石原吉郎 夜がやって来る

駝鳥のような足が
あるいていく夕暮れがさびしくないか
のっそりとあがりこんで来る夜が
いやらしくないか
たしかめもせずにその時刻に
なることに耐えられるか
階段のようにおりて
行くだけの夜に耐えられるか
潮にひきのこされる
ようにひとり休息へ
のこされるのがおそろしくないか
約束を信じながら 信じた
約束のとおりになることが
いたましくないか


石原吉郎 「夜がやって来る」

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