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ハラスメントで傷つき易い人は、どうすればいいのでしょうか?

【ハラスメント自己防衛マニュアル(14)】

これまでに書いて来たハラスメント対策は、マガジンにまとめていますので、ハラスメント被害に遭っている方は参考にしてください。


 前回から、「職場におけるハラスメント」を離れて、世の中に溢れる様々なハラスメントへの対応をテーマにしています。


1、「職場におけるハラスメント」と「その他のハラスメント」への対策の違い

 「職場におけるハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)」ついては、法律上、企業に防止義務が課せられているので、法律の内容に沿った自己防衛策を講じます。言い換えると、会社に対して、法律で義務付けられている防止措置をきちんと実施するように働きかけるのです。

 一方で、職場以外での様々なハラスメントは、それらの行為をハラスメントだと定義する基準がそもそも曖昧です。行為者や受け手の認識に大きな差があるので、行為者に対して、その行為がハラスメントだとわかってもらうことすら難しいこともあります。

 行為者にハラスメントだとわかってもらうことすら難しいケースが多いとすれば、私たちにできることは、自分自身の心や行動に関することだけです。具体的には、「私たちが、ハラスメントをどのように受け止めるか?」そして「私たちが、ハラスメントに対してどんなリアクションをするのか?」の二つです。

2、ハラスメントを受けて、私たちはなぜ傷つくのか?

 世の中に溢れているハラスメントは、いずれも「人から人への行為」なので、必ず「相手との関係性」が私たちの受け止め方に影響してきます。例えば、自然災害は私たちに悪影響を与えますが、人が介在しないので、ハラスメントではありませんよね。ハラスメントには必ず相手があるのです。

 ハラスメントを受けて、私たちが「傷ついた」と感じるのは、ハラスメントの行為者との関係性の中で、「自分が大切に扱われていないと感じた時」や「価値がない者のように扱われた時」ではないでしょうか?つまり、相手の行動の背景に、「私への蔑視や悪意がある」と感じているのです。

・不機嫌そうな態度で文句を言ってくるお客さん

・強引な割り込みをしてきたドライバー

・満員電車でリュックを押し付けてくる乗客

こんな人に遭遇すると、「私のことをもっと大事にしてよ!」って言いたくなりますよね。その時、心が、相手からの蔑視や悪意を感じているのです。

3、 外から受けた刺激と、心の反応の間には「スペース」がある

 ところで、 私たちは、外から何かの刺激を受けたとき(例えばハラスメントを受けたとき)、心がその刺激を受け止め、評価してから、その後に、感情が生まれたり、行動を起こしたりすることがわかっています。

 つまり、外から受ける刺激と、それに対する私たちの反応との間には、「心が何らかの評価を下す段階(スペース)」があるのです。

 例えば、私たちがある行為を他人から受けたとき、心がその行為について、「私を大切に扱っていない」とか「私を価値がない者のように扱った」だのと評価すると、私たちの感情は「相手からの蔑視や悪意」を感じて、マイナス方向に大きく振れることになります。 そして、「これは相手から自分へのハラスメントだ」と考えるようになるのです。

 ところが、同じ行為について、私たちの心が、「この人は、よほど疲れてて、私にこんな態度をしたのだな」と評価したらどうでしょうか? そこには、私たちを攻撃する要素はなく、私たちの感情も、相手からの悪意を感じていないので、大きくマイナスに振れることはありません。そして、その行為をハラスメントだとは考えないでしょう。

 私たちは、同じような出来事について、ある時は相手からの悪意を感じてハラスメントと思ったり、別のある時には、相手からに悪意を感じることなく、ハラスメントだと思わなかったり、異なる反応をしています。

 そうした感じ方の違いが生まれる原因は、確かに相手からの悪意の有無に左右されることもあるかもしれませんが、多くの場合は、「私達の心がその行為をどう判断したか」によって、ハラスメントだと感じたり、感じなかったりしています。このスペースの存在に、私たちの「ハラスメントへの耐性」を高めるヒントがあるように思っています。

注)明らかに、職場におけるセクハラ、パワハラ、マタハラに該当する行為について、感じ方次第だと申し上げている訳ではないので、誤解のないようにお願いします。これらの三大ハラスメントは、冒頭に書きましたように、会社に法律上の防止義務があります。

次回も、この話を、もう少し深掘りしたいと思います。