城左門 「槿花戯書」

槿花の葩が開く、懈怠に白く、哀愁(さびし)く白く、
いやさ、槿花の葩が開くのだ
かう白々と佗びて、沈んで

槿花の葩は九月から十月にかけて開く、
想ひは九月から十月にかけていとしい

薄ら明りの白さになづんで
水の様な息をする槿花よ、ひとよ
わたしはそなたを白く睡った、
槿花の様に戀ひしく思ふ

かこつけて歎くとお笑ひか
よしお笑ひにならうとも・・・・・・
だが眞珠の様に槿花の葩が開くのだ
秋は九月から十月へかけて

槿花よ そなたは淋しくないか
槿花よ 涙がからんでおちる

白い槿花よ 青い槿花よ
仄黄い、さても戀ひしい槿花の葩よ
死んだ槿花よ 忘れた槿花よ
潸々と、さても戀ひしい槿花の葩よ

日の暮れ時はそなたの色が
戀ひしい小指によく似てる
かう白々と、佗びて、沈んで
槿花よ、槿花よ槿花の葩よ

いやさ、槿花の葩が開くのだ
懈怠に白く、哀愁く白く。

城左門 「槿花戯書」

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