いずれにしても、こういうことなのです

いずれにしても、こういうことなのです。つまり人間にかかわる事柄が真面目なものであると心から信ずることがけっしてできない。真面目なものなんてどこにあるのか分からない。周囲に見渡せるもののなかにはないということだけは分かっている。楽しいものにしろ。厄介なものにしろ、みんな遊びみたいに見えてしまう。努力だとか信念だとかが本当にあるにはあっても、私にはさっぱりわからないときている。金のために死ぬとか、〈地位〉を失ったために絶望したとか、ご大層な顔をして家族のために身を犠牲にするとかいった奇妙な連中を、私はいつも驚いた顔をして、少々疑い深そうに眺めていたのです。

カミュ「転落」

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