ポピュリズム

最近「ポピュリズム」という言葉をよく聞く。ポピュルス(民衆)主義という意味だが、良い意味ではなく悪い意味である。「愚民民主主義」とでも意訳すればわかりやすいだろう。「ポピュリズム」は、ほんの2,30年前までは、現在のような意味では使われていなかった。これは文学用語であった。庶民の哀歓を描いたE・ダビ『北ホテル』に代表される1930年代の文学潮流のことである。ここではポピュリズムは良い意味で使われている。ところが、この十年ほど、ポピュリズムは悪い意味でつかわれるようになった。つまり、民衆が正しい判断をする保証はなく、しばしば最悪の選択を求めるが、それに乗ずる政治、という意味である。

呉智英「日本衆愚社会」

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