的な行為があったことを記録することが、重要です。ハラスメントを受けた場合には、内容を記録しておくとともに、その証拠となる電子メールやLINEを紙に印刷するか、電子的に保存しておきましょう。 

 最近のスマートフォンは、ボタン一つで会話を録音できるので、ハラスメントを受けた際の内容を、その場で録音してしまうことも有効です。

 特に、パワハラ事案では、「言動に人格を否定するような内容が含まれているかどうか?」や、「行為が繰り返し行われているか?」が争点となりますので、録音はそれらの事実を裏付ける、有効な証拠となります。

 次回は、セクハラやパワハラが原因で、メンタル疾患を患ってしまったときの自己防衛について、書きたいと思います。。