木のあいさつ

ある日  木があいさつした

といっても

おじぎをしたのでは

ありません

ある日  木が立っていた

というのが

木のあいさつです

そして  木がついに

いっぽんの木であるとき

木はあいさつ

そのものです

ですから  木が

とっくに死んで

枯れてしまっても

木は

あいさつしている

ことになるのです


石原吉郎「木のあいさつ」

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