村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」 至難の業

加納クレタは首を振った。「憎しみというのは長くのびた暗い影のようなものです。それがどこからのびてくるのかは、おおかたの場合、本人にもわからないのです。それは両刃の剣です。相手を切るのと同時に自分をも切ります。相手を激しく切るのと同時に自分をも激しく切ります。命取りになる場合もあります。でも捨てようとして簡単に捨てられるものではないのです。岡田様もお気をつけてください。それは本当に危険なのです。一度心に根づいた憎しみを振り落とすのは至難の業です」


村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」

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