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『ハラスメント自己防衛マニュアル』をどうして書いたのですかって、聞かれたら…

【ハラスメント自己防衛マニュアル(1)】

『ハラスメント自己防衛マニュアル』は、マガジンにしてありますので、ハラスメント被害に遭っている方は参考にしてください。



1. なぜ、ハラスメントに対する自己防衛が必要なのでしょうか?


 2019年5月、パワハラ防止法が成立しました。大企業は2020年6月、中小企業では2022年4月から、事業所内におけるパワハラ防止措置を講じなければなりません。

 19年の法改正では、防止措置の対象となる「職場におけるパワーハラスメント」について、6つ類型が明文化されていることも重要な改正点となっています。

 でも、法律が成立しただけでは、パワハラは無くならないでしょうね。なぜなら、セクハラは2007年に防止措置が義務されていますが、今でも被害の報告が相次いでいます。

 マタハラも2017年に防止措置が義務化されていますが、その後、相談件数は高止まりしたままです。法律が成立しただけでは、ハラスメントは無くならないのです。

 一方で、義務化された企業経営者側も、職場におけるハラスメントを無くしたいと思っています。

 僕は、これまでに400社以上の企業を訪問して、社員のメンタル疾患による労災対策をアドバスして来ましたが、面談した経営者のほとんが「従業員にはやりがいを持って活きいきと働いてもらいたい」と語っていましたし、「職場でのパワハラやセクハラが原因となって、社員のメンタル疾患が労災認定されることは絶対に避けたい」と考えていました。

 しかし、そうした経営者のもとでも、職場におけるハラスメントは起こってしまいます。

 法律を改正してハラスメントの防止措置が義務化され、企業経営者側もハラスメントを防止したいと考えているにも係らず、職場におけるハラスメントは無くならない、むしろ、体感的には悪化しているようにさえ感じます。

 こうした現状がこれからも続くとすれば、私たちは自分で自分の身を守るために、いざというときのための自己防衛策を考えておくべきではないでしょうか。

 特に、これから社会へ出てゆく若い人たちには、知っておいてほしいことがあります。

2、ハラスメントが起きやすい職場が増えている理由

 法律で規制し企業も望んでいないにもかかわらず、なぜハラスメントは無くならないのか? 

 この理由については、これまで、行政や研究機関が様々な調査・研究を行っていて、色々な要因が報告されていますが、その中から重要なものを3つ取り上げたいと思います。

1つ目の要因は、成果主義の導入です。

 一定のノルマを課された職場では、ノルマが達成できない個人を責める傾向が生まれます。右肩上がりの成長が果たせている職場なら良いのですが、人口減少や高齢化が進んでいる多くの地域では、常に右肩上がりに会社の売上が増えているところは多くないでしょう。

 こうした職場では、ノルマを達成できなかった社員や、仕事の成果を上げられない社員に対して、業務指導の範囲を逸脱したパワハラや、職場の同僚からのいじめが行われやすくなります。

 2つ目の要因は、職場の多様化です。

 最近の職場では、様々な雇用形態で働くメンバーが一緒に働いています。正社員と呼ばれる人のほうが少数派で、アルバイト、パート、派遣社員、契約社員といった、正社員とは権限や責任、契約条件が異なるメンバーの方が、より多く在籍している職場も珍しくありません。

 そうした職場では、雇用形態の異なる社員間での無関心が広がり、「それは、私の仕事、私の責任ではありません」という態度が正当化され、職場での助け合いが期待できません。

 また、職場における雇用形態が多様化したことで、仕事に対する価値観や優先順位が異なる人が増えているため、雇用形態が異なるメンバー間での感情的な対立も生まれやすくなります。

 特に人手不足で、仕事の繁忙度が高い職場では、あぶれてしまった仕事を誰が引き取るのか?という軋轢が生まれやすく、職場環境をギスギスしたものにしています。

 3つ目の要因は、世の中にはハラスメントを起こしやすい傾向を持った人が、一定程度、存在していることです。「他人を攻撃せずにはいられない人」、「他人をコントロールしようとしたがる人」がいるのです。

 そうした傾向を持った人が職場で一定の地位を得たり、集まってグループを形成すると、その傾向に歯止めが効かなくなります。

 そして、歪んだ成果主義がそれらのハラスメント行為を正当化してしまったり、職場の無関心がそれらの行為を容認し、助長してしまうのです。

次回からは、ハラスメントに対する具体的な自己防衛策を、書いてゆきます。。